エリア特集
世界の「TOYOTA」が広げる「モノづくり」の活力
2025年2月13日
近年の九州エリアでの大きな話題としては、世界最大の専業半導体ファウンドリーTSMC(台湾積体電路製造)の熊本進出が挙げられます。2024年12月に本格稼働を開始したのに加え、東側隣接地に2027年の稼働で第2工場を建設することが発表されました。このTSMC進出に伴う2022年からの10年間の県内への経済波及効果は約11兆1,920億円、九州全体では約20兆円に上る※1と見込まれています。
また周辺の地価は、菊陽町で住宅地=12.8%、商業地=25.5%、工業地=29.2%と大幅な上昇率を記録し、従来IT産業が活発なエリアだった九州北部全体のマーケットを押し上げています。
この産業面での活況は、観光目的に加えてのインバウンド来訪者増に結び付いており、2024年1月?7月までの九州への累計入国者数は約292万6,500人、前年同期比で181%※2と大きな伸びを示しております。
その中核となる福岡市は、経済成長の著しいアジアエリアに向けた「ゲートウェイ都市」としての地理的優位性が重視され、若年層や外国人労働者、留学生などの人口流入増と近年進行している大規模再開発との相乗効果で、不動産マーケットがますます活性化し、国内外からの投資家の注目を集めています。
2014年に福岡市が国家戦略特区(創業特区)に指定されたのを機に開始された、一連の福岡市中核部の大規模再開発を「天神ビッグバン」と称します。中央区の天神交差点から半径500m圏内約80haを対象に、耐震性能に優れた高層インテリジェントビルへの建て替えが促進されています。従来このエリアは、福岡空港が近接しているため建築物に航空法による高さ制限が課せられていましたが、都市再生特別地区制度による特例承認により76~115mの高さを建築可能にし、さらに市独自の容積緩和施策も加えられました。
自治体の補助金頼りではない、こうした規制緩和による民間投資の呼び込みは大きな注目を集め、さらに2016年に創設された「天神ビッグバンボーナス」では、周辺ビルとの連続性や緑化などデザイン性に優れたビルを対象に、更なる容積率緩和などのインセンティブが付与されています。こうした施策が奏功し、10年間で約30棟の建て替えを目標としていましたが、2022年5月時点で目標を大きく上回る50棟ものビルの建て替えが進むことになりました。
当初見込んだ経済効果は、雇用者数増=57,200人、建設投資効果=約2,900億円、建替え完了後の経済活動波及効果(純増)=年間約8,500億円※3でしたが、こちらも大きく上回ることが予想されます。
この一連の「天神ビッグバン」の特筆事項の一つとしては、ラグジュアリーホテル、「ザ・リッツ・カールトン」の進出があります。それまでは、海外などからのVIP向けの宿泊施設が不十分なため、国際コンベンションなどの開催場所となるチャンスを逸していましたが、この開業はその逸機を挽回し世界での福岡市の注目度を上昇させるものと、地元経済界の期待のボルテージをも高めています。
また、交通や物流インフラの拡充も進められています。福岡空港では、第2滑走路が2025年3月から国際線専用として運用開始となり、現在の国内線28路線・国際線24路線の就航から2048年度までに国内線・国際線合わせて100路線、国際線の旅客数は年間約707万人から、1,600万人への増大を目標としています。
また主要港湾施設が天神地区から約2km圏内と市中心部に近接し、船舶から鉄道や空港などへの移動が短時間で可能であるのは、大都市には珍しい大きなメリットです。
旅客だけに留まらず、貨物についても市東部の埋立地「アイランドシティ」に大型コンテナ船にも対応できるターミナルや九州最大の物流施設を設営し、アジアや他地域との流通の基点ともなっています。
この「アイランドシティ」の東側約192haは「まちづくりエリア」となっており、住宅開発とともに学校や大型アリーナ、複合商業施設などが整備され、市立こども病院も移転、企業進出も相次ぎ自然環境豊かな「働く場」「住まう場」として、子育て層などからの人気が上昇しています。高層マンションや戸建などの分譲も相次ぎ、人口増加を続ける福岡市の住宅事情を改善することが期待されています。
華々しい発展を遂げる福岡市の陰に隠れた形になってはいますが、北九州市でもTSMCと並ぶ台湾の半導体企業であり、最終製品に仕上げる「後工程」の受託生産で世界最大のASE(Advanced Semiconductor Engineering)グループが約16万平方メートルの土地取得を計画しています。北九州には歴史的に長いものづくりの基盤があることに加えて、24時間利用可能な空港や物流拠点としての強みを持つエリア特性も、将来へのポテンシャルを拡大させます。
台湾の新竹サイエンスパークが、政府、大学、企業の密接な連携によって、TSMCをはじめとする世界的半導体企業を育成し一大産業集積地となったように、九州においてもこうしたケースをモデルにしながら産学官が連携を強めることで、世界の中心的な半導体製造拠点として成長を遂げる可能性が高まっています。
参照:引用
※1 株式会社九州フィナンシャルグループ試算
※2 国土交通省九州運輸局調べ
※3 平成27年2月24日付 福岡市ニュースリリース
福岡市の不動産市場は、引き続き九州全域からの人口流入が活発で、特に若者や外国人労働者、留学生の需要が堅調です。
新築分譲マンションの価格は過去4年間で約1.3倍超に上昇し、2022年には中央区の平均坪単価が300万円を超えるも依然上昇傾向は続き、地下鉄空港線の「大濠公園」駅周辺や大手門、赤坂エリアは高額所得者層や県外投資家からの人気が高く、販売坪単価600万円超の高級分譲マンションの早期完売が見られます。
2024年度は福岡都市圏における100億円を超える大型取引や巨額投資計画が、数多くリリースされました。在京不動産業者による商業施設や大型ホテル取得、地場業者の商業施設やホテル等の取得が相次ぎ、米国系投資会社による大規模レジ取得やアジア系投資開発会社による糸島市での巨額なデータセンター計画なども見られます。
TSMC(台湾積体電路製造)の熊本県への進出や、同じく台湾の世界最大の半導体パッケージングおよびテストのアウトソーシング会社ASEの北九州市への進出を機に、台湾からの訪問者増が期待されます。九州は台湾に近く、福岡市や熊本市の地理的なアクセスの良さ(フライトで2~3時間)や文化的な親和性は台湾の人々にとっても魅力的です。
台湾投資家は首都圏をはじめ日本各地に不動産を保有し、特に安全性と収益性を求めて新たな投資先を模索しているので、当社としては新たなターゲットとなりうる可能性があると考えています。熊本におけるTSMCの影響は、地域の不動産市場を大きく押し上げ、住宅地、商業地、産業用地の需要が拡大していますが、インフラ整備や企業誘致、不動産開発リスク、過熱による市場のゆがみなど様々な課題等も顕在化され、今後はバランスの取れた開発と投資が重要かと思います。
三井不動産リアルティ九州ソリューション営業部は福岡と熊本に拠点を置き、九州全域をカバーしています。三井不動産グループ(三井不動産台湾、三井不動産上海など)をはじめ、三井不動産リアルティと連携し、国内外のお客様に対しワンストップで対応して参ります。
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