エリア特集
福岡・熊本特集
2023年5月17日
2023年3月、全国1,376 市町村の公示地価が発表されましたが、公示地価上昇率で、上位6位までを、1位=北広島市、2位=江別市、以下 恵庭市、石狩市、千歳市、札幌市の順で他の都府県を挟まずに北海道の市町村が独占し、しかもその上昇率はいずれも13%以上と高い数値になっています。
北広島市については、日本ハムファイターズの本拠地となる新球場、エスコンフィールドのオープンが起爆剤となっていることは想像に難くありません。ただ要因はそれだけではなく、そもそも地方主要都市としては住宅用地のニーズが飛びぬけて高い札幌市の土地需要が、周辺の江別市や石狩市などの衛星都市エリアに波及しているという現象があります。
この北広島市においては、エスコンフィールドを中核としたボールパーク構想をベースにした整備開発計画が、レジャー施設や住宅基盤の拡充と相俟って進捗中で、JR千歳線の新駅開業も予定されています。また球場建設に先だって三井アウトレットパークが進出していることもあり、生活利便性が向上しつつある背景もありました。
これらの地価上昇率上位5位までの各市は、北海道の主要玄関口である新千歳空港から中心都市札幌までの主要アクセスルートのJR千歳線や道央自動車道の沿線であり、道内での多くの人の移動動線として、また物流上の大動脈としても、各種インフラの整備が進められています。北広島市、江別市とも、商業地及び住宅地としての上昇率でも全国のトップクラスにあり、周辺都市も同様の状態にあることから、この道央エリア全体としての好況が今後も継続していくことが期待されています。
この公示地価上昇率については、ベスト10位以内に、7位=熊本県菊池郡菊陽町、9位=熊本県菊池郡大津町、両町の名前が上がっています。こちらの町名はニュース等で注目されている台湾の世界的な半導体メーカー、「TSMC」と関連企業の進出が予定されているエリアです。2021年の台湾における水不足で半導体製造に支障を来した「TSMC」にとっては、大量に必要とされる水資源が、熊本県では水道水の約80%を地下水で賄えるほど豊富であること、また台湾からの距離も近いポイントに製造基盤を形成できる点などが用地決定の大きな理由となったと思われます。
九州北部エリアは、かつて「九州シリコンアイランド」とも称されたように、多くの半導体関連企業が集中しています。かねてからの半導体製造の先進的エリアへの、新たな中核ともなる「TSMC」の進出は、同業態のこのエリアへの参入を促進し、さらには熊本大学に国内の大学として初めて、工学部半導体デバイス工学科程が設立されるなど(令和6年より)、様々な波及効果をもたらしています。
これらの生産工場周辺では、雇用人員の確保が目下の優先課題となっていますが、それに付随する住宅やショッピング施設等の生活インフラの整備や利便性の向上ということにも、期待の目が向けられています。
1988年時点では、世界における日本の半導体産業のシェアは50.3%を占めていたものの、その後の急速なシェアダウンの末、2019年には10%までに低下しています。この「TSMC」の進出が、急速に日本のシェア回復の実現ということにはならない厳しい競争状態にある半導体業界ですが、将来的な布石として、またエリアの活性化のためにも、有効な誘致施策といって間違いないでしょう。
コロナ禍やウクライナ情勢等の懸念の下、様々な必需品に供給懸念が生じるリスクを鑑み、経済産業省は、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」という政策を定めて、国内の生産拠点の整備を進め供給の不安を払拭するべく、合計5,200億円超の補助金の投下を計画しています。対象となる主要品目として、半導体が指定されていることからも、国を挙げてのこの分野への並々ならぬ意気込みが感じられます。
この方針にシンクロするように、キヤノンが栃木県の工場用地内に新たに約70,000㎡の半導体関連の新工場を建設し、生産能力の倍増を予定していたり、SUBARUがEVへの取組みのために、60年振りに新工場を建設予定であったりと、今後この分野での復権を目指す企業活動は一層活発になるでしょう。
半導体産業だけに留まらず、諸コストが廉価であった海外に製造拠点を移設して、産業の空洞化や競争力の低下を来していた日本の製造業では、ここのところの円安基調や、日本国内の人件費等のコストの停滞によって、採算面から製造拠点の日本国内への回帰が検討されるようになりました。
アイリスオーヤマが、プラスチック製品等の製造拠点を中国から国内工場にシフトしたことは、大きな話題になりましたが、さらに家電製品の製造・流通拠点として岡山県瀬戸内市に、敷地約61,000㎡を取得しての新工場を、2025年の竣工を目指して新設することにも注目が集まっています。
このように日本国内で相次ぐ企業の生産拠点の進出や拡充は、日本国内の様々なエリアで不動産市況を活性化していくと思われます。
2023年の年初に北海道・北広島と九州・熊本の工業エリアの現地調査を行ってきましたので、前出の記事の補足として、現場での感想をお伝えしたいと思います。
まずは、北広島市の工業エリアである輪厚工業団地についてですが、これまでなかなか進出企業が決まらず、空地が目立つ状態が続いていましたが、直近では物流施設等の建設が散見され、ほぼ埋まりつつある状態となっています。恵庭市も含めたこのエリアは、人口約200万に達する札幌市と苫小牧港や千歳空港の中間に位置し物流好立地であるにもかかわらず、現状では物流デベロッパーの指定する戦略エリア※1に該当せず、BTS型※2の開発に留まっています。
その理由の一つには道外から来る貨物の約8割が海運であり、その中心を担う苫小牧港から札幌市まで高速道路で約1時間と交通アクセスが良好であることから、中間拠点の需要が少ないことも挙げられます。開発スピードは緩やかながら、ここにきて着実に用地が埋まっていることは、「ボールパーク構想」により注目を浴びた、このエリアの機運が高まった一つの効果であると思われます。
熊本については、前出の通り「TSMC」の話題が旬で、これからの九州全体の物流を考えるうえで、熊本市(またはその近隣)は、要衝となります。
これまで物流会社の多くは、福岡市近辺(糟屋郡含む)や鳥栖IC付近の拠点にて、九州エリア全体を網羅してきましたが、2024年問題において南九州方面への配送が距離的に厳しくなることが予想されます。
熊本市を地図で俯瞰して見ますと、九州のほぼ真ん中に位置し、鹿児島市・宮崎市を100km圏内に収め、各主要都市との高速道路でのアクセスも良好ですので、物流拠点として非常に魅力的です。
そこで、熊本市(またはその近隣)は南九州を網羅する拠点の最適地として、2024年問題を見据えた物流デベロッパーによって既に戦略エリアに指定され始めています。
しかしながら、物流用地に適した土地は地形上、用途規制上、非常に限られており、物流デベロッパーの開発チャンスは少なく現在に至っています。
現在、弊社の工場・物流施設売買サポートは、首都圏15名のチームメンバーと地方主要都市の支店メンバーとのリレーションにより、全国の事業用地(地方都市は物流適地に限ります)の取り扱いをしております。
これまでの実績に基づくノウハウと蓄積したデータを駆使し、工場の跡地有効活用から、開発許可の蓋然性が高い市街化調整区域の農地など、取り扱いが難しく、中長期となる案件にも積極的に取り組むことで、事業用地化し、お客様の事業拡大のお手伝いを行っております。
物流用地に限らず工場用地やデータセンター用地についても、最新情報を常に収集しておりますので、事業用地のご売却やご購入の相談、有効活用をお考えの際には、是非お問い合わせください。
※1 戦略エリア…物流デベロッパーが確定したテナントがいない状況でも先行して開発するエリア。
※2 BTS型開発…確定テナントの希望に応じた建物を、物流デベロッパーが建築し賃貸すること。(BTS=Build To Suit)
三井不動産リアルティ株式会社
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