物流業界では、主にドライバー不足による2024年問題が話題となっています。
この不足問題を早急には解消し得ない今後の物流業界は、従来のようにスピードとコストの追求を第一義に据えた競争ではなく、混載や様々な融通施策等を駆使して、この事態を補い合う協働の方向へと移行していかざるを得ないことが予想されます。
そのために多彩な方策が展開され始めており、例えば三井不動産ではIHIとの協業で3次元ピッキングシステムを導入したEC特化型物流センターを、船橋市に構築しました。
このEC特化型物流センターは、スムーズなITの導入で商品の仕分けや集荷を高速化することにより、出荷までの待機時間を削減し、ドライバーや倉庫で働く人員の負担を減らすことができる省人化倉庫です。今後さらに需要が増大すると予想されるEC物流への、有効施策として注目されています。
また、新たなカテゴリーの荷主に向けたマーケットの開拓も進められています。三菱地所では今後日本国内において需要の拡大が見込まれるものの発火のリスクにも対処しなければならない電気自動車向け電池や、主要産業として巻き返しを図る半導体分野で製造時に駆使する多種のガスを、高圧下でコントロールしながら格納できる倉庫の開発を計画しています。
このように近年の倉庫は、単なるスペースの確保に留まらず、建物側に様々に特化した設備や機能を備え、競合との差異を明確化するようになってきましたが、その背景には、2024年問題だけでなく、物流倉庫の不動産市場推移も影響しています。
国内のインターネット通販は依然、活発な状態が続き、物流適地に対する土地の需要も旺盛な状態が続いている状況です。この物流適地とは、高速道路インターチェンジや幹線道路等へのアクセスが良好で、LMT(大型マルチテナント型物流施設)などの立地可能な画地規模の大きな土地です。
強い需要は工業地の地価公示に反映されており、2023年の地価公示※1において東京圏では10年連続で上昇している状態です。新型コロナウイルスの影響で住宅地や商業地の地価が下落した2021年でも、工業地に関しては影響をほとんど受けず、上昇が続いていました。
底堅い需要に対しては、大手ディベロッパーを中心に倉庫の開発競争が繰り広げられてきましたが、その結果懸念されてくるのが、需給バランスです。2023年の首都圏のLMTの空室率※2は8.2~8.9%で推移し、2022年(4.4~5.6%)と比較すると上昇傾向にあります。倉庫の開発競争が活発に行われてきた結果、供給面積と空室率が増え、供給過剰の兆候が見え始めてきた、ということになります。
今後は、需要の安定確保のために、利用者に選ばれる倉庫であることが重要となってきます。
今までは利用者の中心は荷主でしたが、2024年問題を機に、ドライバーを利用者として勘案する必要性が高まりつつあります。そして、この利用者に選ばれる倉庫とは、大消費地に近く、高速道路インターチェンジや幹線道路等へのアクセスが良好である立地が一つの条件になり、そして次に、ドライバーの負担を軽減する倉庫の機能や設備が条件になります。
コストやキャパシティ以外のこうした点が、物流業者に対して多大な影響を及ぼすように変わっていくことが予想されます。
※1:国土交通省「令和5年地価公示」
(https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_fr4_000001_00135.html)
※2:CBRE「賃貸倉庫・物流施設の市場動向|ロジスティクスマーケットビュー2023年」
(https://www.cbre-propertysearch.jp/article/industrial_marketview/)
株式会社 グロープロフィット
代表取締役 竹内 英二