三井不動産リアルティ

Vol.87 2022 7月号

REALTY - news

いつもお世話になっております。三井不動産リアルティ REALTY-news事務局です。
7月第3月曜は海の日。毎年3連休となり、この初日を海開きとする海水浴場も多くなっています。
もとは明治天皇が1876年(明治9年)、灯台視察船「明治丸」で巡幸した「海の記念日」に由来するそうです。
思い切り海で遊べる時が待ち遠しいです。それでは7月の「REALTY-news」をどうぞ。

投資・事業用不動産に関する情報誌「REALTY PRESS」を当社ウェブサイトにて公開中です。是非、ご覧ください。

REALTY PRESS

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今月のトピックス

Topics 1 「エクソダス」は日本では小規模だった:新型コロナとニューヨーク
Topics 2 東京のオフィスマーケット…どの街にどの業種が多いのか?
Topics 3 新型コロナからの需要回復が顕著な不動産マーケット

Topics 1

「エクソダス」は日本では
小規模だった:新型コロナとニューヨーク

 旧約聖書の「出エジプト記」にならって、大脱出を「エクソダス」と呼びます。ニューヨークとサンフランシスコとシアトルで新型コロナにより特に大規模なエクソダスが発生しました。しかしニューヨークでは2022年6月現在、郊外へ脱出した人たちの逆流現象が起きています。

 注意を要するのは「在宅勤務」「リモートワーク」というのはホワイトカラーの一部の話である事で、これらを冷ややかに見ていた市民も多くいました。ニューヨーク市には320万世帯が住んでいますが、新型コロナ流行後の1年間に市外へ転居したのは16万世帯にすぎないのです。

 またエクソダスした人の中には、「1DKに夫婦2人と幼児と赤ちゃん住まい」というような若いカップルがいました。彼らはこの際だから広い家へ引っ越しをしたわけで、新型コロナは数あるきっかけの一つにすぎません。これは需要の前倒しという面が強いのです。

 2020年3月22日にニューヨーク市がロックダウンされ、その後エクソダスが始まりました。マンハッタンの賃貸マンションの空室率は2021年初頭には12%弱まで上昇、家賃相場が底を打ったのもほぼ同時期です。

 その後、2021年5月頃から家賃の再上昇が始まり、以降は上昇の一途をたどりました。2022年5月の家賃のメディアン(中央値)は4,000$(54.4万円)と史上最高額になり、空室率は新型コロナ前の水準を下回る2%に下落しました。賃貸マンションの新規リースのピークは、「新卒者の就職」や「学校の年度初め(9月)の準備」が重なる8月なので、家賃相場は今後もまだ上昇しそうです。

 一方、オフィスへの復帰は回復が鈍く、企業経営者を悩ませています。経営者たちは「オフィスで一緒にいないとチームが機能しない、従業員のトレーニングもできない」等としているのですが、従業員側は「在宅勤務でも生産性は高かった」と主張しています。しかし従業員の中には、いずれはオフィスに戻らなくてはと覚悟していながらも、できるだけ長い間在宅勤務を続ける事で「楽をしよう」としている人間も多いように見えます。

 マンハッタンには非常に多くの中小・零細業者が存在し、一種の「生態系」になって街が成り立っています。ホワイトカラーのオフィス復帰抜きではこの生態系が回りません

 そこへFed(連邦準備制度理事会)の利上げや株価の急落等が起き、景気後退入りする可能性が高くなってきました。景気が後退すれば各企業で人員削減が始まります。自分がリストラ対象とならないようにと、今後一挙に大量のオフィス復帰が起こるのではないかという見方があります。

 エクソダスで引っ越してそのまま郊外に住み続ける人の分、郊外からの通勤者が増加するはずです。通勤電車は新型コロナの流行前からラッシュ時は満員でした。これに新たな通勤者が加わるので、通勤電車は日本の昔のラッシュアワーよりもひどい混雑になりそうです。

(ドル=136円 2022年7月5日近辺のレート)

ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

Topics 2

東京のオフィスマーケット…どの街にどの業種が多いのか?

 CBREの発表によれば、現在、東京のオフィスマーケットで、IT関連会社の使用床面積が多いのは「渋谷・恵比寿(以下渋谷)」と「新宿・西新宿(以下新宿)」で、渋谷は5割強が、新宿では4割がIT企業です。

 かつてITタウンとされていた「六本木・赤坂・青山(以下六本木)」は3割程度とさほど多くはない一方、オフィス街の「老舗」といえる「丸の内・大手町・有楽町(以下丸の内)」「日本橋・八重洲・京橋(以下日本橋)」ではIT企業は少なく、丸の内は金融が、日本橋はメーカーが多くなっており、これらの比較的創業の古い会社は、街としての歴史の長いエリアに居を構える傾向が強くなっています。

 当然、オフィス街の規模による差は見られますが、ある程度業種が“固まる”のは、重厚長大産業の大手企業の本社ビル周辺に、その系列の子会社や関連会社が集まる傾向があり、また、同業他社も関係会社の集積が多い場所に本社を置きたがること等が理由として考えられます。

 逆にIT関連のような若い会社の台頭によって、オフィス街の性格を変えてしまうケースも見られます。先に挙げた六本木では、六本木ヒルズの開業に合わせて周辺のビルにも大手IT企業の入居が相次いだのをきっかけに、一時はITタウン化しました。しかし、賃料上昇が顕著になるに伴い、交通の便が良く、大型再開発ビルが主体となってきた渋谷に移転する企業が増え、近年はITといえば渋谷が中心となりました。同様に、大崎駅前の大型再開発ビルに移転するケースも増えていることから、大崎でもIT会社比率が高まっています。

 新型コロナ問題が発生する前、IT企業は人事採用面を優先する方針の下、キレイで大きく、見栄えの良い大型ビルを志向することが多く、山手線南側エリアではその条件を満たす駅前再開発ビルが多数あることから、このエリアに集まるようになったと考えられます。また、山手線南側エリアでも「虎ノ門・新橋・汐留」については、業種が分散している傾向にありますが、細かく見ると森ビル主導の虎ノ門エリアと中小ビルが集まる新橋エリアとでは街の顔は違っています。

 基本的にオフィス街は、街単位で違った顔を見せ、街としての機能や特徴にも、集積する企業の業種の傾向が現れるので、それを認識した上でのオフィス移転を考えるのが良策といえます。

株式会社 工業市場研究所 川名 透

東京ビジネスタウンの業種別占有率

Topics 3

新型コロナからの需要回復が顕著な不動産マーケット

増大するマーケットの需要を安定させるためにも、新型コロナの収束が切望されます。

「REALTY-news」をお読みいただきまして、
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