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「WOVEN CITY」というCRE戦略
2021年10月14日
ロードプライシングが実現する
経済活動の阻害要因となる渋滞の低減と、
環境面への配慮や、交通利便性の向上。
「ロードプライシング」は、五輪期間中に実施されたことで一気に脚光を浴びた感がありますが、その主要例は、主に自動車の交通流量抑制の目的で、道路通行に対して課金を行うものです。大都市中心部において、自動車が過度に集中しキャパシティオーバーになった交通インフラが目詰まりを起こすことによって、経済効率の低下や、環境や安全の悪化に陥っている状況を、ロードプライシングによって適切な交通流量に抑制し、都市機能の回復をはかります。こうしたロードプライシング自体は、新しいものではなく、1975年のシンガポールでの事例に遡るほど、以前から導入されているシステムです。
ロードプライシングの主なメリットは、交通流量の低下による対象エリアの交通渋滞の解消や安全性の向上だけでなく、排気ガスの抑制や、道路の損耗度合いの緩和などももたらします。また、何よりも課金による収入が見込めますので、インフラ整備等の財源も期待できます。
日本でもロードプライシングの構想は1968年に運輸省(当時)から発表され、その後なかなか実現には漕ぎつかないものの、自動車台数の増加に伴う交通混雑が深刻化するにつれ、検討される機会は徐々に増えてきました。切実に導入が検討されている自治体としては、京都市や鎌倉市などの名が挙げられます。両市とも市域に寺社が多い上に観光地も多く、そのことが多大な参詣客や来訪者を呼び込み、例えば鎌倉市では人口17.2万人に対し、年間来訪客数は1,987万人(2018年データ)に達しました。そうなると初詣時期や観光シーズン、週末や連休など、市内の道路事情がマヒ状態に陥るケースが頻発し、市民の日常生活に重大な支障を及ぼしているのがその理由です。
2001年10月以降、東京と横浜を結ぶ首都高速・横羽線において、大型車両などが途中の川崎市にある大師~浅田ランプ間について、並行している首都高速湾岸線などに迂回走行をすることで、ルートと車種によっては高速料金が最大約55%割引になるという制度が設けられています。これは沿道の環境改善を主目的としたもので、ロードプライシングによる交通流量抑制によって、騒音や振動、排出ガスの低減を実現しようとしています。このケースは「環境ロードプライシング」と称され、阪神高速神戸線においても同様の施策が行われています。
ロードプライシングは、世界の主要都市でも採用され、その代表例としては、ロンドンにおけるケースが挙げられます。ロンドンにロードプライシングが導入されたのは2003年、主目的は市内主要部の交通渋滞解消と、公共バス交通の運営改善でした。
ロンドン中心部の約21平方kmの区域を、平日7:00~18:00の時間帯に通行する全ての車両(二輪車やタクシー、公共バス、緊急車両等を除く)を対象に、一律11.5ポンドが課金されます(エリア内の住民は90%OFF)。これによって該当エリアの交通渋滞は実施前に較べて約30%減少し、区域内平均速度(24h)が14.3km/h→16.7km/h に向上、さらにはCO2の排出量は約19%、燃料消費量は約20%減少しました。
また、公共交通利用者数が上昇するとともに、課金による収益を投入した相乗効果で、公共バスの運行本数の23%増と運行時間遅れの60%減が実現しました。このロードプライシングの導入に先立って実施されたアンケートがあり、その一つ、「ロンドン市民が期待する政策」という設問に対する回答の70%が「公共交通機関の改善(2000年)」であり、もう一つ、「在ロンドン企業経営者が問題視する項目」という設問に対する回答の51%が「道路渋滞(1999年)」であったという、双方の改善要求にも応える結果となりました。
グローバルな観点に鑑みると、1973年時点での世界の自動車保有台数は約3億台であったものが、2009年には10億台を超えており、その交通における諸問題の切迫度も格段に上昇していると思われます。もちろんエコカーの開発・普及も重要ではありますが、今後採用事例が増えていくと思われる、ロードプライシングのスムーズな実現をバックアップする ためには、ETCなど装備面での技術機能向上なども同様に重視していかなければならないポイントです。
現在多くの企業は、そのステークホルダーに向けて、投資適格の評価獲得のため、経済価値と社会価値の双方を実現する「ESG経営」を指向していますが、特に近年では環境面への取り組みがより重視されるトレンド下にもあります。そうなると今後、その企業の社屋等が、CO2の排出削減が達成されているロードプライシングの対象エリアに立地しているかということも評価ポイントになる可能性もあります。 例えば、代表的な環境性能評価システムである「LEED」において、 Location and Transportationという項目が評価カテゴリーに加えられたことを踏まえると、該当建造物自体の環境性能だけでなく、周辺との共生的な取組みをどのレベルまで進めているかということも、判断基準に取り入れる傾向も窺えます。
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