三井不動産リアルティ REALTY news Vol.113 2024 9月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

金利政策や投資環境を反映するREIT

 2024年上半期のREITの投資口価格(株価)の動きを端的に言えば、昨年より一層厳しさが増したと言えるでしょう。バブル期以来34年ぶりにTOPIXが史上最高値を更新する等株式相場が好調に推移したのに対し、東証REIT指数は2024年6月末に昨年末比-4.6%の下落と、株式相場との差が拡大し、出遅れ感がより一層際立った期間となりました。

 投資口価格の停滞には様々な要因が考えられます。日銀の利上げに対する懸念や、新NISAの積立投資枠からREIT等を含む毎月分配型の投資信託が除外されたこと、また円安進行を背景に海外投資家の資金が好調な株式相場へ流れたこと等、REIT市場にとっては不利益な外部環境が重なりました。

 こうしてREITの投資口価格は割安な状態が続いていますが、一方で不動産の賃貸市況は回復基調にあります。不動産の用途によっては回復に強弱が見られますが、ホテルの動きが最も活発化しています。ホテル銘柄はコロナ禍の行動制限によって固定賃料が引き下げられ大きく減配しましたが、その反動もあり、2023年5月に新型コロナが5類に移行すると、国内の観光需要が戻り、円安も追い風となってインバウンド需要が急増したことによって、ホテルの売上が急回復しました。変動賃料の占める割合が多い賃料形態であることも奏功し、ホテル銘柄は業績回復から投資口価格が上昇、さらに増資によってホテルを取得するという外部成長の好循環に入りました。

 オフィスビルも、コロナ禍でリモートワークのスタイルが浸透したことから、需要が減退して賃貸市況が低迷し、オフィス銘柄は保有物件を売却して売却益を捻出することで業績維持を図る戦略へ転換しました。コロナ禍収束後には、社員の出社回帰や好調な業績を背景に拡張移転の動きもあり、賃貸市況が回復しています。これによってオフィス銘柄は売却益に頼ることなく賃貸収益で増配を狙う意識が高まっています。

 住宅についても、コロナ禍で郊外や地方へ動いた人の流れが、再び都心へと向かい、都心の分譲マンションの価格高騰等の影響もあり、都心の賃貸市場は活況を呈しています。国内の住宅価格が高騰するなか、REITが米国の住宅を取得する等、海外進出の事例も見られます。

 その一方で、物流施設銘柄は、保有物件の稼働率は高い状況が続いていますが、新築物件の供給過剰感から賃貸市況の悪化を懸念して投資口価格が弱含み、これによって増資が出来ず外部成長が停滞しています。こうした状況下で、2024年8月には三井不動産と伊藤忠グループのREITが合併することを発表しました。こうした動きが起爆剤となり、他の物流施設銘柄の再編が加速する可能性も考えられます。

 以上のように全体的に不動産市況が回復基調にあることから、REIT本来の賃貸収益ベースの業績拡大が期待出来そうです。日銀の金融政策の行方を睨み、引き続き金利上昇リスクを抱える点は懸念材料ですが、インフレによる賃料上昇への波及効果や、米国の利下げも秒読みと見られるところから、海外投資家の資金がREITへ向かう可能性も考えられ、2024年後半には投資口価格の上昇に繋がることが期待されます。

アイビー総研 藤浪 容子

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TOPICS 2

新築マンションの価格高騰が波及する中古マンションマーケット

 レインズ※によると2023年の東京23区の中古マンション成約件数は16,154件。2016年に15,000戸の大台に乗り、その後も年15,000~16,500件の推移が続いています。また、年末在庫も2016年以降22,000件台後半を上限とした動きが続いていますので、市場としては「やや在庫が多いものの、一定の需要が見込める安定市場」となっています。

 一方、成約単価は上昇が続いており2004年の坪あたり148.9万円が2014年には坪あたり205.7万円に上昇、2022年には坪あたり331.6万円、2023年は坪あたり349.4万円となりました。

 とはいえ、2023年の東京23区の新築分譲マンション価格相場(坪あたり570.8万円)に比べれば、中古マンション価格は上昇しているものの、まだ“値ごろ感”はあるといえます。

 また、中古マンションの新規登録数は2020~2022年の80,000戸台から、2023年は98,000戸に増えています。今後も中古市場が拡大傾向にあることを受けて、登録数の増加は続くと考えられます。

 中古マンション市場の拡大(成約件数の増加)理由の大きな要因として「新築分譲マンションの供給が少ない」ということがあります。東京23区の新築分譲マンションの供給数は2013年時点では年間28,340戸ありましたが、2023年は11,909戸と、10年間で半減しています。価格高騰に加えて、供給そのものが減っているため、23区で新築分譲マンションを購入することが難しくなっているというのが現実です。

 不動産経済研究所によれば、2024年上期(1~6月)の新築分譲マンションの供給実績は、首都圏で9,066戸(対前年比-13.7%)、東京23区は3,319戸(対前年比-32.3%)と大幅に減少しました。このような状況は今後も続き、当面、新築分譲マンション供給は抑制された状況が続くと考えられます。

 現在、中古マンション成約時の平均築年は20~22年であるので、取引の中心は「2000年前後に供給された物件」ということになります。2000年前後といえば、首都圏で新築マンションの供給が非常に多かった時期で、2000~2004年の5年間で東京23区だけでも約174,000戸が供給されています。これが今後の中古マンション市場に投入されていく物件のボリュームゾーンになると予想されていますので、ストックとしては非常に潤沢であるということになり、その動きが注目されます。

 全体的に新築分譲マンションの供給が減少している都心部において、中古マンションは、実需目的だけでなく、賃貸化を見込んだ投資目的にも対応する商品でもあります。賃貸市場に投入する際にはイニシャルコストが抑えられ、賃貸市場の活性化を促進しやすいという点も含めて、今後も中古マンションの動向には注目すべきです。

※レインズ:公益財団法人東日本不動産流通機構が運営するデータライブラリー

株式会社 工業市場研究所 川名 透

東京23区 中古マンションマーケット推移
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TOPICS 3

多様化が需要を拡大するインダストリアルソリューション

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