三井不動産リアルティ REALTY news Vol.114 2024 10月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

ショールーミングで「個客」ニーズを強固にグリップするSCマーケット

 近年、小売業界全体で従来のスーパーマーケットや総合スーパー(GMS)の業態が厳しい状況にあります。特にセブン&アイホールディングスが運営しているイトーヨーカドーは、アパレル事業の不振が顕著で、ユニクロやGUなどのファストファッションブランドや、ZOZOTOWNなどのECサイトへの消費者流出が主な原因とされています。一方の雄であるイオングループも、既存店の売上向上に注力する方針に加えて、人手不足や建築費の高騰等の課題が解消できず、2024年のイオンモールの新規出店は26年ぶりに0になります。

 この流れは、百貨店など他の小売業態にも共通しており、消費者が実店舗からオンラインにシフトする傾向は加速しています。このような逆風の中、三井不動産が運営している「ららぽーと」では、ショールーミングというスタイルを積極的に採用し、成功を収めています。ショールーミングとは、実店舗にて商品を確認し、購入はオンラインで完結させるもので、かつてはこうしたECサイトは実店舗の売上の脅威となっていましたが、この手法が実店舗の強みをEC購買に相乗的に活かす形で新しい顧客体験を提供しています。

 「ららぽーとクローゼット」では、顧客は実際に店舗で試着し、その後ECサイト「&mall」で購入するという商流で、同様のモデルは、伊勢丹新宿店でも採用され、当店の業績のV字回復を後押しするなど、時間的効率を重視する現代の消費者にとって、非常に有益視されています。

 従来、小売業界においては大衆向けの商品の大量提供が主でした。しかし、現在は個別対応が求められ、企業は「個客」に焦点を絞ったターゲティング戦略に移行しています。会員制やAIによるデータ分析を活用し、購買履歴や嗜好に基づいて最適な商品を提案する手法が拡大、これによりリピート購入の促進や顧客の囲い込みなどが進み、収益性向上につながっています。ショールーミングの成功によって、ECと実店舗が補完し合い、両者の連携が進むことで、顧客に利便性と体験価値を提供できるようになりました。日本市場では少子高齢化が進む中、店舗とECの融合は、今後の小売業界における成長の鍵ともなるでしょう。

 これらの実現によって、顧客満足度と企業の成長が両立する未来が見えています。この方向性を踏まえて、個別顧客情報の集積というビッグデータを有効に活用して、販売の現場に密接にフィードバックし、それに迅速に対応するには店舗インフラはどうあるべきか、予測やノウハウ蓄積による構築の必要性がより高まっていきます。

有限会社アローフィールド 代表取締役社長 矢野 翔一

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TOPICS 2

都市部における団塊世代の持ち家の空き家化

 居住世帯のない住宅(一戸建て)の内、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家(今後の方向性が決まっていない空き家)」は全国で約275万戸と、5年前の調査から約33万戸増加※しています。

 空き家は、「建物倒壊リスク等の安全性の問題」「害虫・害獣、雑草、カビ・湿気などによる衛生面での問題」「景観の悪化」「防犯上のリスクが高まる」「修繕・解体費用がかかる」「固定資産税がかかる」などの問題を抱えながら、現在も増え続けています。所有者が誰かわからない物件も多く、2024年4月から、相続登記の申請の義務化を実施せざるを得ない状況にまでなっています。

 一般的に空き家は、売買の活発な都市部には少なく、地方に多いと考えられがちですが、下グラフにある首都圏他の人口集中地域にも多く存在します。これらの内には、“商売にならない(流通に乗らない)立地の物件”で、既に“手詰まり状態にある”モノも多く含まれます。

 一方、今後発生する都市型の事例として、世田谷区や杉並区などで、“団塊世代の持家”の空き家化の比率が上がると考えられます。既に、主要な私鉄沿線などでは、この問題への対策の一つとして、空き家予備軍住戸の活用が進められており、リースバックなどの取引も増えています。

 そういった都市部の空き家を引き継ぐ主体になるのは団塊ジュニア世代で、その多くは既に自宅を所有し、親の家に戻る(継ぐ)ことは想定しにくいので、親世代に比べ売却に躊躇がないと考えられます。とすれば、今後発生が予測されるこうした都市型空き家は、市場への投入が期待される「不動産における都市鉱山」とも言えます。

 もっとも、この点は「不動産業に携わる者」にとっては認識済みであり、日本の実情を鑑みて、世帯数減少にともなって供給が増加するとはいえ、買い手も減少していくこと、またそれらが「商品性の高い物件」ばかりではないことは容易に想像がつきます。

 人口減少にともない、買い手市場が強まることは確実であり、ニーズに合致しなければ売買がより成立しにくくなるのは避けられないでしょう。供給増の空き家の中からポテンシャルの高いものを選り分け商品化させる、目利きとノウハウの確立が必要とされます。

※住宅・土地統計調査2023年版による

株式会社 工業市場研究所 川名 透

賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家数
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TOPICS 3

マーケットへ波及する懸念がある建築コスト・人件費等の高騰

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