近年増加中の、日本を訪れるインバウンド観光客の中での、リピーターの割合が高まっており、インバウンド観光客の約6割がリピーターで、そのうち約56%は1年以内に再訪しているとされています。※
初回訪問客は東京、大阪、京都などの大都市圏を訪れ、リピーターは地方へと足を運ぶ傾向が目立ち、彼らはよりディープな日本体験を求める志向があります。しかし、地方では、宿泊施設や交通手段といったインフラの受け皿が十分に整備されていないケースが多く、短期滞在を余儀なくされたり、訪問自体を断念したりする観光客も少なくありません。
このような状況を踏まえて、国土交通省は「スモールコンセッション」という仕組みを活用することによる官民連携(Public Private Partnership)で、地方の観光インフラ整備を促進する施策を推進しています。2024年12月には、スモールコンセッションの活用をさらに活性化するための新たな「プラットフォーム」が構築されたことに加え、各自治体にプロジェクトの初期段階における様々な課題の解決をサポートする専門家を派遣するなど、地方での観光需要拡大に向けた取り組みを強化していく方針です。
スモールコンセッションとは、小規模な公共施設の運営や管理を民間事業者に委託する手法です。地域ごとの特性に応じた小規模な事業を推進するのが特徴で、観光分野においても応用されています。この仕組みの活用により、地方の観光客の受け入れ体制が強化され、持続可能な観光産業の発展を支えていくことができます。
具体的な施策としては、宿泊施設数などが限られ観光客の増加に対応しきれないケースに対して、既存の旅館やホテルの改修支援、新たな宿泊施設の開設、歴史的建造物を活用した宿泊施設の整備などを推進したり、公共交通機関の利便性が低く、観光客が移動に困るケースに対しては、レンタカー事業や観光タクシー、オンデマンド交通の導入支援により、観光客の移動手段を確保しやすくすることなどが挙げられます。
また、地域の観光情報を一元的に提供するデジタルプラットフォームの活用により、訪日客が地方の魅力を簡単に発見できるようにし、多言語対応の強化も推進すれば、さらに広範に情報の周知を計ることも可能になります。
スモールコンセッションの導入は、小規模なプロジェクト単位での施策になるため、調整事項も低減され、短期間で実施に漕ぎ着けうることに加え、地方自治体と民間事業者の協力体制が整いやすく、より観光客のニーズに合った柔軟な対応が可能になります。観光客が増えれば、宿泊業や飲食業などの地域経済が活性化し、雇用創出にもつながります。
今後多くの地域でこのスモールコンセッションの取り組みを活用して、観光インフラの整備が進められることが期待されます。併せてDXの柔軟な導入が促進されれば、各自治体や事業者の間でノウハウが共有され、さらに効果的な施策が生まれていくでしょう。
スケールはスモールでも、成功事例が積み重なることにより、日本全体の観光産業の持続的成長の基盤がより強固になっていきます。
※参照:日本政府観光局:訪日外客数(2024年12月および年間推計値)
国土交通省 観光庁:インバウンド消費動向調査【トピックス分析】 訪日外国人旅行者(観光・レジャー目的)の訪日回数と消費動向の関係について