2025/2/20 経済

経済指標から2025年の日本経済を読む|第2部 日本の民間設備投資、住宅建設、公共投資

2024年後半にアメリカ大統領選、日本では衆議院選挙が行われ、2025年の日本経済の行方が注目されています。国内景気は回復持続するのか、「経済指標から2025年の日本経済を読む」と題し以下の3部構成で解説していきます。

第1部 米中を中心とした世界経済
第2部 日本の民間設備投資、住宅建設、公共投資
第3部 日本の雇用、倒産、物価

第2部では、日本の民間設備投資、住宅建設、公共投資について解説します。

永濱 利廣

永濱 利廣(ながはま としひろ) Toshihiro Nagahama
株式会社 第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
担当:内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

民間設備投資は2025年も増加

 設備投資を形態別にみると、全体の半分弱を占める機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は、2024年に一部自動車メーカーの認証不正問題に伴う生産停止事案も重なり、投資計画の実行が一部先送りされたこと等から軟調に推移してきた。しかし一方で、先行指標の機械受注(船舶・電力を除く民需)を見ると、世界的な半導体需要の回復の中で半導体製造装置の国内投資が進んでいることなどから、持ち直しの動きがみられている。また、機械受注残高やこれを月当たり平均販売額で除した手持ち月数も過去最高水準で推移していることからすれば、これらが2025年以降の機械投資の回復という形で顕在化してくることが期待される。

資本財出荷と機械受注と受注ソフトウェア(3か月移動平均)

 一方、設備投資の約四分の一を占める建設投資については、先行指標の民間非住宅建築の工事費予定額を見ると、製造業による生産能力の強化のための工場の新設・増設、オンライン消費需要に対応した物流施設の建設等にけん引され、歴史的に高水準で増加傾向が続いている。工事進捗に伴う出来高ベースの民間建設投資は定義上、着工ベースの工事費予定額から一定のラグを持って変動するものであり、2024年時点では回復途上にあった。こうしたことからすれば、工事費予定額の動きを反映して、建設投資は2025年も増加傾向が続くことが期待される。

建築着工工事費予定額と出来高(非居住用)

 そして、設備投資の約3割を占める知的財産生産物投資についてみると、ソフトウェア投資は、DX対応のほか人手不足に対応した省力化の動機もあり、増加傾向が続いている。日銀短観においても、2024年の計画でも他の形態の投資よりも高いことなどからすれば、ソフトウェア投資への需要は2025年も引き続き堅調に推移するとみられる。

 一方の研究開発投資については、過去数年の実績の伸び率が年度当初の6月短観調査時点の計画を上回る傾向がみられることに加え、2024年についても2017年以降で過去最高水準の計画伸び率となっている。

 こうした企業の投資意欲を勘案すれば、製品の高付加価値化・差別化に向けた無形資産への投資意欲が2025年も高まっていくことが示唆される。

新規住宅建設は弱含み継続も公共投資は底堅く推移

 続いて、主に家計による投資である住宅建設について確認すると、新設住宅着工戸数は全体として弱含みが続いている。内訳をみると、戸建のうち注文住宅に当たる持家は、建築費の上昇・高止まりの中で減少傾向が続き、2024年以降は下げ止まっているものの、低水準で推移している。

 貸家については、不動産会社やREITの建設は底堅いものの、個人貸家業の着工がこのところ減少傾向にあり、全体としては、横ばい圏内の動きとなっている。賃料は上昇傾向にあるものの、建築費の上昇・高止まりや、小幅とは言え長期金利の上昇が相まって、賃貸利回りが低下傾向にあることが背景と考えられる。

 分譲のうち、建売住宅に当たる戸建分譲については、建築費の高止まりによる販売不調から2024年も新設着工は弱含んできた。分譲マンションなどの共同分譲については、建築費が上昇する下で、適当な用地取得が困難という供給制約も相まっているため、均してみれば弱含みといえよう。

 そもそも1960 年代後半以降、住宅ストック数が世帯数を超えた状態が続く中で、新設住宅着工の中でもとりわけ分譲を含む広義の持家については、住宅購入志向が高い夫婦とこども世帯の減少や、住宅購入志向の低い単身世帯の増加など人口・世帯構造の変化を鑑みれば、住宅投資は長期的に減少傾向にあると言えよう。

 他方、政府の投資動向を示す公共投資の動きを確認すると、国の一般会計公共事業関係費及びその他施設費は、2024年度当初予算及び補正予算において、国土強靱化関係予算を中心に8兆円を超える予算措置が講じられると見られ、補正後予算の対前年度比は増加することが見込まれる。加えて、2024年度の地方財政計画では地方単独事業として、前年度並みとなる6兆円を超える金額が計上された。実際、進捗ベースの公共工事出来高をみると、2024 年度以降の工事出来高は、都道府県や市区町村発注事業を中心に大幅に増加し、2023年度補正予算の効果が表れていることが窺える。

 2025年も国・地方の予算措置が反映されることで、公共工事受注額は増加基調となるだろう。

利用関係別住宅着工戸数(季節調整値)

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