居住世帯のない住宅(一戸建て)の内、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家(今後の方向性が決まっていない空き家)」は全国で約275万戸と、5年前の調査から約33万戸増加※しています。
空き家は、「建物倒壊リスク等の安全性の問題」「害虫・害獣、雑草、カビ・湿気などによる衛生面での問題」「景観の悪化」「防犯上のリスクが高まる」「修繕・解体費用がかかる」「固定資産税がかかる」などの問題を抱えながら、現在も増え続けています。所有者が誰かわからない物件も多く、2024年4月から、相続登記の申請の義務化を実施せざるを得ない状況にまでなっています。
一般的に空き家は、売買の活発な都市部には少なく、地方に多いと考えられがちですが、下グラフにある首都圏他の人口集中地域にも多く存在します。これらの内には、“商売にならない(流通に乗らない)立地の物件”で、既に“手詰まり状態にある”モノも多く含まれます。
一方、今後発生する都市型の事例として、世田谷区や杉並区などで、“団塊世代の持家”の空き家化の比率が上がると考えられます。既に、主要な私鉄沿線などでは、この問題への対策の一つとして、空き家予備軍住戸の活用が進められており、リースバックなどの取引も増えています。
そういった都市部の空き家を引き継ぐ主体になるのは団塊ジュニア世代で、その多くは既に自宅を所有し、親の家に戻る(継ぐ)ことは想定しにくいので、親世代に比べ売却に躊躇がないと考えられます。とすれば、今後発生が予測されるこうした都市型空き家は、市場への投入が期待される「不動産における都市鉱山」とも言えます。
もっとも、この点は「不動産業に携わる者」にとっては認識済みであり、日本の実情を鑑みて、世帯数減少にともなって供給が増加するとはいえ、買い手も減少していくこと、またそれらが「商品性の高い物件」ばかりではないことは容易に想像がつきます。
人口減少にともない、買い手市場が強まることは確実であり、ニーズに合致しなければ売買がより成立しにくくなるのは避けられないでしょう。供給増の空き家の中からポテンシャルの高いものを選り分け商品化させる、目利きとノウハウの確立が必要とされます。
※住宅・土地統計調査2023年版による
株式会社 工業市場研究所 川名 透