三井不動産リアルティ REALTY news Vol.103 2023 11月号

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今月のトピックス TOPICS
TOPICS 1

インバウンド回復で国内消費動向に吹く順風と逆風

 2023年7-9月期の訪日外国人旅行消費額は1兆3,904億円(2019年同期比17.7%増)、国籍・地域別では中国が2,827億円と最も大きく、次いで台湾2,046億円、韓国1.955億円、米国1,439億円の順でした。

 訪日外国人1人当たり旅行支出は21万1千円と推計。国籍別に見ると、フランス(35万8千円)、スペイン(35万円)、イタリア(34万2千円)の順で高く、費目別では、宿泊費・飲食費はイタリア、交通費はスペイン、娯楽等サービス費はオーストラリア、買い物代は中国が最も高いとのことでした。※

 東京・銀座のイタリアブランドの路面店によると、中国人は本国の同じブランド店より安いとの理由で購入していくケースが多いようです。円安影響に加え、日本の方が利益幅を抑えているからではないかと分析していました。

 富裕層をターゲットとした東京の有名飲食店も盛況で、高級寿司店のカウンターのほとんどを外国人が占めるなど、「高級飲食店のニセコ化」といった動きも見られます。しかし、円安影響を加味してのインバウンド客向けのニーズが価格を押し上げて、国内客が離れかねないというジレンマを抱えることになります。

 外国人の嗜好に合わせた価格設定や品揃えにシフトした結果、国内富裕層の常連客が離れ、常連客対応を誇りに働いていた職人・スタッフが退職するといった事例も散見します。

 日本を旅行する欧米からの観光客の中には、レンタカーを借りて、自分の運転であちこちを見て回るという人が、思いのほか多くいます。日本は鉄道網の充実度が高いことは世界的に知られていますが、実は高速道路をはじめとした道路交通インフラもかなりのレベルにあります。東日本大震災で被害を受けた三陸沿岸部では、「復興道路」と位置付けられる宮城県仙台市から青森県八戸市に至る三陸沿岸道路が、2021年に全線開通し、その影響もあり、仙台国際空港の国際線の搭乗率は今、すこぶる順調だそうです。

 しかしながら、レンタカー利用者が増加する一方、レンタカーの数が需要に追い付かないという事態も発生しています。特にレンタカー利用の多い北海道と沖縄では、宿泊施設より先にレンタカーを確保するのが賢い旅の鉄則となりました。

 何もないような場所でゆったりと、花見や四季折々の自然の風景や地域独自のお祭りを楽しみたい。美味しい郷土料理や地酒も楽しみたい。インバウンドの旅行客が日本に求めるものは本当に多種多様です。英語のガイドブック「ロンリープラネット」や、「トリップアドバイザー」などの旅行の口コミサイトを見てみると、日本人は全くと言っていいほど注目していなくても、海外の人がたくさん訪れるようなスポットが紹介されています。

 オーバーツーリズム、旅行客が日本の習慣と異なる行動をとることによる文化摩擦、治安の悪化、人手不足、地域格差……。インバウンド拡大による課題は存在します。

 一方でインバウンドは、地域を活性化し、小売業や地場の商品開発を促進させ、雇用増加、外貨獲得に寄与し、日本の伝統文化を保護し、世界に広めます。

 地方の宿泊施設が足りないという課題も、滋賀銀行など25の地域金融機関がオリエントコーポレーションと組んで、民泊転用を見込んだ空き家解消支援に乗り出すなど、解決に向けた動きが出てきました。

 今はひなびたエリアであっても、SNSなどでの発信次第で、海外の人がそのエリアの魅力を見出だしてくれます。きっとこれからも、新たに日の目を見る観光地は日本中に増えていき、ホテル、民泊、不動産、飲食、物販、交通。インバウンドによるビジネスチャンスが、地方を含めた日本中でこれまで以上に広がることを期待しています。

※ 観光庁2023年10月18日付プレスリリース

一般社団法人 ライフプランニング協会 代表理事
菅井敏之

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TOPICS 2

ホテル事業参入者に期待される新しい試み

 日本経済新聞に「ホテル投資、不動産各社が拡大」との記事が掲載され※、それはコロナ禍を脱し、急増した外国人観光客のホテル需要を背景に、不動産各社がホテル事業に力を入れているといった内容でした。しかし実は、こうした取り組みは、既にもっと早い時点から進められています。

 周知のように、大手不動産会社や、傘下に不動産会社を有する電鉄系企業は、古くからホテル事業を展開しています。総合不動産系では三井不動産系列の三井ガーデンホテル、三菱地所系列のロイヤルパークホテル、住友不動産系列のホテル ヴィラフォンテーヌなどがあり、電鉄系は東急、阪急阪神、近鉄、京王、相鉄、西鉄等がそれぞれホテルチェーンを有しています。

 記事によれば、ホテル投資拡大の要因として「住宅需要の低迷」が挙げられていますが、住宅需要が旺盛な時期でも、ホテル事業に参入する不動産会社は多くありました。もともと不動産会社にとってのホテル事業は、好調な分譲・賃貸住宅の開発や運営に次いで、事業の柱になるカテゴリーと認識されていましたが、コロナ禍の影響で先送りにされていたプロジェクトが再び始動した結果であり、住宅需要の低迷は二次的な要因と考えられます。

 また、不動産会社が近年(新型コロナの流行前も含む)参入し、開発してきたホテルには、従来のホテルの概念より一歩踏み込んだ、多くの特徴・アイデアが感じられるものがあります。

 著名な例としては、コスモスイニシアの「APARTMENT HOTEL MIMARU=中長期滞在に適した都市型アパートメントホテルブランド」や、リノベーションなども手掛けるリビタの「THE SHARE HOTELS=〈地域との共生〉をテーマに、地域に開いた場づくりを目指すホテルブランド」等がありますが、共通しているコンセプトは“滞在する地域を楽しむための空間の提供”です。よりカジュアルに、生活するように、滞在するホテルという発想は、住宅開発を通していろいろなライフスタイルをプロデュースしてきた会社だからこそ取り組めたのではないかと思えます。

 もちろん、NTT都市開発のように、海外の高級ホテルブランドを誘致し、新規開発と効率的なマーケティングにより、三ツ星ホテルを中心に全国的なブランドを構築するのもひとつの企業戦略で、それによって多様なハイブランドホテルが日本国内に登場しています。

 こうして、様々なニーズに的確にマッチするホテルが各地に展開しつつあります。これからはインバウンド需要への対応だけでなく、来客に利用・滞在目的をプロデュースできる力を持ったホテルが求められていくようにもなるでしょう。

 ホテル業界の目下の課題は、インバウンド需要の急激な回復により、宿泊者・利用者が増えた結果、スタッフの不足が問題となっている点です。24時間365日不断のサービスを必要とされる業界でもあるので、この課題に対応する施策を構築していることが、事業参入するひとつの条件となりつつあります。

※ 2023年10月16日:朝刊

株式会社 工業市場研究所 川名 透

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好不調のカテゴリーの入れ替わりが顕著なマーケット

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