2019/6/26

営業拠点の統合・整理に際し、入札によるスムーズな売却を実現。企業にとって入札のメリットとは?

10年以上のお付き合いで信頼いただき、入札代行業務のご指名を

- 今回のケースでお手伝いをされたY社様についてお聞かせください

奥田 Y社は大手製造業の主要なグループ会社のひとつで、販売や顧客サービスを担っている企業です。東京都内はもちろん首都圏の広汎な地域に販売拠点を数多く保有されています。そのため、Y社様の保有する営業所などの不動産の売却、購入などに関して営業範囲が広い当社をご用命いただくことも多く、様々なサポートをさせていただいています。企業間のお取引としてはかれこれ10年以上のご用命をいただいており、私自身も前任の担当者から引き継いでもう5年になります。

- 長年の信頼の積み重ねがあるわけですね。

奥田 そうですね、大変ありがたいことに、保有不動産の有効活用のご相談をいただいたり市場調査をご依頼いただいたりと、Y社様のCRE(Corporate Real Estate)戦略のサポートについて様々なご用命をいただいています。

- そのような大切なお得意先様であるY社様ですが、今回のご相談はどのようなものだったのでしょうか。

奥田 Y社様より、拠点戦略の一環として売却すべき不動産が発生したために、入札により売却をしたい、ついては入札の幹事をやってほしいとご指名をいただきました。
Y社様が、売却にあたって入札をご選択されたのはいくつかの理由があります。ひとつはY社様の大きな組織改編に伴う拠点再編であったため、経営上の目標として売却・引渡までのタイムリミットが決まっていたということがあります。また当然ながら、より高い価格で売却したいということもあります。更に判断の透明化のためもありました。Y社様の保有不動産の売買にあたっては、親会社や他のグループ企業に対して条件や売買のプロセスに経営上の合理性があることを説明出来なくてはなりません。入札での売却であれば、売却先や売却条件など、決断までの経緯が明らかになりますからその点が安心です。

- 透明性が確保されるわけですね。入札による売却というのは公有財産だと一般的な手法だと思いますが、民間企業の場合でも透明性を確保しながら設定した経営目標を求めるのには良い方法ですね。

奥田 民間企業様でも個人のお客様でも入札による売却をご選択される方は多くいらっしゃいます。
当社は入札代行とともに、Y社様との間に立つ売却側の仲介を請負いましたが、今回Y社様からは、購入先の仲介を行う複数業者の指定がありました。Y社様は当然、当社以外にも様々な不動産業者様とのお付き合いがありますし、より多くの業者を競わせることは売却には有利に働きやすいというご判断でした。

- 入札代行というのは、どのような業務なのでしょうか。

奥田 ごく簡単に申し上げると、売主であるY社様の代理として、売却に関する様々な諸業務を行うということです。
不動産の売却仲介においては、購入検討者を探す営業活動以外にも様々な業務があります。入札代行業務では、売却条件を記した入札要綱の作成、当該不動産の内覧や現地案内、当該不動産に関する情報提供や説明、質問の受付と回答などをご所有者様の代理として行います。
例えば購入検討者が10現れた場合、単純にこれらの説明や現地案内だけでも10回繰り返さなくてはいけないわけです。購入検討者が増えるほど現地案内のスケジューリングも調整が大変になりますし、購入検討者によって購入後の用途が異なりますから当該不動産に関する質問も様々です。
私どもは不動産の仲介が本業ですから、当該不動産について、どのような購入検討者が想定されるか、検討者がどういう点を見極めようとしているかなどについてある程度は予測がつきますが、それでも様々な用途が想定できるような好条件の不動産の場合などには、意外な購入希望者や質問も飛び出すもので、これらの業務を効率よくこなすには経験も必要になってきます。
また、売買契約の締結時においては、売買金額だけでなくスケジュールを始めとした引渡に際しての諸条件の交渉なども行いますし、契約書類の作成なども執り行い引渡に至るまで安全な売買取引をサポートします。Y社様にとっては不動産1つの売却にこれだけの事務処理労力を割くのはかなりの負担ですので、私どもプロの力を上手く活用される決断をされたということでしょう。

- 入札による売却には、今おっしゃったような売却に関する専門業務の確実なアウトソース以外にも、売主様にとってのメリットはあるのでしょうか。またデメリットもありますか?

奥田 入札による売却とは異なる相対取引の場合には「本当にその相手でいいのか、その価格が限界だったのか?」という問いに答えにくいという問題があります。一方で、入札にして複数の購入希望者を比較検討したうえで決定すれば、なぜその相手にその価格、条件で売却したかということを対外的に説明がしやすく公正さを保った不動産の売却を進めることができます。

- 入札代行の業務の中に「入札要綱の作成」という業務がありました。売主様であるY社様が希望する売却条件ということなのでしょうか。例えばその条件の中に、売却希望価格などを盛り込むこともあるのでしょうか。

奥田 ケースバイケースですが、今回のY社様の入札については最低売却希望価格の提示は行いませんでした。

- それは何故でしょう?

奥田 入札要綱に売却希望価格を記載してしまうと、購入検討者がその値段を目指して、本当はもっと出せる余力もあるのに調整してしまうという可能性があったからです。
最低売却希望価格は入札要綱に記載する場合としない場合と様々なのですが、記載する場合には、この価格の設定はかなり難しく腕の見せ所でもあります。実際の応札価格より高すぎる希望価格を提示してしまった場合には応札者がゼロということもあり得ますし、低すぎると前に申し上げたように売却価格を押し下げる悪影響にもなりかねないのです。
これもケースバイケースですが、売却が容易ではない不動産の場合には、目安として最低売却希望価格を提示しておくこともあります。ただ、今回の売却の場合には様々な売却先が想定されたことと不動産市況が売り手市場なこともあり、希望価格を記載せず“価格の上振れ”を狙うことを、Y社様にご提案しました。

- 入札によって、最終的な売却価格はY社様のお気に召していただけたのでしょうか

奥田 実は、入札代行をお受けした当初は、当該の土地の条件などからマンションの開発用地として購入されるだろうと想定していました。がしかし最高金額を応札した購入者様はマンションデベロッパーではない一般企業でした。私どもが思っていた価格より高価格での売却を実現することができ、Y社様にもご満足いただけたのではと思っています。
購入者様や売却金額はここでは申し上げられませんが、不動産マーケットは刻々と変化をしていて幅広い目で日々の情報収集が欠かせないと改めて痛感しています。日々勉強ですね。


奥田 健

奥田 健(おくだ たけし)
三井不動産リアルティ株式会社
ソリューション事業本部 統括営業部
コーポレートサービスグループ
※取材当時は営業一部所属

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