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CRE戦略として企業が導入する木造高層建築

2025年4月17日

CRE戦略として企業が導入する木造高層建築

気候変動への対応や脱炭素の動きなどが世界的に加速する中、建築・不動産業界では木造建築の高層化が新たな潮流として注目を集めています。かつては低層建築に限られていた木材の使用ですが、構造技術の進化により高層ビルへの活用が現実のものとなり、環境に優しいサステナブルな建築手法として国内外でその採用事例が増加しています。

木材は再生可能な資源で、伐採と植林を繰り返すことによって持続的な利用が可能です。また、鉄やコンクリートと比べて製造時のCO2排出量が少ないという点も、環境に優れた素材として評価される理由の1つです。

また樹木は成長過程でCO2を多く吸収し、成長後はこの吸収量が低下するので、木材として伐採されることで次世代が成長過程でCO2を吸収するというリサイクルも重要です。また木材が建材として利用されることにより、長期間にわたり炭素を貯蔵します。この炭素の固定効果によって、建築物そのものがカーボンストレージとして機能するという特性も注目されるようになりました。

このような背景から、都市開発や企業不動産(CRE)戦略の中で、環境価値と地域貢献の両立を実現できる手法として、木造高層建築への関心が高まりつつあります。

技術革新とハイブリッド工法が実現する木造高層建築

従来、木造建築については、構造上の制約および耐火性の課題から、高層建築への活用が難しいとされてきました。しかし、RC造およびS造とのハイブリッド工法が確立され、強度と耐久性を保つことによって、木材特有の軽量性および施工性などを活かした建築が可能となってきています。

また、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)やLVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)といった高強度木質素材が実用化され、耐震性・耐火性・加工性に優れた木造構造を実現。CLTは、一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着した木材製品、LVLは、単板を繊維方向がほぼ平行になるようにして積層接着した木材製品です。これらを使用する利点は、コンクリートの場合に必要な養生期間が不要であるため工期の短縮が期待できることや、建物重量が軽くなり基礎工事の簡素化が図られることが挙げられます。また、コンクリートよりも断熱性が高く、床や壁にパネルとして使用すれば、一定の断熱性能を確保することもできます。意匠性にも優れており、温もりのある空間を演出できる点も、オフィス空間や商業施設などで支持を集める理由です。

国内外で進む木造高層ビルの先進事例

日本国内では、複数の木造高層ビルプロジェクトが進行中です。たとえば、三井不動産は2026年に日本橋で木造ハイブリッド構造のオフィスビルを竣工予定。また、東京海上日動火災保険も、2028年度竣工予定で本社ビルを木造で建て替える計画を進めています。

これらのプロジェクトについては、企業の環境配慮姿勢やブランディングの一環としても注目を集め、都市のランドマークとして木造建築が採用されるケースが増えてきました。

オーストラリアでは、大林組が手がけている地上39階・高さ182mの木造ハイブリッド高層ビルが注目を集めています。2026年竣工予定のこのプロジェクトは世界最高層の木造建築※として、日本の建設技術の高さと木材活用の可能性を世界に示す存在です。

さらに、住友林業は2041年に向けて、地上70階・高さ350mの木造超高層ビルの構想を進めており、今後の技術革新と建材開発の象徴的プロジェクトとして期待されています。

こうした建造物を環境性能や社会配慮の面から評価する様々な仕組みもあり、木材利用に関する評価項目を設定しているものには、CASBEEやLEED、DBJ Green Building認証などがあります。

木造建築の普及は建設面のメリットだけにとどまらず、地域経済や林業の再活性化などにも貢献します。特に、国産材の需要が増えることにより、森林資源の利用サイクルが活発化し、間伐・植林などの健全な森林経営が促されるでしょう。

その結果、林業や製材業関連の雇用が生まれることにより、地域経済の活性化という好循環にもつながります。都市と地方、建築物と自然がつながる波及効果は、社会全体のサステナビリティに資するものでもあり、木造建築は企業の環境に配慮する姿勢や社会的責任を体現する象徴として、今後その存在感を一層強めていくことでしょう。

参照:引用
※大林組プレスリリースよりhttps://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220824_1.html
 

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