CRE戦略としての有効活用
第2部 企業不動産の有効活用と経営改革
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日本企業にとって、総資産に占める不動産の比率が高く、企業不動産の生産性がその企業の収益性、企業評価につながります。「CRE戦略としての有効活用」と題し、以下の3部構成で解説していきます。
- 第1部 企業不動産の生産性
- 第2部 企業不動産の有効活用と経営改革
- 第3部 不動産の含み益と企業評価
第2部では、企業不動産の有効活用と経営改革について解説します。
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- 永濱 利廣(ながはま としひろ) Toshihiro Nagahama
- 株式会社 第一生命経済研究所
- 経済調査部 首席エコノミスト
- 担当:内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析
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企業行動の面から不動産の有効活用に向けた動きを確認してみよう。具体的には、資産売却や流動化、再開発などの流れが非不動産企業にも広まりつつあるかという点であり、こうした背景には、企業の意識改革やファンド等による資産効率改善へ向けた圧力が考えられる。
まず、法人企業統計を元に非金融法人の不動産取得動向を見ると、2021年度は純増を続けていたことが見て取れる。2022年度に入っても金額は縮小したものの純増は継続し、ネットで純減に転じたのは 2024年度以降と、コロナ後純増に転じてから3年経過してからである。しかし、製造業だけは依然として純増を続けており、特に2024年以降の純増ペースは前年差2兆円を上回っていることがわかる。
また、東京商工リサーチの調査によれば、上場企業の不動産売却企業数は2010年代後半以降にいったん落ち着いていたが、2020年代以降は再度増加トレンドにあることがわかる。
そして、以上のような不動産売却とセットで隆盛を極めているのが不動産証券化ビジネスである。というのも、国土交通省「土地白書」によると、不動産証券化の市場規模は2023年度に28.6兆円と過去最高を更新している。こうしたことから、上場・非上場Jリートを問わずに国債利回りよりも高い配当利回りを求めた資金流入が旺盛な点も、企業の円滑な資産売却につながっている可能性があるといえる。
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