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今回は「CRE戦略」をテーマにした新着記事をご紹介いたします。

TOPICS 企業価値を高めるCRE戦略 第1部 交通インフラ革新
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企業価値を高めるCRE戦略

第1部 交通インフラ革新

第2部 都市計画

第3部 産官学連携

第4部 企業の社会的責任CSR


第1部 交通インフラ革新

新線開業による不動産価格の向上

 企業が所有する事業資産の周辺交通インフラの拡充は、地価上昇の契機になるなど、CRE(Corporate Real Estate)戦略の観点からも、重要な外部要因となります。

 新しい鉄道路線の開通や新駅の開業は、その周辺エリアにおける地価や人口動態、街のブランドイメージなどに影響をもたらすだけでなく、その沿線や駅周辺の都市構造・土地利用の方向性などを、変化させることも少なくありません。駅前エリアの再開発に伴う企業・店舗等の進出や新たな住宅の供給を促し、消費基盤や利便性の高まったエリアとして新たな評価を受けることになります。

 2005年のつくばエクスプレスの開業は、沿線の秋葉原など東京都心へのアクセス時間の大幅な短縮を実現しました。千葉県流山市や茨城県つくば市といった沿線では、開業後の平成27年から令和7年の10年間での人口推移が、流山市で約4万人、つくば市では約2.8万人の増加※1となっています。

 そのシンボル的存在となっている「流山おおたかの森」駅周辺エリアでは、駅前に大型商業施設やメディカルモールが整備されたため、行政が注力する子育て支援施策との相乗効果により若年ファミリー層の転入が増加しています。住宅地は令和4年から令和7年の3年間で平米あたり252,000円から370,000円※2と46.8%、商業地は令和2年から令和7年の5年間で平米あたり678,000円から990,000円※3と46.0%もの地価上昇を記録するなど、「流山おおたかの森」駅周辺エリアの現象は、新線・新駅の開業が、都心から郊外への人の流れと資本の移動を促進している例の一つと言えるでしょう。

 また、2023年に開業した相鉄・東急直通線も注目を集めています。直通運転が開始されたことで、相鉄沿線エリアから都心部へのアクセスが向上、2019年にはJR埼京線への相互乗り入れが開始されていましたが、この開業によってさらに利便性が向上しました。

 相鉄線の2023年度上期の輸送人員は前年同期比で8.9%増※4となり、沿線の「西谷」駅周辺を例にとると、都心への通勤利便性の向上に伴い都内の賃貸住宅の居住者がマンションを購入する事例もみられるなど、住宅地の公示地価は前年比プラス13%と神奈川県内の上昇率トップ※5となりました。


新線・新駅開業による都心マーケットへの効果

 東京都心においても、新駅開業がマーケットへ効果を与えている事例があります。

 2020年にJR山手線で約半世紀ぶりの新駅として「高輪ゲートウェイ」駅が開業し、同時に駅を中核とした大規模複合開発プロジェクトの「TAKANAWA GATEWAY CITY」が進行中です。

 「TAKANAWA GATEWAY CITY」では、MICE対応施設、オフィス、商業施設、住宅、子育て支援施設などが整備され、職住近接の実現とともに、多様な都市機能が融合するエリアとなるべく再開発が進んでいます。その相乗効果として、周辺エリアでは商業地の地価が上昇するなどの影響が現れています。

 同様に、東京メトロ日比谷線の「虎ノ門ヒルズ」駅も、56年ぶりの新駅として2020年に開業しました。駅直結の再開発ビルとして虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの竣工に先立ち、虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーなども建設され、このエリアで先行する虎ノ門ヒルズ 森タワーなどと高層オフィスビルが軒を並べる状況になっています。

さらに「虎ノ門ヒルズ」駅と地下通路で結ばれた、銀座線「虎ノ門」駅周辺では駅直結の虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業(2023年11月完成)と虎ノ門一丁目東地区第一種市街地再開発事業の2つの大型プロジェクトが進められています。これによって、さらに都市機能が向上することが予想され、近隣の商業地においても25~30%の地価上昇が見られます。

 港区では他にも、2030年代半ばを目指して東京メトロ南北線「白金高輪」駅から「品川」駅までの延伸が、計画されています。リニア中央新幹線の始発駅であり、羽田空港への玄関口でもある「品川」駅と、六本木など都心部とのアクセス性をより強化することは、「人・モノ・情報の自由自在な交流の実現」という東京都の都市づくりのグランドデザインとして、推進するべき戦略の一つとなっています。

 こうした交通インフラの発展は、該当エリアの利便性が高まるだけに留まらず、新たな人流などが形成されることによって、マーケットへの影響が現れることも視野に入れておく必要があるといえるでしょう。

出所:※1 千葉県流山市 茨城県つくば市 両市ホームページ 人口推移より

   ※2 おおたかの森南1丁目9-16:住宅地 国土交通省発表地価より

   ※3 おおたかの森東1丁目5-1:商業地 国土交通省発表地価より

   ※4 2024.03.20 読売オンライン掲載記事より

   ※5 2024.03.26 神奈川新聞掲載記事より

新規開業駅 近接エリア 地価推移


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