トピックス

REALTY PRESS
不動産市場の将来の展望

2024年4月18日

不動産価格の決定要素

不動産の価値は、「いかに、人に利用されるか」にあるといえます。不動産鑑定評価基準によれば、不動産価格は一般的に「不動産の効用」、「相対的希少性」、「有効需要」の3つの相関結合により決まるとされており、つまり「需要があって」初めて価値が生じます。そのため将来にわたり、不動産市場がこれからどうなるのか?について推測する際には、人口や世帯数の見通しは欠かせません。

将来人口・世帯数の推計は、厚生労働省に属する国立社会保障・人口問題研究所が行い、これにより国の様々な政策(社会保険など)が組まれています。ここでは、2023年4月と12月に公表された「将来推計人口」と、「住宅需要の見通し」について解説します。

将来推計人口について

将来推計人口は、5年ごと(5の倍数年)に行われる国勢調査に基づいて、その概ね3~4年後に、国立社会保障・人口問題研究所が将来の推計を行い公表しているものです。

2023年4月26日に公表された「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、50年後の2070年には、総人口(在留外国人を含む、以下同じ)は現在から約3割減少し、2020年の国勢調査では約1億2,600万人だったものが、約8,700万人※1になる推計となっています。減少のスピードは前回推計(2015年の国勢調査をもとに2019年に公表)よりも、わずかにゆっくりとなっています。

将来人口予測

地域別の将来推計人口

2023年12月22日には、「日本の地域別将来推計人口」が同研究所より発表され、向こう30年(2050年まで)の推計が公表されていますが、都道府県別で大きな差が出る結果となりました。

2020年の国勢調査では、前回調査(2015年)に較べ、39の道府県で人口が減少しましたが、次の国勢調査が行われる2025年には、東京都を除く46の道府県で人口が減少すると推計されています。東京都は、2025年以降も人口が増え続ける唯一の都道府県で、2020年を100とすれば2035年は102.9、2050年には102.5となります。東京都の人口のピークは、2040年~45年の間と見込まれています。

他の主要府県について、大阪府は2020年を100として、2035年は92.4、2050年には82.2、愛知県では2035年は95.6、2050年には88.5となります。

上右のグラフは、2020年を100とした東京都・大阪府・愛知県の将来推計人口ですが、ここからは、東京都の1強ぶりが窺えます。

首都圏の人口割合は増え続ける

東京都の1強、と述べましたが、この強さは首都圏の1都3県全体の特徴ともいえます。

全国人口に占める東京都人口の割合は、2020年時点では11.1%となっており、この先の見通しを5年刻み(国勢調査ごと)で見れば毎回増え続け、2040年には12.9%、2050年には13.8%にまでなります。

首都圏※2のうち、2025年以降も人口が増え続けるのは東京都だけですが、埼玉県・千葉県・神奈川県でも他の地域(たとえば、近畿など)に比べ、減少率が低いため、結果的に首都圏の人口割合は増え続け、2020年時点では29.3%、2025年には30.0%、2050年には33.7%にまで達します。

生産年齢人口では首都圏だけが増える

また、生産年齢人口とよばれる15-64歳については、2020年を100とすれば、2030年に100を超えているのは唯一東京都だけとなります。地域ブロック別で見れば、首都圏では、15-64歳人口割合は2020年では31.1%ですが、2040年には34.4%と増えており、他の地域では、2040年には多くても17%台(近畿ブロック)となっているので、首都圏の圧倒的な高さが分かります。

中心部集中傾向

数値上ではここまで見てきたように、ほとんどの道府県で人口は減り、東京都を主とした首都圏だけに、人口が集中するように見えます。

しかし、細かく見ていくと、どうもそう単純なものでもなさそうです。

例えば、大阪市は3大都市(東京・大阪・名古屋)で最も人口が減るという推計ですが、5年前の推計よりは増えています。大阪市の2011年~2021年の区別人口の増減を見ると、中心部の増加が顕著で北区では2.8万人増、中央区では2.6万人増、西区では2.2万人増となっています。中でも中央区の増加率は32.1%で市内最高となっています。

このような事例は、全国の主要都市で見られており、特に中心部への人口流入が増加しているようです。

地方でも中心地へ集中、今後の不動産ビジネスの展開

2023年3月26日に公表された地価公示では、住宅地・商業地とも29の都道府県で上昇しました。今後の人口減少が深刻な懸念となっている北東北の3県も含めて、住宅地は東北6県でも全てプラスとなっています。

近年目に付くこととして、地方主要都市(県庁所在地や新幹線駅のある都市など)で中心市街地の再開発が進み、そこにタワーマンションなどが建築されています。人口減少県においては、利便性を求めての中心地への移動が進み、こうした地域での住宅供給が増えています。

 

これからの日本全体の人口動態として、地方から首都圏への人口流入は、近畿圏や名古屋圏などの大都市からの流入も含めて続く見通しですが、その一方で、首都圏以外の各エリアの中核都市への、周辺市町村からの人口移動も継続すると予測されます。

この通りに進むならば、大都市・地方主要都市ともに、人口増に対応するインフラの整備が必要で、それに対応する不動産流通業(売買)、不動産賃貸斡旋業(賃貸客付け業)、あるいはリフォーム業の役割は、いまよりなお重要となってくるものと思われます。

※1 推計数値は出生中位、死亡中位によるもの

※2 本推計では、南関東(東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県)と表記されている

吉崎 誠二
不動産エコノミスト・不動産企業コンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

関連記事
PROPERTY MARKET TRENDS 2023年第3期
不動産市場に2024年問題はどんな影響を与えるのか?
ヘルスケア施設の今後の展望

お問い合わせ

不動産に関するご相談は以下までお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

0120-921-582 TEL:0120-921-582

受付時間:9:30~18:00(定休日/水曜・日曜)

担当部署:ソリューション事業本部
FAX:03-5510-4984
住所:東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング