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2022年6月16日

アフターコロナの景況回復を視野に外資の進出が続く日本のホテル市場

円安の進行とインバウンド需要回復を見越した
外資系企業の進出によって、
日本のホテル市場が活性化しています。

「所有」と「運営」の一体構造からの脱却が浮上のカギ

足掛け3年に亘る新型コロナからの回復施策に各業界が取り組んでいる中、不動産市場については、他と一律に同調しない独自の推移を見せてきました。

市場の各カテゴリーにおいても、それぞれ異なる経過を見せており、人流制限やリモートワークの台頭が著しく、空室率上昇が続いていたオフィス市場では、2021年後半以降、小幅に減少傾向が現れるなど、改善の兆しを窺わせてきました。

2022年4月の発表時、住宅地、商業地とも全国的に地価上昇が見られた住宅市場は、低金利下好調が継続する中、その現象がさらにプラス要因として働くものと思われます。

また百貨店・SC市場では、売り上げ回復の起爆剤としてリベンジ消費という言葉が頻出し、本格的なインバウンド需要回復と相乗効果が現れるような体制の構築が進められ、新型コロナ下にあって、ニーズが増大したEC市場の上げ潮基調を強く反映している物流市場は、その用地取得の活発な動きが地価上昇の一因としても働いています。

このように各市場において、新型コロナはいろいろな形でターニングポイントとなっていますが、ホテル市場においては他の市場とはまた違う形の新型コロナ下の状況が見うけられます。

その特徴としてクローズアップされるのが、新型コロナによる宿泊客減が深刻だった時点においても旺盛だった、外資ホテルグループの相次ぐ日本進出です。2020年~2021年にかけて、シティホテルでは「ハイアットリージェンシー横浜」(横浜市中区・315室)やマリオットの「W 大阪」(大阪市中央区・337室)、リゾートホテルでは「ヒルトン沖縄瀬底リゾート」(国頭郡本部町・300室)、観光地「奈良」の拠点活性化目的の誘致に応じた「JWマリオットホテル奈良」(奈良市・150室)など、100室超えに限っても17のホテルが開業しました。

2022年に入っても、この強気な海外からの投資は、円安が進んだことも追い風になって、依然として継続しており、2月にはシンガポールの政府系ファンドが西武系のホテルやレジャー施設を取得することが大きなニュースになったり、それに先立って2021年10月には近鉄系の「都ホテル」がアメリカの投資ファンドに取得されたり、小田急系列の「ハイアットリージェンシー東京」の入札が行われるなど、電鉄系のホテルが軒並み投資対象として、目を引いていたりする局面にもあります。

こうして盛大に外資が乗り込んで来ている状況は、日本のホテル業の弱体化と見做されがちですが、視点を変えれば、これはアセットマネジメントの効果的な変換、つまり「所有」と「運営」の分離ということでもあります。というのは、日本への進出が著しい、世界最大のホテルチェーン、マリオットの総資産に占める有形固定資産比率が9%に過ぎないように、外資系の各ホテルチェーンは、この経営施策を40年以上も前から取り入れ、成長を続けてきました。

その観点に立てば、日本のホテル・リゾート業界では最大売上額を継続する西武系の「プリンスホテル」としても、今後は運営主眼に切り替えることで、その蓄積したノウハウを経営資源として活用し、生産性を高めていく方向に舵を切っていくのであろうと考えることも可能です。

日本のホテル業界では常識的ともいえる、この「所有」と「運営」の一体構造は現状、成長阻害要因ともなっており、例えば所有するホテルへの設備投資を考えた際にも、「運営」の観点からの対費用効果や採算性ということが表裏一体になっているため、思い切った手段に二の足を踏む原因にもなります。その結果として周辺環境やトレンドに臨機応変に対応するスピードを鈍らせ、「運営」にさらなる悪影響を及ぼすというスパイラルに陥ってしまうケースも発生するでしょう。

こうした分割によって、アセット自体の流動性が高まることでの市場価値と、「所有」とのもたれあいを払拭し、「運営」独自の工夫が別軸で追求されることでのブランド価値が相乗的に上昇していく可能性も拡がります。

この「所有」と「運営」の未分化が依然多い日本のホテル市場には、参入余地が大きく残されていると外資が判断するのも頷けるところでしょう。

また、日本のホテル市場が外資から注目されるもう一つの理由としては、新型コロナ以前の2019年に訪日外国人客は3,200万人近くまで達しており、現段階は低調ではあってもいずれ近い将来、それを上回るレベルまでの訪日外国人客のポテンシャルが見込めるということです。さらには、日本政府が2030年の訪日外国人客の目標数を6,000万人としており、単純に考えても2倍近くの大きな市場が潜在しているとの目論見も成立します。

素より、日本のホテルの高いホスピタリティには揺るぎない定評があり、グローバルスタンダードに即し活性化したステージで真価を発揮することで、今後の日本のホテル市場は大きな可能性を秘めた注目すべきカテゴリーとなるでしょう。

現場から一言 三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部 統括営業部 情報開発営業グループ
エグゼクティブコンサルタント
 渥美 直史

渥美直史

ホテルは新型コロナの影響を受けたアセットのひとつです。今後、訪日外国人客数が回復したとしても、リモート会議の定着からビジネス出張客がコロナ前に完全に戻ることは考えにくく、新設のホテルはコロナ明けのリベンジ消費による需要の回復を見込んだ富裕層向けのリゾート、ラグジュアリータイプが多くなると思われます。

また、リーマンショックによる景気後退、新型コロナ禍と 10 年に 1 度は大きな需要減退が起きていることから、「所有」しているオーナー側へリスク負担が求められ、固定賃料ではなく変動賃料の割合が高まっております。

このような変動の時期こそ、ホテルに関するお悩みがございましたら、多数のホテル取引 を行い、情報をストックしている三井不動産リアルティの宿泊施設売買サポートにご相談ください。 弊社に蓄積されたデータやノウハウ、リレーションを活用し、ホテルに関するお悩みに対し 的確なアドバイスおよびソリューションを提供いたします。

 

三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部 宿泊施設売買サポート
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