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REALTY PRESS
WOVEN CITY

 
2020年3月11日

トヨタが裾野市で展開するCRE施策、「WOVEN CITY」

2020年1月にアメリカ・ラスベガスで開催された見本市「CES 2020」で、トヨタは世界遺産「富士山」の麓で人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスがつながる実証都市「WOVEN CITY」を展開するプロジェクト概要を発表しました。

WOVEN CITYとは?

WOVEN CITYとは、トヨタが静岡県裾野市の東富士工場跡地にさまざまな先端テクノロジーを取り入れてつくる、各技術の実証実験ができる都市(コネクティッド・シティ)のことで、具体的には、以下のような構想の都市計画です。
・スピードに合わせて3種類に分離した道づくり(自動運転車両専用の道など)
・建物をカーボンニュートラルな木材にしたり、太陽光発電の導入などサスティナビリティを前提とした街づくり
・燃料電池発電などのインフラは全て地下に設置
・室内用ロボットなどの新技術の検証や、センサーデータを活用するAIにより健康状態をチェックし日々の生活の質を向上
・街の中心や各ブロックには、人々の集いの場として様々な公園・広場を作り、コミュニティを形成

このように、トヨタはまさに未来都市(スマートシティ)ともいえる街をつくろうとしていますが、単に街を作るのではなく、実証実験を容易に行う場にすることで、将来的な事業の布石となる最新の技術やサービス、例えば安全な自動運転車の走行や、人々の日々の暮らしに役立ち、生活の質を向上させられるような室内用ロボットなどの新技術の開発を目的にしているというわけです。

CRE戦略としてのWOVEN CITY

WOVEN CITYは「スマートシティの実証」という最先端産業面が俄然注目されていますが、産業面だけでなく「CRE戦略」というもう一つの局面からも非常に画期的な事象です。CRE(Corporate Real Estate)とは直訳すれば「企業不動産」のことで、法人が事業を行うために保有している土地や建物のことですが、CRE戦略となると法人が経営戦略の一環として、保有している不動産を活用して利益を創出するというニュアンスになってきます。

過去のCRE戦略の例として挙げられるものに、パナソニックが藤沢市で実施したSST計画があります。SSTとは、「サスティナブル・スマートタウン」のことであり、地域とつながる次世代都市型スマートシティのことです。この計画はパナソニックの工場跡地を住宅や商業施設などへ転用するという事業で、パナソニックはSSTの代表幹事として推進してはいるものの、工場敷地の相当部分を手放しているので、一時的な資産活用ではありますが、資産そのものを継続的には保有していないということになります。

一方、WOVEN CITYは上記のSST計画とは違い、単なる工場跡地の住宅転用ではありません。というのも、トヨタのこの構想は不動産資産(工場跡地)のリリースが主目的ではなく、「発展的に保有する」構想であるからです。そして、所在する自治体の裾野市に対しても、雇用の維持による人口の流出の回避(むしろ流入)や、税収(住民税や法人税)の継続、街の活力低下の防止などをもたらすことが期待されています。つまり、トヨタという企業は不動産資産をWOVEN CITYという実証実験を行う場として活用し、さらに地域や自治体と共存してWin-Winの関係を成立させていくというわけです。

マイナスから大きなプラスへ

企業と自治体とのパートナーシップというケースは日本国内の至る所で見ることができ、その自治体が「企業城下町」などとよばれたりするのはよくあることですが、この自治体への企業進出はプラスの面も大きい反面、うまく行かない可能性があるのも事実です。

例えば、三重県亀山市では一時期シャープの「AQUOS(液晶テレビ)」が爆発的に売れたことがきっかけで、「世界の亀山」として有名でした。自治体も巨額の補助金を投下して工場を誘致し、自治体が潤ったことで地方交付金を交付されない不交付団体となりました。しかし、シャープが業績不振に陥るとともに亀山工場による「自治体の収益」も低下したことで、再び交付団体となり、工場の行く末にも不安の声が上っています。

こうした企業城下町で、進出企業や工場の操業不振や合理化に伴う拠点縮小にともなう諸問題が発生している例は珍しくなく、跡地の転用問題、人口や税収の減少に苦悩するなどは共通現象といえます。

今般、この世界的に耳目を惹きつけている、WOVEN CITYといえど、その発端は東富士工場の閉鎖であるという事実があります。CRE戦略といえば聞こえは良いですが、「事業見直しによってダブついた不動産の処理を踏まえた活用」が、そもそもともいえるのです。事実、2018年の工場閉鎖のニュースに際しては、地元裾野市からは大きな懸念の声が噴出しました。

しかし、トヨタは日本一の規模(時価総額)を誇る会社であり、その企業活力があればこそ、上述したWOVEN CITYの明確な将来ビジョンを構築することが可能で、この後ろ向きな工場閉鎖という事態ですらも「輝かしい未来を創るCRE戦略」に昇華させ得ているのです。

 

この構想の基盤となる自治体の裾野市としては、漫然とした依存形態に陥ることのないしっかりとしたエンゲージが大事になってきます。例えば千葉県鴨川市の場合、パートナーは医療法人ですが、優れた医療体制が注目され国の内外を問わずに一日3,000人以上の患者が訪れる亀田総合病院と連携し、ふるさと納税の特典として人間ドック受診を返礼メニューに取り入れるなどして、自治体としての活性化と経済効果を図っています。裾野市においても、今後のトヨタのアクションプランを正確にかつ有効に把握し、自らにも相乗効果をもたらせるための努力が必要になってくるでしょう。

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