
ネウボーノ菊川 II

ネウボーノ菊川 II
2026年8月6日
2026年5月29日、東京都によって創設された「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」※1のうち、6月から供給が開始される2ファンドによる賃貸住宅の入居者募集開始が発表※2されました。
アフォーダブル住宅とは、所得が平均的な世帯や子育て世帯が無理なく支払える賃料で提供される良質な住宅のことです。専有面積が一定(45平方メートルなど)以上で、エレベーターを完備し、子育て環境に適した立地条件を備えている点が特徴で、建築費の高騰や都市部の家賃上昇が継続するなか、中間所得層や子育て世帯の生活安定を支える社会インフラとして注目が高まっています。
今回の募集物件のうち、野村不動産が江戸川区で提供するマンションは、東小松川の約50平方メートルの22戸と南小岩の約55平方メートルの9戸の2種類で、世帯年収800万円以内の子育て世代などを対象としています。
今回、入居者募集を開始した上記2物件の供給の他、三井不動産グループにおいては、三井不動産レジデンシャルリースが物件の入居者募集や管理を含むプロパティマネジメント業務を行うアフォーダブル住宅「ネウボーノ」が供給される予定※3です。
「ネウボーノ」は、フィンランドの子育て支援制度である「ネウボラ」※4をモデルにしており、子育て世帯の心身の負担軽減を目的にサービスを設計しています。屋内キッズスペースやキッズガーデン等の共用空間、動線・収納を含む子育て目線の設計といったハード整備に加え、保育・子育ての有資格者による見守りや託児、住民同士の交流を促すイベント運営等のソフトサービスを提供することで、入居者の子育てにおける心理的負担の軽減とコミュニティ形成を後押ししています。
東京都が創設した「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」は、東京都が100億円を出資し、民間事業者が100億円以上を調達して合計200億円以上になるファンドです。民間出資を仰ぎ、低金利で資金調達し、新築および築浅を含む一棟マンションを取得の上、相場家賃の8割水準で子育て世帯を中心に提供します。東京都は、複数企業で構成される4つの事業チーム(コンソーシアム)を選定し、それぞれがファンド運用します。
コンソーシアム(consortium)とは、複数の企業や団体が、単独では難しい事業やプロジェクトを共同で実施するために結成する連合体・共同事業体のことです。アフォーダブル住宅の供給には、物件を探して購入する不動産会社、ファンドを運営するAM会社、資金調達する金融機関・信託銀行、入居者募集や管理を行う管理会社の助力が必要です。
この東京都の「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」、計4本のアフォーダブル住宅の総供給数は350戸程度です。運用期間は1本が15年、3本が10年を想定しており、運用期間終了後は、出資者へ最終配分した後にファンドが精算されます。なお、ファンド運用期間中に締結された借家契約はファンド期間終了後も契約期間内は有効です。
現状では、東京都住宅供給公社によるアフォーダブル住宅の供給(年200戸、6年間で約1,200戸※5)を含めても市場全体※6からみると供給規模はまだ小さいものの、日本版インパクト不動産投資の実証実験ともいえます。
東京都は、アフォータブル住宅において「既存ストックの活用」をかかげており、新築マンションの他、空き家、既存賃貸マンション、老朽化した共同住宅が対象となります。
従来型の住宅開発にとどまらず、空き家対策や子育て世帯向けの住宅供給などの社会課題の解決に資するアセットマネジメントへと事業領域を広げるとともに、不動産流通市場に新たなプレイヤーである官民連携ファンドを創出しました。
アフォーダブル住宅の供給拡大において先行している米国では、その推進を支える代表的な制度、「低所得者住宅税額控除(LIHTC: Low-Income Housing Tax Credit)」という税制優遇制度があります。
物件の一定割合以上を地域の中間所得層(AMI:Area Median Income)以下の世帯に市場家賃以下で貸し出す場合、事業者は10年間にわたって大幅な税額控除を受けられ、さらに、投資家が税額控除の権利を買い取ってプロジェクトに資金提供することによって節税メリットを得られる仕組みが、確立されています。
政府の直接支出だけに頼らずに、民間の資金力と運用ノウハウを市場に組み込むことで、良質な住宅を長期的・効率的に確保するシステムが機能します。
日本においても、今後は公営住宅等による直接供給にとどまらず、民間事業者に容積率緩和などのインセンティブまたは減税措置を付与して供給を増大する動きがでてくる可能性もあり、それを機に、民間の開発ノウハウを活かした都市開発が加速し、アフォーダブル住宅市場の拡大と不動産投資資金の流入が進むことが期待されます。アフォータブル住宅は、社会課題の解決に資するインパクト投資の対象であると同時に、中長期的な安定運用を志向する投資家にとっても有力な投資対象となる可能性があります。
※1:2026年2月創設の官民連携ファンド、運営事業者は
1.株式会社SMBC信託銀行・株式会社萬富
2.野村不動産株式会社・野村不動産投資顧問株式会社
3.株式会社ヤモリ・三菱UFJ信託銀行株式会社
4.株式会社LivEQuality大家さん・株式会社りそな不動産投資顧問・株式会社マックスリアリティー
※2:出所 2026年5月29日 日本経済新聞記事
※3:出所 株式会社三井住友銀行・株式会社SMBC信託銀行・株式会社萬富・三井不動産レジデンシャルリース株式会社2025年11月7日NEWS RELEASE東京都「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」に関する取組について
※4:「ネウボラ」とは。 フィンランド語で「助言の場」を意味する言葉で、母親の妊娠期から子どもの就学前までの 子育て家庭を切れ目なく支援する、フィンランドの母子保健サービスの地域拠点や支援制度のこと。
※5:出所 住宅新報 2026年6月16日号
※6:出所 国土交通省発表 新設住宅着工戸数 令和7年・東京都貸家新規供給数=67,356戸

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