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将来人口推計から見る、不動産市場の今後の展開
2024年12月19日
団塊世代が後期高齢者にさしかかる「2025年問題」と呼ばれる高齢化の進んだ社会の有り様に際して、医療・介護分野における大きな懸念が強まっています。国民の5人に1人が後期高齢者となり、医療・介護体制の維持・拡充が急務ですが、医療機関数は平成2年をピークに減少を続けています。日本政府の医療費抑制政策の影響があったり、医療従事者の確保や高額の医療機器導入が重い負担になっていたり等の事由で、個人病院などを中心に経営体力の限界に直面する施設も増えています。
2025年が目前となった今、さらに患者数の減少とそれに伴う診療報酬収益の低下なども大きく影響しており、診療科の削減や施設統合も進みつつあります。
日本政府が、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を利用する患者の電子カルテ情報について、医療機関同士で共有する新システムの運用を、2025年度に始める方針を固めましたが、これに並行して、医療機関の経営体力がある場合には、DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入し、AI診断やオンライン診療などに取り組むことによって、コスト削減や人員の負荷軽減につなげることもできます。
特に診療データ等の蓄積を進めることでビッグデータの活用が進展し、医療の質を高める結果が期待されますが、実際は運営資金に余裕がない施設が多いため、こうしたデジタル化の推進は容易には進んでいません。
現在、国の政策として、CCRC(Continuing Care Retirement Community)モデルを日本向けに改善して、都市圏外への移住を促す方針が検討されています。CCRCとは、アメリカなどで実施されている高齢者向けのコミュニティモデルです。
健康な高齢者が自立した生活を送りつつ、医療や介護が必要な段階に応じて適切なケアを受けられる仕組みで、その導入を考えたときに、大都市圏よりも地方の方が、各種ケア費用を低額に抑えられることや、移住者を地域活性化の主体とする両得的な施策も実現可能なことから、日本の高齢化社会において地域移住と医療・介護体制の整備などを組み合わせたアプローチを実行するプランとして期待されています。
理想に近い高齢化社会の実現に向けては、単に医療施設の充実だけではなく、居住施設から医療施設へのスムーズな連携体制が必要不可欠で、こうした連携を構築し、維持・拡充させるには、十分な運営資金が必要です。居住インフラの確保や適切な人員配置、医療機器の導入、さらにはDX構築への取り組みの実現の可否には、医療カテゴリー外からの潤沢な資金参加、特にリートなどの参入が鍵を握ると考えられます。
リートは、複数の投資家から資金を集めて、不動産を保有・運営しながら、収益を分配する仕組みで、日本の医療・介護分野においても新たな資金調達方法として期待されています。医療機関や介護施設は資産をリートに売却し、リートからリースバックを受けることによって、初期の大規模投資負担を軽減でき、運営資金を安定的に確保できる構造が生まれます。
一方の投資家にとっては、医療機関や介護施設が安定した収益源となりうるため、双方にとって有益な構造と考えられます。
また採算性の向上とともに、ヘルスケアリートの市場そのものが拡大していけば、医療機関や介護施設はさらに投資を活用しやすくなります。懸案ともなりがちな省力化、効率化を目指してのDX推進には、大規模な初期投資や人員の確保が必要ですが、リートの活用による資金調達によって、医療・介護提供体制がレベルアップする未来が見えてきます。
アメリカではヘルスケアリートの普及が進んでおり、上場銘柄も日本の3つに対し17銘柄にのぼり、世界のヘルスケアリート市場の時価総額の93%を占めて※いますが、日本はアメリカを上回る高齢化率であることから、今後の市場拡大の余地が大きく拡がっているとも言い得るでしょう。
医療・介護サービスを充実させ、2025年問題を乗り切っていく方策の一つとして、ヘルスケアリート市場の成長は不可欠な要素となっており、今後の推移には大いに注目をすべきです。
参照:引用
※ 2015年金融庁委託調査「海外におけるヘルスケアリートに関する調査研究報告書」より
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