三井不動産リアルティ

Vol.83 2022 3月号

REALTY - news

いつもお世話になっております。三井不動産リアルティ REALTY-news事務局です。
寒さの厳しい今年の冬も過ぎ、ようやくの春の訪れにホッとするこの頃、
いかがお過ごしでしょうか。
3月は新玉ねぎなど、陽気に合わせて美味しくなる食材が目白押しです。
卵もそのひとつ、産卵数の減る冬に母体内で熟成が進むのだそうです。
充実度の高い春の食材にあやかって、飛躍を期しましょう。
それでは3月の「REALTY-news」をどうぞ。

投資・事業用不動産に関する情報誌「REALTY PRESS」を当社ウェブサイトにて公開中です。是非、ご覧ください。

REALTY PRESS

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今月のトピックス

Topics 1 中国は不動産セクターの危機を今回も「絆創膏」で乗り切れるか
Topics 2 苦戦する百貨店の閉店と不動産価値について
Topics 3 住宅、物流分野がけん引する不動産マーケット

Topics 1

中国は不動産セクターの危機を
今回も「絆創膏」で乗り切れるか

 中国のマンション業界が大変な苦境にあります。代表格の恒大集団は負債が3,000億$(34.8兆円)、仕掛かり中の物件が223都市に778件、未引き渡し戸数が140万戸です。工事は一時、全面的に停止しました。他の大手デベロッパーも販売戸数は前年比で4割減です。

 中国では、デベロッパーはマンション用地を市が行う公売で入手します。マンションの人気は根強く、価格はどんどん引き上げられていきました。その結果、安いうちに契約したいという購入者と早く資金を手にしたいデベロッパーの思惑が一致、「図面売りでの契約締結時に代金全額を払う」という独特な販売慣行が定着しました。デベロッパーは得た売買代金を早々といろいろな物に使い、建築工事のための資金は必要になった時に別途、様々な手段で調達することになります。

 経済全体における債務の膨張を懸念した当局は、銀行に対してデベロッパーへの融資制限を設け、デベロッパーは資金繰りに窮するようになり、恒大集団が経営危機の表面化の第一号となったわけです。その後、デベロッパー多数がこれに続きました。このままでは目もくらむような人数の図面売りの購入者や代金が支払われていない工事関係者等に影響が及びかねません。社会混乱が起きないよう、当局は総がかりで「販売済みのマンションを竣工させること」を最優先にして恒大集団問題に対処しています。

 現在、この問題は次のステージに進んでいます。

 デベロッパーは市の土地公売への参加を見送っています。ところが市の財政は土地売却収入がないと成り立ちません。主要各市の歳入の土地売却収入への依存度は平均40%もあるのです。

 最近の公売の落札者には「融資平台」と呼ばれる、各地の市役所の外郭団体が非常に増えています。「融資平台」は、元は公共工事の建設の際に資金を市がオフバランスで借り入れるための外郭団体でした。しかし今は単に市がオフバランスで資金調達するためのビークルに近くなっています。これらの銀行借り入れには市が(暗黙の)保証をしているので、「市が土地を売り、それを市自身が買っている」のと変わらず、長続きするはずがありません

 他にもいろいろなほころびが出てくるでしょう。楽観的な人は、中国当局の政策能力は非常に高いので今までのように今回の危機も乗り切るだろうとしています。中国の4大銀行はすべて国有系で、当局がこれらを指図どおりに動かせる点も非常に強みです。

 しかし「上に政策あれば下に対策あり」という格言通り、中国にはどのような政策もしばらく経つと「絆創膏」と化してきた歴史があります。その度に一回り大きな絆創膏を上に貼る、即ちバランスシートを膨らませることで問題を封じ込め、先送りしてきました。

 今回も巨大な絆創膏で何とかなるのか、あるいは大混乱に陥るのか、まだ読めません。

(ドル=116円 3月3日近辺のレート)

ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

Topics 2

苦戦する百貨店の閉店と不動産価値について

 2022年1月末「セブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店を運営するそごう・西武の売却に動き始めた」との報道が出ました。新型コロナウイルスによるパンデミックの中での売上低迷と、オンライン通販事業者との競争激化により、業績の回復見通しが厳しいことに加え、株主の米投資会社バリューアクト・キャピタルが低収益事業を切り離し、コンビニ事業に集中するよう要求したことが「理由」とされており、対象となるそごう・西武の店舗は7都県の10店舗となります。

 報道後すぐに、ららぽーと等を有する三井不動産と、プレミアム・アウトレット等を有する三菱地所が入札参加か?といった記事も出ました。結局は見送りとなり、投資ファンドなどから複数の応募があった様子ですが、今回注目したのは、三井不動産や三菱地所が入札参加を検討した背景です。

 報道などによれば三井、三菱は、今回の売却の目玉である西武池袋店の不動産価値を重視していたようです。結果的には「従業員の引き受けなどの負担」といった採算上の不透明感が強いことが見送りの理由となりましたが、池袋の駅前は、オフィス・住宅・商業すべてにポテンシャルの高い立地で大型の複合再開発が可能なことが検討対象になったもので、過去の同様のケースでは不動産という評価軸が前面に出てくることは無かったように思われます。

 一方、近年、地方都市における商業施設は、駐車場数の確保が可能な場所に進出することが“主流”となっています。主に郊外の土地が候補となりますが、大規模な施設面積を確保しやすいことや、モータリゼーションの効率を向上させるインフラが整備されやすいというメリットがあります。

 反面、地方都市の駅前の百貨店など中心部にある商業施設は、来店者の郊外の商業施設などへの流出という事態に苦戦を続けつつも、業態転換をも含めたその立地の不動産価値を最大化し得る方策を模索していかなければなりません。

 そのひとつのケースとして、三井不動産は、2016年9月に閉店した「そごう柏店」の土地と建物を取得しており、複数の地権者との交渉をまとめ跡地開発を推進しています。不動産を熟知し、活用できる専門企業ならではの「不動産価値の最大化」の答えに期待したいと思います。

株式会社 工業市場研究所 川名 透

SC/百貨店月別総販売額推移

Topics 3

住宅、物流分野がけん引する不動産マーケット

首都圏マンション市場は高価格が継続、物流も今後の更なる需要増を予測、空室率、賃料にも改善傾向が窺えるオフィス市場など、長引く新型コロナの影響下でも市場活性の兆候が窺えます。

「REALTY-news」をお読みいただきまして、
誠にありがとうございます。

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