三井不動産リアルティ REALTY news Vol.118 2025 2月号

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REALTY PRESS
TOPICS 1

地方活性化のカギとなるコンパクトシティ

 日本では少子高齢化や大都市への一極集中の影響などで過疎化し、活気を失いつつある地方都市の問題がクローズアップされています。さらに、都市中心部の空き家の増加や、住民が郊外に広がる「スプロール化」が進行し、都市機能の低下に陥っているケースも少なくありません。

 地方の中核市でも、商店街がシャッター通りになったり公共交通が便数減になったりで、住民が生活利便を失ってしまう事例が増加しています。こうした状況を改善するためには、単なる空き家対策だけでなく、地域全体の社会構造を見直す大きな取り組みが必要です。

 コンパクトシティとは、人口や都市機能を中心部に集約させることで、効率的で持続可能な都市を構築するもので、具体的には以下のような特徴があります。

  • 移動距離の短縮:住宅や商業施設、公共施設を中心部に集約して、徒歩や自転車、公共交通機関での移動をしやすくしている
  • 土地の有効活用:放置された空き家や空き地を再開発し、住みやすい街区が形成されている
  • 環境負荷の軽減:自家用車の利用を減らすことでCO2排出量を削減している

 また、コンパクトシティの実現には、インフラの再整備だけでは不十分で、以下の施策が不可欠です。

  • 企業誘致のための規制緩和と支援
    地方都市に新しい雇用を生み出すには、企業が進出しやすい環境が欠かせません。税制優遇や許認可のハードルを下げて企業の参入を促進するなどです。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入
    デジタル技術を活用し、行政手続きのオンライン化や業務効率化を図ることで、利便性が向上し、地域全体の魅力が高まります。
  • 観光資源の再評価とインバウンド対策
    地方独自の文化や観光資源を再評価し、現代的な魅力を持たせ、インバウンド観光客などを取り込むための多言語対応やストーリー性のあるプロモーションが重要です。

 地方都市の再構築で注目されているモデルケースの1つが静岡県裾野市でトヨタが進める「ウーブン・シティ」というプロジェクトです。このプロジェクトは、自動運転車、ロボット、スマート住宅、AI技術、再生可能エネルギーなどを活用することで、未来型の都市生活の実現を目指しています。

 例えば、住民の健康データをセンサーでリアルタイムにモニタリングし、AIを活用した医療サービスを最適化する仕組みなどが検討されているほか、水素エネルギーを活用した効率的なエネルギー循環の仕組みも導入される予定です。

 こうした技術や取り組みは、地方都市の抱える高齢化や過疎化などの課題に対して、有効なヒントになります。医療や交通の効率化、そしてエネルギー管理などの分野で、ウーブン・シティは地方都市のモデルケースとして注目すべきプロジェクトと言えるでしょう。

 地方都市が抱える課題は複雑ですが、コンパクトシティを軸にした取り組みは、日本全体の未来を好転させるカギにもなっています。空き家対策や再開発、観光資源の活用といった具体的なアクションを起こし、企業や自治体、住民が一体となって進むことで、先ずは新たな活力が生み出されます。

REALTY INSIGHT
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TOPICS 2

需要が先行を続ける大都市圏のホテルマーケット

 アフターコロナの景気回復に伴い、国内の旅行需要が増大し、併せて、急激なインバウンド客の増加もあり、宿泊施設の不足が目立っています。中でも京都の状況は厳しく、宿泊費用を引き上げても予約さえ取れない状況で、京都市内での宿泊をあきらめ、大阪市内に宿泊先を求める人が増えているものの、現在は大阪市内でも宿泊先の確保難が目立つようになっています。

 2019年以降の宿泊施設数は、東京都では増加していますが、京都府は減少、大阪府では微増に留まっており、急激な宿泊需要の増加に対応できていない状況が続いています。

 また、宿泊旅行統計調査から、2019年10月と2024年10月の延べ宿泊者数を見ると、東京都は693.2万人泊→975.5万人泊で約1.4倍に、京都府は277.7万人泊→317.5万人泊で約1.1倍、大阪府は397.5万人泊→525.9万人泊で約1.3倍になっています。京都府は2019年以降、大きく増えてはいませんが、簡易宿所の比率が高い市場でもあり、収容人数のキャパ的に限界にきている様子が窺えます。

 3都市の2024年10月時点の宿泊者内訳を見ると、東京都はインバウンド544.7万人泊、日本人430.8万人泊、京都府はインバウンド176.0万人泊、日本人141.4万人泊、大阪府はインバウンド238.0万人泊、日本人287.8万人泊と、東京都と京都府ではインバウンド客が日本人客を上回る状況にあります。

 新型コロナの影響で経済活動の鈍化が続いた中でも、各地で外資系列のホテル開発は継続され、新しいブランドも続々進出してくる等、ホテルマーケットに対する縮小イメージはなかったのですが、コロナ禍が収束し一気に訪日客が回復した現在では、明らかにホテル不足、特に「インバウンド向けホテルの不足」が顕在化しています。

 現状、東京・京都・大阪の中心部周辺では、ホテル開発用地も少なくなっていることに加え、建築費も高騰していることから、新規のホテル開発は難しくなっています。京都の需要を大阪でカバーしている状況を踏まえれば、アクセスがよい地域であれば、大阪中心部ではなくても十分な採算が確保できると考えられます。

 インバウンド旅行客の目が地方の風物やグルメ、産業などに向き、各地でオーバーツーリズムと称される多種多様な問題も惹起されつつある中で、インフラの不足によってインバウンド客の宿泊が都市圏に集中してしまうなど、地方への経済波及施策が十分機能していないことなどの課題は残ります。しかしそれ以上に、インバウンドだけでなく国内旅行者のニーズに対しても不足している大都市圏でのホテルを早急に増やすことが先決になっています。

 東京・京都・大阪(近郊)のホテルは料金水準も高く、まだまだ大きな需要が確保できる優良なアセットであるので、各界プレイヤーによる今後の積極的な市場参入が待望されています。

東京都・京都府・大阪府 宿泊施設数
賃貸オフィス
TOPICS 3

インバウンド企業の進出や、天神ビッグバンなどで
経済規模が拡大する九州エリア

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