三井不動産リアルティ REALTY news Vol.110 2024 6月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

進む商業地の住宅地化、商業店舗の撤退の背景と土地活用の可能性

 2024年1月1日時点の地価公示※では、商業地の地価が3年連続で上昇し、上昇率も拡大しました。中でも政令指定都市の地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)においては、商業地の地価は11年連続で上昇しています。

 商業地の地価は全国で上昇し続けており、一見すると商業地のポテンシャルが高まっているような気がしますが、その上昇要因を細かく見ると、決して従来のようなビジネス用途での需要が強まっているわけではありません

 東京の浅草地区や大阪の道頓堀地区のように観光地化している商業地では、インバウンド需要の回復を受けて店舗や飲食店の賃貸需要が強まり、地価が上昇しているエリアもあります。が、その一方で、観光地ではない商業地では、店舗の賃貸需要が強まるどころか、むしろ弱まっているエリアも多くなっています。

 店舗業績に関しては、全国の県庁所在地における百貨店の撤退や、イトーヨーカドーやパルコなどの不振に見られるように、衣料品を主体に販売する従来型の物販店舗が苦戦を強いられています。その理由は、ビジネス環境の2つの変化があるためと推察されます。

 1つ目は、インターネット通販の台頭が挙げられます。とくに、衣料品に関しては、インターネットで購入する人が増えてきつつあり、一般的に、衣料品のインターネット通販は返品が可能で、とりあえず何着か購入してサイズが合わなかったら返品するということができます。

 そのため、わざわざ百貨店に足を運ぶ必要性も低下し、そのことによって、百貨店から足が遠のく人が増えてきていることが考えられます。

 2つ目は、アウトレットモールの台頭です。アウトレットとは、在庫の大量仕入れや在庫吐き出しなどの手法を駆使して安売りする小売りの業態です。

 百貨店は基本的に定価売りですが、消費者にとってこのアウトレットは、複数購入などの際には価格面で魅力的で、郊外に立地していても盛況となっており、百貨店の顧客を奪い取っている現象も見受けられます。

 百貨店や大型商業店舗の撤退が相次いでいる中心市街地では、商業用途のポテンシャルの低下をカバーするかのように、その跡地にマンションが建つケースが生じています。中心市街地は、交通インフラを含め、利便性の高い場所ではあるため、元々は住宅地ニーズに対しても高いポテンシャルを持っており、商業地ニーズに代わっての住宅地ニーズが地価を押し上げる要因となっています。

 また、全国の政令指定都市や県庁所在地などでは、モビリティに不安を感じている高齢者などが、郊外などから中心市街地に回帰してくる例が見られ、この動きは政府が推進するコンパクトシティ構想に合致しているという見方もできます。

 このような土地に対するニーズの変化が顕著になりつつある状況を踏まえると、これからの商業地は従来の用途にとらわれずに柔軟な活用方法を考える必要が出てきます。

 住宅地化している中心市街地では人口回復に伴い、食品スーパーや高齢者向けの医療施設の需要が強くなるため、例えば、食品スーパーと医療モールからなる建物のニーズが増加するなど、複合的な利用が選択肢として考えられます。

 郊外型の商業施設であれば、アウトレットモールの運営ができる事業者や、今後も拡大するインターネット通販に必要とされる物流施設の事業者がプレーヤーとして期待できます。

 このように、活用方法にバリエーションを持つことで、商業地はポテンシャルを高められるという可能性に着目していただければと思います。

※国土交通省土地鑑定委員会が公示。「令和6年地価公示」=1月1日時点における標準地の単位面積当たりの正常な価格

株式会社 グロープロフィット
代表取締役 竹内 英二

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TOPICS 2

コロナ禍による低迷期を脱し、復活途上にあるオフィスマーケット

 三鬼商事株式会社発表のオフィスマーケットによると、2018年11月以降1.5~2.0%での推移を続けていた東京都心部のオフィス平均空室率は、2020年4月に新型コロナに対する緊急事態宣言が発令されると急激に上がり始め、2021年6月には6%を超えるまでに悪化しました。

 空室率6%台で推移した期間は2021年6月~2023年12月まで。2023年5月の実質的なコロナ禍終息宣言といえる「5類移行」後も数カ月は高い状態にありましたが、2023年6月の6.48%をピークに下落(好調)に転じています。

 2024年4月の東京都心5区の平均空室率は5.38%、前年同月は6.11%で、空室はこの1年で54,000坪強減りました。区別では、千代田区3.07%(前年同月3.97%)、中央区6.10%(同6.71%)、港区7.53%(同8.48%)、新宿区4.93%(同5.51%)、渋谷区4.33%(同4.37%)となり、5区全てで改善が見られています。また、空室率が上がると下落する平均坪賃料も2023年11月を底に(19,726円)、19,800円台に戻しています。

 5類移行後1年がかりの回復期を経て、コロナ禍による低迷期はようやく終焉を迎えたといえそうです。

 とはいえ、2024年4月の東京都心5区の平均坪賃料は19,825円。千代田区は21,646円、中央区は17,945円、港区は19,400円、新宿区は18,068円、渋谷区は23,075円であり、コロナ禍前の水準※に戻すにはまだ相当な時間を要すると考えます。

 そこで気になるのは新築物件の動向です。2024年4月の東京都心5区の新築物件数は23棟、空室率は22.64%、平均坪賃料は27,808円となっています。

 賃料水準は2024年に入り軟調で、ここ数年続いた大規模オフィスの供給増加による競争激化(供給過多)と、高単価化に対する需要の減退が感じられます。また2025年は竣工するオフィスの多い年となるので、各開発会社がどこまで頑張るかについては、マーケットの水準維持のためにも、注視していく必要があるでしょう。

 コロナ禍が終焉を迎え、インバウンド需要などが大きな伸びを見せている現在、様々な市場が回復基調となっています。経済面では大企業の業績も良く、設備投資額も上昇しています。

 オフィスにおいてもコロナ禍に、リモートを含めた新しい働き方の実践が求められ、柔軟なワークスタイルに順応するオフィスの需要が高まるなど、全体的にオフィスに投資できる環境が整ったといえます。

 今後は従来のオフィス営業で重視された「アクセスの良さ、ビル規模/広さ、設備、賃料」などのベーシックな条件に加え、「働きやすさ」を実現するためにワーカーの求める“設備”や“システム”を導入したオフィスや、SDGsへの取組みが重視される中で、十分な数値的成果を発揮し得るオフィスへのニーズがより高まる時代になっていくのではないでしょうか。

※2020年4月の平均坪賃料は、都心5区:22,820円、千代田区:24,646円、中央区:20,258円、港区:23,364円、新宿区:20,257円、渋谷区:25,531円

株式会社 工業市場研究所 川名 透

都心5区 空室率・平均賃料推移
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TOPICS 3

再開発によって上昇するマーケットのポテンシャル

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