レインズ※によると2023年の東京23区の中古マンション成約件数は16,154件。2016年に15,000戸の大台に乗り、その後も年15,000~16,500件の推移が続いています。また、年末在庫も2016年以降22,000件台後半を上限とした動きが続いていますので、市場としては「やや在庫が多いものの、一定の需要が見込める安定市場」となっています。
一方、成約単価は上昇が続いており2004年の坪あたり148.9万円が2014年には坪あたり205.7万円に上昇、2022年には坪あたり331.6万円、2023年は坪あたり349.4万円となりました。
とはいえ、2023年の東京23区の新築分譲マンション価格相場(坪あたり570.8万円)に比べれば、中古マンション価格は上昇しているものの、まだ“値ごろ感”はあるといえます。
また、中古マンションの新規登録数は2020~2022年の80,000戸台から、2023年は98,000戸に増えています。今後も中古市場が拡大傾向にあることを受けて、登録数の増加は続くと考えられます。
中古マンション市場の拡大(成約件数の増加)理由の大きな要因として「新築分譲マンションの供給が少ない」ということがあります。東京23区の新築分譲マンションの供給数は2013年時点では年間28,340戸ありましたが、2023年は11,909戸と、10年間で半減しています。価格高騰に加えて、供給そのものが減っているため、23区で新築分譲マンションを購入することが難しくなっているというのが現実です。
不動産経済研究所によれば、2024年上期(1~6月)の新築分譲マンションの供給実績は、首都圏で9,066戸(対前年比-13.7%)、東京23区は3,319戸(対前年比-32.3%)と大幅に減少しました。このような状況は今後も続き、当面、新築分譲マンション供給は抑制された状況が続くと考えられます。
現在、中古マンション成約時の平均築年は20~22年であるので、取引の中心は「2000年前後に供給された物件」ということになります。2000年前後といえば、首都圏で新築マンションの供給が非常に多かった時期で、2000~2004年の5年間で東京23区だけでも約174,000戸が供給されています。これが今後の中古マンション市場に投入されていく物件のボリュームゾーンになると予想されていますので、ストックとしては非常に潤沢であるということになり、その動きが注目されます。
全体的に新築分譲マンションの供給が減少している都心部において、中古マンションは、実需目的だけでなく、賃貸化を見込んだ投資目的にも対応する商品でもあります。賃貸市場に投入する際にはイニシャルコストが抑えられ、賃貸市場の活性化を促進しやすいという点も含めて、今後も中古マンションの動向には注目すべきです。
※レインズ:公益財団法人東日本不動産流通機構が運営するデータライブラリー
株式会社 工業市場研究所 川名 透