アフターコロナの景気回復に伴い、国内の旅行需要が増大し、併せて、急激なインバウンド客の増加もあり、宿泊施設の不足が目立っています。中でも京都の状況は厳しく、宿泊費用を引き上げても予約さえ取れない状況で、京都市内での宿泊をあきらめ、大阪市内に宿泊先を求める人が増えているものの、現在は大阪市内でも宿泊先の確保難が目立つようになっています。
2019年以降の宿泊施設数は、東京都では増加していますが、京都府は減少、大阪府では微増に留まっており、急激な宿泊需要の増加に対応できていない状況が続いています。
また、宿泊旅行統計調査から、2019年10月と2024年10月の延べ宿泊者数を見ると、東京都は693.2万人泊→975.5万人泊で約1.4倍に、京都府は277.7万人泊→317.5万人泊で約1.1倍、大阪府は397.5万人泊→525.9万人泊で約1.3倍になっています。京都府は2019年以降、大きく増えてはいませんが、簡易宿所の比率が高い市場でもあり、収容人数のキャパ的に限界にきている様子が窺えます。
3都市の2024年10月時点の宿泊者内訳を見ると、東京都はインバウンド544.7万人泊、日本人430.8万人泊、京都府はインバウンド176.0万人泊、日本人141.4万人泊、大阪府はインバウンド238.0万人泊、日本人287.8万人泊と、東京都と京都府ではインバウンド客が日本人客を上回る状況にあります。
新型コロナの影響で経済活動の鈍化が続いた中でも、各地で外資系列のホテル開発は継続され、新しいブランドも続々進出してくる等、ホテルマーケットに対する縮小イメージはなかったのですが、コロナ禍が収束し一気に訪日客が回復した現在では、明らかにホテル不足、特に「インバウンド向けホテルの不足」が顕在化しています。
現状、東京・京都・大阪の中心部周辺では、ホテル開発用地も少なくなっていることに加え、建築費も高騰していることから、新規のホテル開発は難しくなっています。京都の需要を大阪でカバーしている状況を踏まえれば、アクセスがよい地域であれば、大阪中心部ではなくても十分な採算が確保できると考えられます。
インバウンド旅行客の目が地方の風物やグルメ、産業などに向き、各地でオーバーツーリズムと称される多種多様な問題も惹起されつつある中で、インフラの不足によってインバウンド客の宿泊が都市圏に集中してしまうなど、地方への経済波及施策が十分機能していないことなどの課題は残ります。しかしそれ以上に、インバウンドだけでなく国内旅行者のニーズに対しても不足している大都市圏でのホテルを早急に増やすことが先決になっています。
東京・京都・大阪(近郊)のホテルは料金水準も高く、まだまだ大きな需要が確保できる優良なアセットであるので、各界プレイヤーによる今後の積極的な市場参入が待望されています。