ワクチン接種の広まりで「アメリカ人がとうとう外食を再開した」という朗報が先日ありました。オリーブ・ガーデンは900店を展開するイタリア料理のチェーン店です。その親会社の四半期決算が先日発表され、12-2月期の売上げは前年比でかなりのマイナスだったのですが、3月21日(日)までの1週間の売上げは2年前と比べても5.7%増加でした。アメリカのレストラン業は近々急回復するだろうとの見込みの裏付けが、数字でも出てきた訳です。
レストランは新型コロナから最もひどい打撃を受けたビジネスです。2020年に閉店となったレストランとバーは新型コロナの影響もあって9.1万軒に達し、その9割は小規模・家族経営です。アメリカではそもそも小規模経営の店が3分の2強だという事情もあります。
これを反対に見れば今は、有利な条件での店舗取得のための「めったにないチャンスだ」とも言え、資金力のある大手の中には規模拡大に入っている所があります。
昨年春先のレストランの「店内営業禁止」にニューヨーカー達は我慢できず、店の前にテーブルを並べての屋外営業なら良いとしたのですが、やがて秋になると寒くてテントが持ち出されました。2人用のテントはエスキモーが使うような小ささで、一方で大きな物は教室大もありこれではテントの中で感染してしまいそうでした。そのうち屋内営業が制限付きで許されキャパの25%までとなったり50%に変更されたりし、そのたびにテーブルの並べ替えや食材の仕入れ、スタッフの確保で大わらわとなりました。
このような中で増加したのが「ゴースト・キッチン」という「出前」に特化したレストランです。「レストラン」とは呼ばれていますが、客用のテーブルはありません。多いパターンは家主や投資家が築年の古いビルの家賃の安いフロアでプロ仕様のキッチンを数セット(数部屋)設けます。これをシェフなり経営者が賃借、出前専門の店を開業してインターネットやチラシで宣伝、できた料理はウーバーイーツ他の宅配業者が届けます。キッチン一つで営業しているゴースト・キッチンも、キッチン数セットを借りている所もあります。
営業側としては初期コストが圧倒的に安く、通常のレストランの数十分の1以下です。20以上のブランドで営業している所もあるのですが、これにはゴースト・キッチンで儲けるという本来の狙いと、どのようなメニューが売れるかということを試そうという狙いがあります。ゆくゆくは好評なメニューを選んで路面店で勝負しようという野心です。
ホテルも多くが閉鎖されましたが、これらのキッチンはもろにプロ仕様そのものです。ホテルがこれをゴースト・キッチンとして貸し出している例もあります。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清