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都市機能を向上する施策「ロードプライシング」
2021年12月9日
年々増加する既存マンションストックに対して、
将来的なデッドストック化を回避するため、
一段進んだ施策が、12月に施行されます。
日本が高度経済成長期の終盤に差し掛かった1970年代は、マンション大量供給時代とも言えます。この第3次マンションブームと称される潮流下、1974年には全国で年間15万戸を供給するほどの盛況でありましたが、以来50年近くが経過し、当時の物件をも含む築40年以上のマンションは、2030年には230万戸に達するものと予想されています。
これらの中には、1981年の建築基準法改正に対して、いわゆる「旧耐震」であるものも相当数あり、今後、建物自体の存続判断に影響を及ぼすことになってくることと思われます。
マンションの資産価値保全の一つのバロメーターとして、適切な管理・メンテナンス体制が維持されているかということがあります。しかし老朽物件においては、建物自体の経年劣化によるダメージに加えて、区分所有者の高齢化や居住形態の空洞化によって、管理体制の維持が困難な状況に陥っているケースもあり、そうした物件では、もはや修繕や改修といった処置を選択できず、マンションのいわゆる「終活」策を進めざるを得ないことも考えられます。
この「終活」策の候補として、大きくは「建て替え」と「マンションの敷地売却」ということが選択肢としてあげられます。
従来、「建て替え」に関しては区分所有者の8割以上の賛成で可能でしたが、「マンションの敷地売却」に関しては区分所有者全員の賛成が必要とされていたことが大きな阻害要因になって実現しないケースが多くありました。そこで、2014年12月に「改正マンション建替え等の円滑化に関する法律」が施行され、その中で創設された「要除去認定」制度は、区分所有者の8割以上の賛成でマンションと敷地の売却を可能とするものです。意訳するならばこの「要除去認定」とは、存続が難しくなったマンションが、「終活」に向かう後押しをする施策で、これによって立ち往生状態にあるマンションの流動性を高め、問題解決を一歩進めるものです。
とはいえ、この「要除去認定」の対象となるのは、耐震性が不足しているマンションに限られていたのですが、この問題解決の促進のために、2020年6月に「マンション建て替え円滑化法」がさらに改正され、その際に採用された、基準となる対象を大きく拡大した「特定要除去認定」が2021年12月から施行となります。
その新たな基準では、従来の耐震性不足に加えて、
・火災に対する安全性の不足
・外壁等の剥落により周辺に危害を生ずるおそれ
・給排水管の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
・バリアフリー基準の不適合
といったところまで拡張されています。
こうして「終活」時期に差し掛かったマンションの行く末を決定するに当たっては、区分所有者を中核とした組合等を組織するのが一般的ですが、その組織の方針で「建て替え」を選択した際には、特定行政庁の許可の下、「容積率緩和の特例」が適用されます。これによって、建て替えの際に戸数や床面積を増加することが可能になり、この住居増分の売却金を建て替え資金に補充することで、もともとの区分所有者は建て替え時の金銭的負担を軽減することができます。
また、「マンションの敷地売却」を選択した際には、長期譲渡所得に係る軽減税率の適用であったり、売却による所得に対して1,500万円の特別控除の適用が諮られたりしていますので、これらの優遇税制についても今後の進捗に注目すべきところです。
但し、上記の拡大基準はあくまでも現状のもので、最終的な決定事項ではありません。直近では、区分所有者の賛成が4分の3というところまで検討が進められているようでもあります。今後も、様々な長期的視点に立っての検討が継続されていくものと思われます。さらに増加していくマンションストックに対しては、折々に発生するであろう多岐に亘る問題点の抽出と改善施策への取り組みが、今後もスムーズかつ迅速に行われていくことでしょう。それによって、マンションやそれを取り巻く周辺エリアの、環境や景観の美化、また利便性が向上していくことが期待されます。
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