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REALTY PRESS
ヘルスケアアセット

 

2022年9月21日

財政における医療・介護費の抑制と、ヘルスケア施設の供給増を
同時に実現する決め手として、
多様な資本の参入に期待が集まっています。

増大する医療・介護ニーズに対応するために急務となる施策

高齢化社会への急速な移行に伴って、医療・介護などのヘルスケア分野に向けられる関心は年々高まりつつあります。日本の医療制度において、公定価格の設定を行い、国民皆保険制度を実施したことは、国民の健康増進に大きく資するものではありましたが、近年は、最新技術の導入等への多大なコストや、多種多様に膨れ上がるニーズへの対応に関する採算の回収という面では、却ってそれが足枷になりつつもあります。

良いヘルスケア施設の条件は、優秀なスタッフや、十分な人員・サービス体制を整えること、また最新の設備を備えるということですが、これらは全てコストの上昇に直結するものでもあり、公定価格がある以上、容易にそれを転嫁することはできません。また、こうした施設は十分な利用者数を見込める、いわゆる商圏的視野に立脚した立地選択を優先するよりも、その地域におけるネットワークの拠点としての存在という使命を常に果たすことを求められるので、結果的に多重のジレンマを抱えがちな状況に置かれざるを得ません。

2012年の厚生労働省の調査において医療機関の約4割は赤字経営に陥っており、また2020年の介護事業者の倒産は、過去最多の118件という状態にあります。にもかかわらず、医療・介護費は年々増大の一途を辿り、2040年度には103.9~105.9兆円に達するものと推計されています。

国の財政としては、医療・介護費の上昇は極力抑制したいところですが、それに反して、高齢化は今後ますます進むことが予想されます。こうした状況を打開するために、従来の業種以外の参入も促進されていて、最近では、東京大学が港区白金台と文京区目白台で、一部のキャンパス敷地を定期借地として活用し、医療連携サービス付きマンションやサービス付き高齢者向け住宅事業などに乗り出すことが大きなニュースになりました。

一方では、高齢者の利用を対象とした施設・病院等への資金調達の手段として、「ヘルスケアリート」を活用するための施策について、国を挙げての取り組みが図られており、種々のガイドラインが打ち出されています。柔軟で豊富な資金調達が可能となれば、多様なヘルスケア施設の供給が進み、長期の安定運用を方針とするリートの目的に合致するような、質が高く継続性の安定した運営が実行されることが期待できます。また、投資をする側にとっては、こうしたリートは、ESG 投資という視点からも、 S =社会への貢献度が評価される意義の高いアセットに位置づけされます。

スムーズな新規参入を促す条件

ヘルスケア施設のアセットについては、他の不動産カテゴリーとの相違点がいくつかあります。

先ず、レジデンスやオフィスに比べると、立地の利便性がそこまで重要視されないこと、また市場の成長性という点においては、高齢化社会という状況下で需要の増大が今後も見込まれているということが挙げられます。

また、施設運用者の事業自体が、利益追求よりも社会福祉の性格が強く、利用者の存在に対しての長期に及ぶ事業の継続性が運営の採算以上に重視されること、利回りの査定については、事業特性によって収益の差が大きく表れるので、事業運営への正確なデューデリジェンスが必要とされること、なども特異な点といえるでしょう。

懸念要因として、ヘルスケア事業は、国などによる医療報酬や介護報酬の改定や諸法規の改正等によって、事業収益に対する大きな影響が出やすいリスクがあり、建物の経年による収益性の低下という懸念はレジデンスやオフィスに較べて低いものの、利用者に対する事業継続性が重視されているがゆえに、運営困難時にプレイヤーのリプレースや事業のリセットなどに対する制約が多いことなどが挙げられます。

国としては今後、ヘルスケア施設の一層の整備拡充を進めていく方向にはありますが、「ヘルスケアリート」などの投資者に向けて、事業リスクや制度リスクなどを例示するには、先行のモデルケースがまだまだ少ないのが実情です。

ヘルスケア施設では、高価な機器を導入したり、ホスピタリティ向上のための建築でコストが上昇したりと、競争力獲得のためにその設備投資額は大きくなりがちです。またスタッフの確保と人的クオリティの維持は、競争力を高める反面、運営コストへの負荷となって跳ね返ってきます。さらに、国などによる制度や方針の変更が運営に及ぼす影響の大きさは他の不動産アセットよりも遥かに大きく、将来的な採算見通しの難易度はひときわ高いといえます。

そうした中で、「ヘルスケアリート」の参入拡大のためには、運営者側が競争力の低下に陥らないように、最新の情報を入手できていたり、制度や方針の変更に柔軟に対処できる態勢を可能にしたりするコンディションが、常時整っていることが不可欠とされています。

この高齢化社会に対する課題解決のニーズが日夜増大する状況において、集積した豊富な資本をヘルスケアの現場へ堅実にコネクトし、的確なディレクションで、その取り組みをサポートしていくプレイヤーの活躍が、待望されています。

現場から一言

島田 大介

高齢者施設は、2000年に介護保険制度が導入されて以降、介護保険サービスと融合しながら急速に成長してきました。高齢者施設のニーズは依然として高く、日本の人口減少や景気変動に比較的影響を受けず、成長が期待される数少ない産業の一つとなっています。また昨今のSDGsの流れからも、高齢者施設等公共性の高い施設への投資は好感されつつあります。

一方、社会インフラとしての居室整備の成長ステージは終わりつつあり、人手不足や業務効率化の遅れなどは、事業継続性に影響を与える形で顕在化してきています。高齢者施設事業者は、量的成長ストーリーから脱却し、サービスの質と効率性を重視した新たなビジネスモデルに転換することを強く求められています。

病院・クリニック等の医療施設は、日本の高齢化により、医療ニーズは高まる一方でその経営環境は大変厳しい状況となっています。また、少子高齢化、医師、看護師等の慢性不足、医療サービスの高度・多様化、そして新型コロナウィルス等の新たな社会的課題への対応など…社会の変化の影響を受け医療サービスにも多くの変化が訪れており、病院経営における課題も、ますます多様化してきています。

私ども三井不動産リアルティは、不動産流通のリーディングカンパニーとして、豊富な経験とノウハウを活かした不動産コンサルティングを通して、ご所有不動産の真の価値を知り、高齢者施設、医療施設の経営改善に活かしていくためのサポートをしてまいります。事業の拡大・多角化、事業承継及び施設の売却・購入・移転等をお考えの際には、弊社のヘルスケア施設売買サポートにお問い合わせください。

 

三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部 ヘルスケア施設売買サポート
TEL : 0120-921-582
ヘルスケア施設売買サポート

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