三井不動産リアルティ REALTY news Vol.105 2024 1月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

モノ消費の先へ、インバウンド需要を拡大するエモ消費

 インバウンドの消費の伸びは、モノ消費からコト消費、さらにはエモ消費へと移行しており、インバウンドのニーズに対する奥行きを深めることでより一層の消費を促す取り組みが広がっています。

 エモは「エモーショナル」の略であり、エモ消費とは、インバウンド旅行者や外部からの観光客に感情や感銘を与える体験や商品による消費を促進する取り組みです。

 磐梯朝日国立公園内の山形県朝日町にある宿泊施設「Asahi自然観」。事業主体は、この朝日町であり、代表者は朝日町の副町長です。鉄道も無い人口約6千人の過疎の町にある施設ですが、ここには世界に類のない、空気の恩恵に感謝する「空気神社」があります。ブナ林の中に5メートル四方のステンレス板を鏡に見立てて置き、四季折々の風景をこの鏡に映しこむことによってこの地の空気を表現しているというモニュメントですが、ここで撮られた写真がインスタ映えすることに台湾のブロガーが注目、コロナ禍が落ち着きつつある中、台湾からの旅行者が数多く訪れるようになりました。

 例年4月には、冬期間雪の中で保存された「雪りんご掘り出し体験会」が宿泊施設の敷地内で開催されますが、このイベントもインバウンド旅行客に大人気の企画です。秋の収穫後、雪中に保存され甘みの増したりんごの生ジュースは、賞味期限10秒とされ、その刹那感が貴重なエモーションとして成立しています。台湾とともに今後訪日が期待される、雪には縁の薄いマレーシアやシンガポールなどの観光客に対しても、この雪とりんごを活用したイベントは、キラーコンテンツとなります。

 このように単なる観光や買い物の体験(モノ・コト)を超えた感動や体験を提供することは、訪問者のロイヤリティーを高め地域経済の活性化にも貢献します。地域の魅力を十分に引き出すためには関係者の協力が不可欠で、雪りんご掘り出し体験会も、りんご農家など地域関係者の協力で成り立っています。

 エモ消費に関しては、インバウンド旅行者の感情や共感を大切にするため、多言語対応やカスタマイズ性の高いサービスの提供とともに、現地の文化や風習へのリスペクトなども求められます。Asahi自然観では台湾出身スタッフが、その対応に大活躍SNSやインターネットを活用した情報発信や宣伝活動にも積極的に取り組んでいます。

 訪問客が情動的な経験を思い出として発信することで、それは「物語」としてこの地や商品に対しての付加価値となり、再訪や口コミの拡大を生み出すことが期待されます。

 筆者は講演家として日本全国を訪れています。行ってみてわかるのですが、ローカルなところほど成長の可能性を秘しています。古くからの地域のお祭りや伝統行事、地酒や郷土料理といった地域ならではの食文化など、将来の開花を予感させるものに溢れています。

 そして、その地域の楽しさを体験という鏡として見せてくれるのが、外国人やその地域以外から訪れた人たちで、そうして生み出されたたくさんの鏡が、また次の活動やアイディアの発展に繋がっていきます。

 地方の人口予測のダウントレンドを憂うよりも、それぞれの地を訪れた人と一緒に地域を盛り上げ、SNSなどを柔軟に駆使して情報発信していく工夫が求められています。

※Asahi自然観 HPより

一般社団法人 ライフプランニング協会代表理事
菅井 敏之

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TOPICS 2

地域特性が顕在化してきた直近1年のオフィスマーケット

 2023年11月時点の各ビジネスエリア平均空室率、東京6.03%(対前年同月比0.35pt下落)、大阪4.26%(同0.78pt下落)、名古屋5.49%(同0.07pt下落)、札幌3.00%(同0.88pt上昇)、仙台6.49%(同1.87pt上昇)、横浜6.61%(同1.43pt上昇)、福岡5.52%(同1.06pt上昇)となりますが、新型コロナウイルス感染症が第5類に移行したことで、この1年の空室率の変動は全体的には小幅な動きとなっています。

 平均賃料については、東京で@19,726円/坪(同-355円)と大きく下がり、札幌は@10,129円/坪(同+382円)と大きく上がりました。2022年11月を100とした場合のエリア別平均賃料の推移は以下のとおりです。

 東京エリアの賃料低下については、2019年と2023年を比較しても、稼働面積が大きく増えていないことが低下要因と考えられます。

 東京エリアの貸室面積はコロナ禍前の2019年11月には7,621千坪、空室面積は119千坪で稼働面積は差し引き7,502千坪でした。コロナ収束後の2023年11月は貸室面積8,020千坪、空室面積483千坪、稼働面積7,536千坪であり、2019年11月からの4年間で貸室面積は399千坪増えたにもかかわらず、稼働面積は34千坪(貸室面積増加分の8.5%)しか増えていないという状況で、空室面積を減らす手段として賃料を下げていく状況が続いているようです。

 一方、賃料上昇がみられる札幌エリアの状況を見ると、貸室面積は2019年11月で512千坪、空室面積11千坪、稼働面積501千坪でした。2023年11月は貸室面積521千坪、空室面積16千坪、稼働面積505千坪と、4年間での貸室面積は9千坪増、稼働面積は4千坪(同44.4%)増で、新規供給分も順調に稼働している状況がわかります。

 新規竣工ビルが多い東京エリアの特性を考えれば、4年間で34千坪吸収できるというのは、そのまま需要の強さを示すものではありますが、やはり、近年の「東京ビジネス地区の新築ビル供給の多さ」による急激な貸室面積の増加は、厳しい状況を呼んでいるものと考えられます。

 一般的には、大規模新築ビルの賃料水準は高くなる傾向にはありますが、市場全体で“早期に空室を埋めるための賃料引き下げ”が続くとすれば、新築ビルの賃料にも影響する可能性が高くなるでしょう。

 かつて、東京エリアの大規模新築ビルはその市場優位性から、「竣工時満稼働が当たり前」でしたが、近年は竣工時に空室を残す物件も多い様子です。大規模新築ビルの主要な借り手である大手企業等での、コロナ禍の経験を踏まえたオフィスの分散化が進んでいることが要因となっていることも考えられます。

 東京エリアに比べれば市場規模に差はあるものの、福岡・札幌エリアなどは経済状況が好調です。オフィスの安定稼働と賃料を上げやすい環境のマーケットへの今後の投資が進むことで、オフィスマーケット全体の活性化がもたらされることに期待したいところです。

※空室率、貸室・空室面積、平均賃料は、三鬼商事株式会社のオフィスマーケットデータ引用

株式会社 工業市場研究所 川名 透

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TOPICS 3

不動産市場に2024年問題はどんな影響を与えるのか?

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