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2022年12月14日

オフィスマーケットの変動の渦中で、
プロパティバリューを向上させ、
将来を見据えた資産維持への取組みの重要性について

東京のマーケットで顕在化しつつある二極化

2021年6月以降、東京都心5区のオフィスの空室率は、好・不調の分岐点と言われている5%を上回った6%台前半で推移(三鬼商事調べ)しており、今後は、2023年と2025年には大規模な新規オフィスの供給が見込まれてはいるものの、オフィス空室率の大幅な上昇や賃料相場の大幅な低下は無いものと予想されております。

その理由として、最新の大規模ビルは、セキュリティーや防災性能諸設備や内装等、さらには環境への配慮と多方面でハイスペックなレベルを実現した魅力的なワークステーションであり、人材確保の面からもワーカーの評価を集めやすいと期待されていることが挙げられます。

需要の強さの指標となる、ネットアブソープション(オフィス需要の増減指標)は下記グラフから見て取れる通り、コロナ禍からの回復期を経て2022年の秋口には強い指数へと転じており、その予測の裏付けと考察することができます。

東京23区オフィスネット・アブソープション

ただしこの予測は、大規模新築オフィスビルを対象としたもので、既存ビルに対しては異なった予測がされています。最新の大規模ビルと比較してテナントの移動がより多く想定される既存ビルの空室率は上昇せざるを得ず、空室率の二極化が起こることが懸念されています。

2022年末時点で、東京23区内の既存オフィスビル床面積の47%を占める中小規模の既存ビルについては、その80%以上が築20年以上経過しており(ザイマックス総研調べ)、新築オフィスの大量供給に伴う影響を受けて上昇するであろう空室率対策が目下の急務となっています。

また、平均賃料の推移に関しては(下記グラフ参照)、全体的に27ヶ月連続で下降をしている中、さらに新築ビルに比べて、坪単価4,000~11,000円の幅で下回る既存ビルについてはさらにこの傾向が続き、回復の機を損なうリスクが増大しているという見方もあります。

東京5区平均賃料

多面的なバリューアップ施策とは

こうした課題に対する、解決のヒントともなる注目すべき事例として、渋谷区では2022年10月現在、空室率は4%台前半と都心5区平均値を大きく下回っているという現象があります。

その理由には、もともとIT関連のスタートアップ企業等の渋谷エリアへの進出意欲が高いということが素地にありますが、そこに、既存ビルがフレキシブルオフィスに対応したリノベーションを実施したことにより、この旺盛な需要を取り込んだものとみられます。

フレキシブルオフィスやフリーアドレス等のワークスタイルを採用するケースの多い業種には、居抜きに近いオフィス利用のスタイルが、入退去の際の費用も低減化し得ることがメリットとして働いたと考察できます。

また近年業界で既存ビルリノベーションの画期的事例として注目を集めている施策に、コンバージョンが挙げられます。これは建物の使用用途自体を違うカテゴリーにリノベーションすることで、従来では、オフィスビルを集合住宅にリノベーションするケースが多く見受けられましたが、最近ではホテルからオフィスへ、また分譲マンションからオフィスへという事例も見受けるようになりました。

前者はコロナ禍によってインバウンド需要が低下した五反田のホテルを、ホテル由来のホスピタリティを活用しつつワーカーがリラックスして使用できるワークプレースとしてリニューアルしたもの、後者は、新築オフィスビルの供給が極めて少なく、高いオフィス需要が見込まれる吉祥寺エリアに於いて、旧耐震基準であった建物をオフィスビルへとリニューアルしたものが代表的事例となっています。

不動産オーナーにとって、目まぐるしいマーケットの潮流の中で、いかに物件の資産価値をキープし続けていくかということについては、インバウンド需要や様々な社会的ニーズがマーケットに影響を及ぼすことが多発している昨今、困難を極めつつあると言っても過言ではありません。

著しく情報が氾濫している日常で、何が有益かを見極め、止めどなく取捨選択し続けていくのは至難の業です。十分な知見を有し、確かな将来予測、さらには豊富なネットワークを構築し、多視点的に物件のバリューアップを実現するブレーンとのパートナーシップの構築こそ、こうしたリスクを回避する選択肢とするべきでしょう。

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現場から一言 三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部 リーシング営業部プロパティマネジメントグループ グループ長 鈴木 善幸

鈴木善幸

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