

2026年1月15日
不動産・ホテル業界においてサブスクリプションの導入が新たな局面をもたらしています。ホテルなどの宿泊に関しては、従来は滞在ごとに料金を支払う従量課金型が一般的でしたが、定額で特定の施設や提携ホテルを継続的に利用できるサブスクリプション型宿泊が登場し、注目を集めています。
このサブスクリプションモデルは単なる宿泊に際してのメリットに留まらず、多様化するライフスタイルやワークスタイルにおいて、ホテルを社会活動における拠点として活用を図る動きでもあり、投資家の視点からも考慮すべき合理的なビジネス面でのポテンシャルを秘めています。
ホテル経営における最大課題は、季節や感染症・災害・為替といった外部環境などで予測に反して起こる収益変動でした。客室稼働率に依存する従来のモデルは、繁忙期と閑散期の差が激しい場合などには収益予測が困難になります。
しかし、サブスクリプションの導入は、この構造を根本から変革します。会員数に基づく会費等の収入が、稼働率に左右されにくいストック型収益を生み出し、キャッシュフローを予測しやすくし、長期的な投資計画が立てやすくなることによって、投資家にとって大きなメリットになります。
また、新たな顧客層の獲得も期待できます。リモートワークの普及で、近年増加した場所に縛られないデジタルノマドやワーケーション層を、中長期的なリピーター利用者として取り込めます。サブスクリプションモデルは、こうした「暮らすように旅する層」を囲い込む最適なプラットフォームとしても機能します。
日本国内では、既にサブスクリプションのプレイヤーが登場しており、その代表例が「HafH(ハフ)」です。定額でコインを積み立て、国内外の厳選ホテルに宿泊できる仕組みで急成長しています。また、サブスク住居を展開する「unito(ユニット)」は、外泊時は家賃がかからないリレント(再貸出)機能で、住まいとホテルをボーダーレスに跨る二拠点生活のハードルを下げました。
海外でも、マリオットのような大手ブランドがサブスクの要素を取り入れたプログラムを導入するなど、グローバル規模でのモデル転換も進みつつあり、一過性の流行ではなく、業界全体の構造変化が起きつつあると言えるでしょう。
2024年の観光庁によるインバウンド観光客の動向※1を見渡した際、このサブスクリプションモデルは日本の観光課題解決の鍵ともなります。一部地域でのオーバーツーリズムへの懸念が高まる昨今、より柔軟に旅行需要を取り込むことによる短期集中型集客からの脱却と、ポートフォリオの分散とは不可欠です。
今後インバウンド経済をさらに発展させるために注力すべき対象は、日本への渡航に比較的時間を要する欧米を中心とした国々からの旅行者層と考えられます。彼らは、初回来日比率が高いのが特徴で、より長期の滞在をし、旅行中支出額も多く※2、複数の地域を周遊して文化体験を深める傾向にあります。
サブスク型の宿泊パスは、この長期滞在・周遊型と相性が良く、定額で拠点を移動できる仕組みは、彼らのリピーター化を促進し、今まで以上に地方都市に足を伸ばす契機を創出すると考えられます。その結果、都市部の混雑緩和と観光客の地方分散による地方創生の活性化を両立する質の高い観光へ誘導できるでしょう。
長期滞在者を地方へ誘引する最大の武器は、訪日目的の上位を占める日本食※3であるとも考えられることから、地域のホテルと周辺地域が連携し、良質な宿泊場所の提供と個性豊かな旬の食材やその土地ならではの見どころや体験をセットにしたプラン展開が効果的でしょう。
例えば、「春は北陸で海鮮と桜、秋は信州で蕎麦とワインと紅葉」といったように季節と食を求めて拠点を移動するスタイルをメニュー化することにより、サブスクで宿泊効率を上げながら、地域独自の食や観光資源で付加価値を高めることができます。その結果、滞在日数は延び、地域への経済波及効果の増大も期待できます。
※1 出所:観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析」 2024年 年次報告書
※2 出所:観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析」 2024年 年次報告書内 2024暦年 国籍・地域別にみる訪日外国人1人当たり旅行支出と旅行消費額より
※3 出所:観光庁「訪日外国人の消費動向」2024年1-3月期
訪日前に期待していたこと=「日本食を食べること」 が 82.9%と最多

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