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高齢化社会でニーズの増大するヘルスケア施設と、注目されるアセットとしての将来性
2023年12月15日
現在主流となっているヘルスケア施設としては、シニア向け施設と、医療施設が挙げられます。
世界で最も高齢化が進む日本ですが、総務省によれば2020年時点の65歳以上の人口は約3,600万人で全人口の28.6%となっています。一方、0~14歳の若年層は11.9%、15~64歳の生産者人口は59.5%、全人口を年齢順に並べて真ん中に来る(=中位数)のは48.5歳となっており、すでにかなりの高齢社会になっていることがわかります。
しかし、高齢社会はこれからが本番、6年後の2030年には65歳以上は30.8%、団塊ジュニア世代が65歳を超え、団塊世代が90歳を超えたくらいの2040年には、65歳以上人口割合は35%近くに達する見通しです。このころの日本は、平均年齢は50歳を超え、中位数は54歳、0~14歳の割合は10%以下となります。※1
高齢社会が進むにつれ、「求められる住まい」も大きく変わっていき、高齢者が生活しやすい住宅へのニーズが高まって行くと予想されます。
以前から、シニア向け住宅(レジデンス)はありましたが、近年は分譲マンションを展開する大手デベロッパーが、シニア向けレジデンスの「マンションブランド」を立ち上げるようになりました。例えば、三井不動産系では、一般の分譲マンションの「パークホームズ」や「パークタワー」というブランドに対しての、「パークウェルステイト」が、シニア向けレジデンスにあたります。
一般的にシニア向け住宅(レジデンス)には、介護を必要とする方向けの「有料老人ホーム(介護施設)」と自立した方向けの「サービス付き高齢者向け住宅」があり、それぞれ設備やサービス内容が異なります。「パークウェルステイト」ブランド第1号物件である「パークウェルステイト浜田山」(2019年6月開業)は、後者のサービス付き高齢者向け住宅で、ホテルのような自立者向けサービスに加え、介護が必要になっても安心して暮らせるサポート体制が整っています。
このように、今後も多くの企業がシニア向け住宅ビジネスに参入することは間違いないでしょう。
シニア向け施設・住宅(有料老人ホーム=介護施設やサービス付き高齢者向け住宅など)には、医療機関、その他フィットネスといった健康増進施設などが連携しているケースが多く見られます。また、一団の敷地の中にこれらが複合したケースもあり、いわゆるヘルスケアREITと呼ばれるREITの保有物件ポートフォリオには、こうした物件が多く組み込まれるようにもなりました。
冒頭でのべたように、このさきも高齢者割合は増え続けます。政府も、この状況に対し、様々な施策を行っていますが、国が担う保険制度にはほころびが見え始めており、財政的にもかなり厳しい状況が続いているので、「国が補助する」状況はいつまでも安定とはいかず、高齢者に対しても「可能な方は自立を」とのスタンスが見え始めています。
また、日本人の人口そのものが減少している中で、65歳以上人口も2042年にはピークを迎える予測(3,878万人)で、後期高齢者とよばれる75歳以上人口も2055年くらいからはピークアウトし、市場がシュリンクし始める可能性もあります。
サービス付き高齢者向け住宅を運営するには(他のヘルスケア施設の運営と同様)、一般的な住宅(レジデンス)に比べて多くの要員を必要とします。十分なスタッフが配置され、サービス体制が整い、初めてこうした施設を運営することが可能です。しかし、現在のシニア業界は、人員確保が大変で、顕著な人手不足が続いています。国の支援などを含めての賃金や待遇を充実・改正しなければこの厳しい状況は脱し得ません。
このような状況から、これからのシニア向けレジデンスを選ぶ際には、運営主体を見定める目が必要になります。将来性を見込んで参入業者が増えている現状ではありますが、長期視点でヘルスケア施設の開発・運営を行い、簡単には事業を手放さないような計画性が重要視されるでしょう。
ヘルスケア施設のもう一つの主要な構成要素となるのは、病院・クリニックなどの医療系施設です。
医療系施設に関しては、社会情勢の変化、取り巻く周辺環境、運営会社(医療法人)等の状況変化により、様々な問題が起こり得ます。帝国データバンクのレポート※2によれば、2017年以降増加傾向だった医療機関の休廃業・解散件数は、新型コロナウイルスの影響が大きかった2021年1年間の倒産33件の17.2倍となる567件に達しました。休廃業や解散という形で事業を終わらせるには、原則として借入金や買掛金などの負債がなく、健全な財務状況であることが前提となります。医療機関は、一般企業と比べて公共公益的な側面が強く、見込み患者数は景気に左右されにくいので、破綻状況となる倒産件数は少ないながらも、休廃業・解散を選択する事業者は多いようです。
その理由としては、代表者の高齢化が進むも後継者がいない、設備の更新が難しい等、経営的側面以外にもいろいろな事情がありますが、その際には、「使わなくなる医療施設をどうするか」という問題が起こります。
ヘルスケア施設の保有者は売りたいという強い希望を持つ一方で、施設を増やしたいと考えている別の事業者もいます。また、社会貢献できる施設を保有したいという意欲を持つ投資家もいます。
こうしたニーズを上手くマッチングさせ、有効にかつスムーズに施設保有権を移動するような手腕も、今後はますます必要とされてくることと思います。
参照:引用
※1:厚生労働省系シンクタンク、国立社会保障・人口問題研究所の予測
※2:2022年1月発表
吉崎 誠二
不動産エコノミスト・不動産企業コンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
病院、クリニック等の医療施設は、急速に進む高齢化により医療ニーズは高まる一方で、医師、看護師等の慢性的な人手不足と社会保障費の負担増や医療制度改革により診療報酬の切り下げが続いており、経営環境は大変厳しい状況になっております。また、コロナ禍が我々の受療行動にも影響を与え、従来の外来医療から在宅医療へ、そして時限的に拡大されたオンライン診療へのニーズが急速に高まっています。今後は、診療の質を維持しながら、医療のデジタル化による効率化を図りつつ、競合する医療施設と差別化を図ることが求められています。
高齢者施設は、介護保険市場におけるサービス利用者の増加と単価の上昇に伴い、大きな成長を続けてきたものの、今後は施設の供給過剰や人件費の上昇、ウクライナ・中東情勢の影響による光熱費等の高騰などの影響により、厳しい経営環境が見込まれています。社会インフラとしての居室整備の成長ステージは終わりつつあり、人手不足や業務効率化の遅れなどは、事業継続性に影響を与える形で顕在化してくるものと思われます。事業者は、量的成長ストーリーから脱却し、サービスの質と効率性を重視した新たなビジネスモデルに転換することを強く求められています。
医療施設、高齢者施設ともに競合する施設との競争が激しくなるなか、周辺の医療施設と高齢者施設が連携してサービスを提供するケースが増えてきています。三井不動産レジデンシャルは、周辺の病院と連携し、CCRC (Continuing Care Retirement Community)の機能を持つ高齢者施設の開発を行っており、安心感を売り物にするなど工夫を凝らす施設が増えてきています。
また、投資対象としても高齢者施設へのニーズは高く、日本の人口減少や景気変動に比較的影響を受けず、成長が期待される数少ない産業の一つとなっています。昨今のSDGsの流れからも、高齢者施設等公共性の高い施設への投資は好感されつつあります。
私ども三井不動産リアルティは、不動産流通のリーディングカンパニーとして、豊富な経験とノウハウを活かした不動産コンサルティングを通して、ご所有不動産の真の価値を知り、高齢者施設、医療施設の経営改善に活かしていくためのサポートをしてまいります。事業の拡大・多角化、事業承継及び施設の売却・購入・移転等をお考えの際には、弊社のヘルスケア施設取引専門チームにお問い合わせください。
三井不動産リアルティ株式会社
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