日本では「不動産」とは呼ぶことがない変なリートがアメリカには幾つかあります。まずこれらからご紹介します。
代表格は「アンテナリート」です。「ただの棒」から「鉄塔」まで、大変な数の携帯電話用の基地局を保有しています。収入は携帯各社からのアンテナ取り付け料(使用料)です。リートは「不動産投資信託」の略なので、「アメリカ最大の不動産会社」と英語で検索するとアンテナリートの最大手が出てきます。
「ビルボード・リート」は屋外広告を貼る広告板や電光掲示板を大規模に運営しています。収入は広告を貼る使用料や広告板建築用の土地の使用料です。「ビルボード・リート」は2社あり、大きい方のリートは全米で30万枚を運営しています。
現在、見かけるビルボードの過半は現行の規定では建てられない「既存不適格」なので建て替えが出来ません。その代わりに、競合する広告板が新たに出現する心配もありません。
「学生寮リート」や「高齢者向け住宅リート」についてですが、学生寮の方は大学進学者と留学生の増加で手堅い投資でした。今は新型コロナで帰郷した学生が増え、空室に苦しんでいるところもあります。民間の学生寮の家賃は高いのですが、個室で清潔な点が人気です。一方、高齢者向け住宅は苦戦が目立ちます。原因は供給が増えすぎた事と、シニア達はデベの予想よりもはるかに都会に住みたがっていたというミスマッチです。
ビジネスプロセスから「リートに適格な部分を切り出す」例には各種、あります。
「記録保存リート」は銀行の取引データやシナトラのオリジナル音源 その他の貴重な物を預かって保管するリートで、顧客数は22万社です。保管施設の中には4.8万坪という超巨大な地下倉庫もあります。「鉄製のラック」が不動産として認められ、リート化しました。
農業・林業関係では「森林リート」があります。アメリカの林業は山の斜面ではなく広大な平地で行い、単機能ですがモンスター級の巨大な機械を幾つもそろえて使い分けます。土地や設備をリート化して資金を効率化するわけです。「農地リート」も同じ発想で、農業機械もモンスター級です。ESGなり地球環境の面から注目されているセクターでもあります。
こうしてみると日本の不動産ビジネスにはまだまだ無限の可能性がありそうですが、これはさすがに無理だというものも挙げておきましょう。
「カジノリート」はカジノ用施設や不動産50か所を所有していますが、大部分は中小規模の施設です。「麻薬栽培リート」というものもあります。一部の麻薬が州レベルで合法化され、その栽培・販売プロセスから不動産や設備部分を切り出したリートです。「カンナビス・リート」と呼ばれ、2021年7月時点では3社が上場していました。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清