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BCP対策

 

2020年9月15日

新型コロナ禍で大きく変容した、BCP対策

新型コロナ禍によっての新常態が形成されつつある中で、社員が働きやすいリモートワーク体制を整えることが企業にとっての重要なBCP対策となりました。
ワークプレイスの一極集中型から分散型へと、危機を乗り越えるオフィスの再構築も求められています。

フルリモートに舵を切る企業も

企業活動におけるBCP対策とは、大規模災害等によって、国内のある程度の領域が機能不全に陥った場合、残りの領域でのバックアップ施策を如何に講じるかというものでしたが、今回のコロナ禍のように国内全域、ひいてはグローバルレベルで様々なものが活動停止を余儀なくされたケースでは、従来講じていた想定を上回ってしまったことを認めざるを得ない状況を突き付けられました。

そんな中、企業活動の維持の主体となって奮闘したのは、社外や家庭でPC等を介して業務をする従業員個々人であり、その活動を支え得るPC等の環境インフラであったというのは、決して大げさな話ではないと思います。

新型コロナウイルスの感染が拡大していった2020年3月以降、日本企業のワークスタイルは劇的に変貌しました。この、「リモートワーク」という新たな勤務形態が広がり、図らずもそれは、これまでの日本で遅々として進まなかった「働き方改革」が、リモートワークというカタチをとることによって、社会全体で取り組む実証実験のように一気に浸透していきました。

この潮流のさなか、朝日新聞が行った全国主要100社アンケート(2020年6月27日発表)では、在宅勤務については「通勤負担の軽減」「ワークライフバランスの向上」「不要な業務や会議が洗い出された」などの利点がもたらされた一方で、「機器やシステムの不足」「社内コミュニケーションの希薄化」「労働時間の管理の難しさ」といった課題も浮かび上がりました。

企業側のバックアップ体制や労務管理システムが整わないままの在宅勤務は、従業員個人のワークスキルや家庭の通信環境に頼らざるを得ず、セキュリティ上のリスクも含めて、綱渡り的な状況でなんとかしのいでいた企業も少なくないようです。

一方、以前から積極的に働き方改革を実践してきた企業は、大きな混乱なくソフトランディングに成功。コロナ禍をさらなる変革のチャンスと捉え、リモートワークの導入拡大に舵を切っています。

利用日数や場所の制限のないリモートワーク制度を2017年から導入してきたカルビーは、2020年7月から「Calbee New Workstyle」を開始、国内約800人のオフィスワーカーのリモートワークを無期限延長しました。富士通も同じく7月から新しい働き方のコンセプト「Work Life Shift」を打ち出し、これまで一部の従業員だけが対象だったコアタイムのないスーパーフレックス制を約8万人のグループ全体に拡大適用を決めました。こうしたワークスタイルも、電子捺印や名刺の電子管理化、各種オンラインツールなどのITシステムの整備があってこその成果です。

東日本大震災などの大規模災害、国境を越えたサイバー攻撃などのリスクに直面するたびに企業のBCP対策は強化されてきましたが、これからはリモートワークを少なからぬ比重で組み込んだ新しい働き方が有効なBCP施策を招来します。ITシステムと勤務環境の両面から、柔軟で効果的なBCP対策を構築することが必須です。

通勤利便の価値観が相対的に低下

働き手も、リモートワークを前提にした住まい探しを始めています。特に子育て世帯や共働き世帯は緊急事態宣言下の巣ごもり生活によって、オフィスや学校の代わりに家庭が「密」になる不安やストレスに直面しました。いきなり地方移住とまではいかずとも、都心への通勤利便性よりも広さや環境を重視して郊外や首都圏近郊に転居する世帯が増えています。前述のカルビーや富士通では、通勤定期券代をカットする代わりにリモートワーク手当を支給しています。

リモートワークの場所は家庭に限りません。リモートワーカーの受け皿として、サテライトオフィスやシェアオフィスなど首都圏や郊外のワークプレイス拠点の需要は今後ますます高まるでしょう。東急電鉄は東横線や田園都市線の主要駅周辺に会員制のサテライトオフィスを展開しています。東京都は7月、府中、東久留米、立川の3市に無料のサテライトオフィスを実験的に開設、地方自治体もリゾート地での休暇とリモートワークを一体化したワーケーション誘致に力を入れています。

出社率の抑制が企業目標のひとつとなった今、オフィスのあり方にも変化が表れています。日本経済新聞が2020年6月末から7月15日に実施した国内主要企業社長アンケート(145社が回答)では、コロナ第二波の対策として8割近くが「テレワークしやすい体制づくり」を挙げる一方で、「オフィス面積の縮小」「シェアオフィスの活用」を検討しているという回答も目立ちました。

IT系企業を中心にこの傾向は顕著で、これまでのセオリーだった規模拡大・機構集約からオフィスの新たな機能に視点が遷りつつあります。

出社の価値あるオフィスとは

業務を遂行する場所として自宅やシェアオフィスが存在する上で、それでも企業が自社オフィスに投資すべき意味とは何でしょうか?

ひとつは、どこよりも安心して働ける勤務環境を提供することにあります。従来のオフィスデザインのトレンドはフリーアドレスと共有スペースの拡張でしたが、労務効率向上・安全対策のためにはさらに深化したワークスペースの設計が必要になってきます。固定席のないオフィスであっても、機会の増えたテレカンファレンスやオンラインミーティングのために防音・遮音機能を備えたクローズドなスペースは不可欠ですし、在席する人数は減っても、一人当たりの執務スペースやリアルミーティングの十分なスペースはとらなければなりません。こうした配慮のためには一概にオフィス面積の大幅縮小とはならず、むしろ余裕を持ったスペースを確保することが、社員の勤務環境を維持する企業責任であるという見方もあります。

また、オフィスのもうひとつの価値は企業文化の醸成です。リモートワークがデフォルトとなりつつある環境だからこそ、face to faceの大切さや帰属意識を再認識できる場所がオフィスです。快適で魅力的なオフィスの中で質の高いコミュニケーションを行う場を持つことが、企業ロイヤリティを高める強みとなります。

2020年 1月に経団連がジョブ型雇用の導入を提言しました。労働人口が減少する中、従来の日本型雇用制度が変わろうとしています。豊富な専門性に特化した優秀な人材は流動性の高い傾向があり、そうした人材を惹きつけ、定着させるためには、リモートワーク体制等の労務柔軟性の強化と同時に、そこで働くことの高い意義を醸成させる価値を備えたオフィスの構築が求められるのではないでしょうか。

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