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グリーンボンド

2023年9月14日

不動産分野で活用が広まるグリーンボンド

世界中に広まるグリーンボンド

グリーンボンドとは、企業や地方自治体などが、「国内外におけるグリーンプロジェクトに要する資金調達のために発行する債券」のことです。ここでいう「グリーンプロジェクト」とは、環境改善・環境問題対策のためのプロジェクトのイメージです。日本語に直すなら、「環境債」と言えばいいでしょう。

2008年に国際復興開発銀行が初めて「グリーンボンド」という名称で発行しました(我が国では、2014年に日本政策投資銀行が発行)。その後、グリーンボンドの市場は、企業のSDGsやESG志向の高まりを受けて世界中で広まり、様々なプロジェクトに対してグリーンボンドが発行されてきました。とくに我が国では、不動産や建築分野において活用が広まっています。

グリーンボンドを発行している3つの主体とその実例

グリーンボンドの発行主体は、主に以下の3つに分けることができます。

1)自らが実施するグリーンプロジェクトの原資を調達する一般事業者(企業)

後述しますが、三井不動産では2019年から4つのプロジェクトにおいてグリーンボン ドを発行しています。

2)グリーンプロジェクトに対する投資・融資の原資を調達する金融機関

先に述べたように、我が国初として、2014年に日本政策投資銀行が発行しています。

また、日本政策投資銀行は2015年からは「サステナビリティボンド」(サステナビリティボンドとは、グリーンボンドが環境問題改善プロジェクト資金に特化している債券ですが、それに、資金用途を様々な社会問題解決プロジェクト資金も加えた債券です。)を毎年発行しています。

3)グリーンプロジェクトに関する原資を調達する地方自治体

東京都は2017年にグリーンボンドを発行、その後しばらく間があきましたが、長野県が2020年に発行しています。

その後、自治体では、対象範囲をSDGs全体(17項目)に広げたSDGs債の発行が広がり、2023年の発行総額は4,000億円を超える見通し ※1のようです。

国内企業によるグリーンボンドの発行実績

どんな投資家がグリーンボンドへ投資しているのか

環境省のWEBサイト(グリーンファイナンスポータル)によれば、グリーンボンドを購入する投資家には、①ESG投資を行うことを表明している年金基金、保険会社などの機関投資家 ②ESG投資の運用を受託する運用機関 ③資金の使途に関心を持って投資をしたいと考える個人投資家 などがあげられています。

また、先に述べた日本政策投資銀行のサステナエビリティボンドの投資家属性別販売構成は、中央銀行・公的機関46%、銀行25%、アセットマネジャー21%、その他8%。また地域別販売構成は、ヨーロッパ・アフリカ・中東地域57%、アジア・太平洋地域26%、アメリカ17% ※2となっています。このように、個人の購入は、年金や保険での貯蓄を経由して行われていると考えていいでしょう。

グリーンプロジェクトの広がり

「グリーンプロジェクト」と呼ばれるものには、再生可能エネルギーや省エネルギー、持続可能な廃棄物処理や土地利用・水管理、生物多様性の保全、環境負荷の少ない交通、気候変動への対応に関する事業などがあります。こうして並べてみれば、これらの事業は、すべて不動産開発プロジェクトに組み込まれる可能性が高いプロジェクトであることがわかります。省エネ+創エネにより、ネットゼロエネルギーを実現したビル(ZEB)は、ここ5年で一気に増えました。

大型の不動産開発が行われる際には、デベロッパーは資金調達を行います。加えて、カーボンニュートラルへの取り組みで、CO2排出量が多く、大胆な改善が求められているのが不動産(=建築物)の領域です。このように、「資金調達の要望」と「環境適応への影響」とが大きい不動産分野で、グリーンボンドは広がりを見せており、これからも「グリーンボンドと不動産は親和性が高い」と考えられるでしょう。

三井不動産の発行事例

三井不動産では、これまで、4回のグリーンボンドを発行してきました。

2019年9月に「日本橋室町三井タワー」(調達額500億円)、2022年1月に「50ハドソンヤード」(調達額3億米ドル)、2022年7月に「東京ミッドタウン八重洲 八重洲セントラルタワー」(調達額800億円)を対象として発行してきました。 そして最新では、2023年6月に「東京ミッドタウン八重洲 八重洲セントラルタワー」(調達額265億円)、「Otemachi Oneタワー」(調達額602億円)、「日本橋室町三井タワー」(調達額433億円)の3物件合計1,300億円のグリーンボンドを発行し、調達額の全額をプロジェクトに充当しています。

これにより、グリーンボンドを含むサステナブルファイナンスの累計額は約6,000億円となり、国内不動産会社として最大 ※3となっています。

※1日経BP社 総務省自治財政局・神門純一地方債課長インタビューより 2023.07.11
※2日本政策投資銀行リリース より 2022.11.01 2022年度発行分までの構成比
※3三井不動産 ニュースリリース より 2023.05.31

吉崎 誠二
不動産エコノミスト・不動産企業コンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

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