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世界中でニーズが拡大しているデータセンター事業
2025年5月15日
デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速にともない、クラウドサービスの普及、生成AIの進化、IoT(Internet of Things)や自動運転などの高速・大容量データ処理を必要とする分野が増加する中で、社会インフラとしてのデータセンターの需要がますます高まっています。
生成AIの普及などに伴って大容量のデータを処理するデータセンターの需要は急速に伸びていて、通信大手のソフトバンクとKDDIが大阪府堺市の工場の跡地にデータセンターを設置しようとするなど、産業用地を活用する動き※が広がっています。
また、神奈川県川崎市では、JFEスチールの東日本製鉄所(京浜地区)の高炉跡地がデータセンターとしてJFEホールディングスと三菱地所により再開発されるというニュースが注目を集めています。両社は、2025年度中に事業化に向けた調査を行った上で2030年度までの操業開始を目指すことにしていて、計画が実現すれば、国内有数のデータセンターになります。都心部に近接している川崎市という立地は、データの送受信におけるレイテンシ(通信遅延)の大幅な短縮が期待できるため、今後の先端技術の発展を支える有力な基盤になる可能性が拡がっています。
現在、日本国内のデータセンターの約80%が東京圏や大阪圏に集中しています。これらのエリアは電力供給や高速通信ネットワークの面で高度なインフラが整備されており、データセンターが集積する傾向にあります。
一方で、地震や台風といった自然災害のリスクが高い日本においては、災害時の事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の観点から、データセンターの集中に対する懸念も高まっています。特定の地域に偏ったインフラは災害時の連鎖的な危険性を視野に入れた際には、全国的な分散配置に配慮した整備が不可欠となります。
そのような中、近年注目されているのが「エッジデータセンター」です。これは、従来の巨大なハイパースケール型データセンターとは違い、都市部や利用者の近くに設置される小型のデータ処理拠点です。500kWから2MW程度の電力容量を基盤に構成されて、大面積のスペースを必要としないため、都市部への設営が比較的容易です。
エッジデータセンターの最大の利点は物理的距離を縮めることで、通信レイテンシを大幅に抑えられるところです。例えば、近接ポイントに設置されたエッジデータセンターでは、レイテンシは1ミリ秒前後に抑えられますが、郊外のデータセンターになると4ミリ秒、北海道や九州など遠隔地になると20ミリ秒を超えるケースもあるというのが、都市部でのニーズが拡大する要因となっています。
このわずかな時間差が、自動運転やリアルタイム性が求められるAIアプリケーション、高頻度取引などの分野において非常に大きな差異を生み出します。今後、AIのさらなる高度化と利用拡大を見据えると、より一層通信時間の短縮が求められるようになり、エッジデータセンターの役割はより重要になっていくでしょう。
また、国内のエッジコンピューティングの市場規模(支出額)についても、2027年には2.3兆円と、世界の市場規模(2027年=3,500億ドル)と同様、拡大すると予測されています。
このような状況の中で、川崎市における製鉄所高炉跡地の再開発がデータセンターとして行われる事例は、非常に象徴的な動きといえます。既存の供給インフラが整っており、東京や横浜などの大都市からのアクセスが良い川崎市は、都市近接型のエッジデータセンターの設置には理想的な立地条件を備えています。
また、産業基盤再生と先端技術インフラの融合という点でも価値が大きく、役目が終わった産業拠点がデジタル時代の新たなインフラに再生するこのプロジェクトは、都市計画とデジタルインフラの連携のモデルケースとして他地域への波及が期待できます。
データセンターの増加に伴い、エネルギー消費量の増加や温室効果ガス排出などの懸念も高まっています。特に欧州では、電力のひっ迫やサステナビリティに対する社会的関心の高まりから、データセンター開発に制限を設ける動きも出ています。日本においても持続可能な開発は前提化しつつあり、その点、エッジデータセンターは、比較的小規模であることから冷却や稼働に必要なエネルギーも抑えやすく、サステナビリティの観点からも一定の優位性を持っています。今後は一層、再生可能エネルギーの活用や、地域と連携した電力供給モデルの構築など、環境面への配慮した取り組みも進捗していきます。
DXの進展によって、デジタルデータに関する産業は今後ますます増大し、いかに効率的かつ安全にデータを管理・処理していくかが日本の競争力を左右する重要な要素となります。
そうした役割からも、膨大なデータのハンドリングにおいて、エッジデータセンターは単なる補助的存在ではなく都市の成長とデジタル社会を有機的に促進する基幹インフラの一翼を担う存在になることでしょう。
参照:引用
※:引用:NHK NEWS WEB :https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250404/k10014770011000.html
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