トピックス
企業活動の波及効果によって向上する不動産マーケットのポテンシャル
2024年9月19日
冷凍食品の需要が拡大する中※1、冷凍冷蔵倉庫の需要も高まっています。冷媒となるフロンガスの製造禁止が決定されたことで、古い冷凍冷蔵倉庫の建替えや移転などが急務となり、フロンフリーの冷凍冷蔵倉庫の建設が進んでいます。
建設コストは従来の倉庫の約2倍に上昇していますが、賃料も2倍となることが見込めるので、デベロッパーにとっては非常に収益性の高い投資対象となり、食品業界全体の供給網を支える重要なインフラとしての地位を確立しつつあります。
消費生活スタイルの変化により、食品メーカーや流通業者は、より品質の高い商品を消費者に届けるためにも冷凍冷蔵倉庫を充実させることが求められています。また、環境規制の強化に伴い、エネルギー効率の高い冷凍設備の導入も不可欠となっており、これも建設コストの上昇を招来してはいるものの、長期的には高い収益を生む可能性が高く、デベロッパーにとっては魅力的な市場となっています。
脱化石燃料化が進む自動車産業において、リチウムイオン電池の保管ニーズが急増しています。リチウムイオン電池は高エネルギー密度を持つ電池であり、その保管には発火リスクなどに対する高度な安全性が求められます。このことが、危険物倉庫の需要を高め、新たな施設の開発につながりました。危険物倉庫の建設コストは一般的な倉庫の約2倍に達しますが、賃料は3倍以上の水準に達しており、特化型施設としての役割を果たしつつ、デベロッパーにとって新たなビジネスチャンスを提供しています。
危険物倉庫の開発には厳しい規制※2や技術的にクリアすべき課題が伴います。特に、延床面積を1,000平米以下に抑制したり、周囲の建物との距離を確保するための離隔要件といった特定の条件を満たす必要がありますが、逆にこれらの制約をクリアすることによって、倉庫用地としては面積不足とされていた未利用地や、建蔽率・容積率を有効活用できる土地での開発が可能になります。
今後ますますEV車等の普及が進む中で、リチウムイオン電池のリサイクルや処理を行う施設の需要も増加し、危険物倉庫も一層、重要性を増すと思われます。
生成AIの普及に伴い、大量のデータを処理するデータセンターの需要が急増しています。生成AI向けの施設は従来のデータセンターとは違い、立地に対する柔軟性が高く、通信速度の向上によって、サーバーとの近接性も重要視されなくなりつつもあり、データセンターが集中していた地域以外への進出が目立っています。例えば、従来のデータセンターが集約している印西や多摩以外、関西圏や北海道の石狩のような立地に制約の少ないエリアが開発候補地として注目されています。
AI技術の進化とともに生成AIデータセンターの需要は拡大し、事業者もこれに応じた新たな戦略を模索していたり、事業者の外資系企業から国内企業へのシフトも進んでおり、日本国内でも生成AIに特化したデータセンターの開発がますます活発化しています。
しかし、データセンターの稼働は巨大な電力消費を伴うため、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギー利用などの課題も抱えています。これらの課題には、事業者それぞれが鋭意取り組んでいるので、その進捗と歩調を合わせつつ、生成AIデータセンターは日本のデジタルインフラの重要な一翼を担っていくことになります。
工場アパートメントが、産業インフラの新たな潮流として注目されています。この施設は複数のテナントが入居し、研究開発(R&D)や製造に対応するマルチテナント型の形態を採用しています。従来の町工場がステップアップし、より先端的な産業に関わることができる新しいアセットとして活用されるのが理想的なイメージですが、都心においてはオフィスビルのスケルトンを活用した工場アパートメントが小規模な商品の研究開発や製造、販売までに対応できる施設として注目されています。
工場アパートメントの賃料は都心のオフィス賃料と同水準で、大田区や江東区などの産業集積地においてテナント需要が拡大しています。一方で、大規模商品の製造にも対応する郊外型の施設の登場が期待されており、工場アパートメントは日本の産業インフラの新しい形として注目されています。これにより、町工場や中小企業が新たなビジネスチャンスを掴み、世界水準の産業イノベーションを推進する拠点へと成長していくことが期待されています。
現在、供給過多となりつつある物流施設市場において、冷凍冷蔵倉庫や危険物倉庫などの高収益が見込める施設は投資先として非常に魅力的です。また、生成AIデータセンターや工場アパートメントは、世界の足並みに対しての、日本の立ち遅れを解消していくべき分野の基盤となり、これから盛大な事業展開が求められる領域です。多様化するインダストリアルソリューションを通じて、日本の産業インフラは次のステージへとステップアップすることが叶います。
国を挙げて、これらの新たなトレンドを捉え、持続可能なビジネスモデルを構築し、新たなビジネスチャンスを切り開くことが求められています。日本の産業界は、これらの多様化するソリューションを活用することで、世界水準に伍していく道筋を描いていくことが可能となるでしょう。
参照:引用
※1 1世帯(2人以上世帯)あたりの冷凍食品の支出額 2017年:7,426円→2022年:10,106円 総務省統計局家計調査
※2 危険物倉庫の建設に際しては、消防法、建築基準法、各自治体条例等の制約がある
矢野 翔一
有限会社アローフィールド 代表取締役社長
不動産業界において、建築費の高騰は大変なインパクトをもたらしました。
特に、物流倉庫は容積率が低い土地での開発が多く、土地代も他のアセットに比べ安価で、賃料単価が低いため、建築コストが如実に事業収支に響いてきます。
そのため現在建築中ないし竣工直後の物件は、建築コスト増の煽りを受けた分、募集賃料に転嫁され、入居が決まらない状況が見受けられます。※1
従って全国の物流倉庫の空室率は昨年来上昇が続き、日本ロジスティクスフィールド総合研究所の調べでは2024年6月末時点で8.6%となっており、昨年同月8.1%から0.5%上昇しています。今後も建築コストが高止まりないし上昇となれば、必然的に賃料の上昇に繋がりますが、現行(継続)賃料との乖離を荷主が物流コストにどれだけ上乗せし埋めることが出来るか、今後の需給バランスによるものと思われます。
弊社では、倉庫や工場等の産業用不動産の取引について、専門チームにて取り扱っています。産業用不動産の売却や購入、賃貸借にかかわるお悩みがあれば、是非一度ご相談ください。
対応エリアは全国となっていますが、一部対応できないエリアもございますので、お問い合わせの際、担当者にご相談ください。
参照
※1 2023年と2024年は新築供給も過去最大級であり、あくまで要因の1つとして捉えてください。
三井不動産リアルティ株式会社 ソリューション事業本部
工場・物流施設売買サポート
TEL : 0120-91-4491
工場・物流施設売買サポート
不動産に関するご相談は以下までお問い合わせください。
受付時間:9:30~18:00(定休日/水曜・日曜)
担当部署:ソリューション事業本部
FAX:03-5510-4984
住所:東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング