三井不動産リアルティ REALTY news Vol.98 2023 6月号

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REALTY PRESS
今月のトピックス TOPICS
1 アメリカにおける「リスティング」の過去と現在
2 少子高齢化によるファミリー層の減少が
住宅市場に与える影響
3 船橋駅周辺と臨海エリア、両輪で進む大規模再開発
TOPICS 1

アメリカにおける「リスティング」の過去と現在

 売却受託した物件を売り出す事を「リスティング」と呼びますが、この「リスト」はジロー(Zillow)やMLS(Multiple Listing Service)他のコンピュータの中にある「仮想的なリスト」です。今は物件を目立たせる為にティックトックやYouTube、インスタグラム等のSNSと連動させる例も増えています。

 アメリカの不動産仲介業の「あけぼのの時代」の話にリスティングの由来が見えます。昔、不動産仲介業者たちは定期的に集まり情報を交換、「自分が受託した物件の買い手を見つけてくれたら手数料を払う」としていました。これが現在の「仲介手数料は売主のみが負担し、買主側業者への手数料は売主側業者から払う」という慣行に定着したようです。

 会合の際には「新規の売り出し物件のリスト」も作られていて、これがそのまま今も「リスティング」という言葉として使われているのでしょう。

 現在、アメリカの不動産仲介業者への規制や監督を実質的に担っているのは「全米リアルター協会(NAR)」です。同協会が行政上の組織ではなく民間の業界団体だという点は特徴的です。民間の組織なのに絶大な権限を持つに至った出発点は、前述の情報交換会にありそうです。各業者はこの会に参加できなくてはビジネスになりません。問題を起こした業者に出席を許すかどうかは情報交換会自身=民間が決めていた、すなわち自主規制だったのです。

 なぜ現代でも全米リアルター協会の権威が大きいのか、その理由をヒアリングした事があります。仲介業者は売買の際の各所で、同協会の会員であると書き込む事が求められ、会員であるなら難なく進む手続きでも、会員でない場合は仕事にならないと聞きました。会員資格が取り消されると、仲介業者にとっては死活問題なのです。

 さて直近のリスティングの様子を見てみましょう。新型コロナの際に金利が極端に引き下げられ、新規の購入時だけではなく既存の住宅ローンの借り替えも盛んになりました。本来、もう売却に回るべき物件だとしても「3%の住宅ローン」を借りている人にとって、その家を売って新しい家を「7%弱の住宅ローン」で買う事はどうにも気が進みません。

 2023年4月の新規のリスティング数は前年比で21%減少、2019年比で31%減少です。供給が少ない為に購入者間では激しい競争が起きています。

 この競争に疲れた購入希望者は、郊外のビルダーの物件に向かっています。ビルダーの物件は希望すれば必ず買えますし、その後のいろいろな予定も立てやすいわけです。なおアメリカの「ビルダー」とは注文住宅の会社ではなく、日本での建売り業者に近い形態です。販売方法は着工前の図面売り、建築工事中物件の売り、竣工済み物件の売りが中心です。

ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

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TOPICS 2

少子高齢化によるファミリー層の減少が住宅市場に与える影響

 2023年4月に国立社会保障・人口問題研究所が、2020年国勢調査の確定数をベースに新たな日本の将来推計人口を発表し、大きな話題となりました。要点としては、2020年には1億2,615万人であった人口が50年後の2070年には8,700万人になり、約3割減少するというもの。

 年齢別で見ると18歳未満人口は概ね半減、18~34歳人口及び35~59歳人口は約4割減り、60歳以上人口も約1割減となります。報道などでは国力の低下を懸念する解説が目立ちましたが、少子高齢化が不動産市場にどのような影響をもたらすかについて「日本の世帯数の将来推計(全国・2018年推計)」を元に改めて考えてみました。

 同資料に沿って、2020年から2040年迄の間に、一般世帯数(全国・年齢別4分類)がどのように推移するかを見ると、単独世帯は1,934万世帯→1,994万世帯(+3.1%)、夫婦のみ世帯は1,110万世帯→1,071万世帯(-3.5%)、夫婦と子世帯1,413万世帯→1,182万世帯(-16.3%)、ひとり親と子世帯502万世帯→492万世帯(-1.9%)であり、少子化の影響の大きさが顕著に現れています。

 首都圏の推移(1都3県合計、2020年→2040年)を見ると、単独世帯は665万世帯→701万世帯(+5.4%)、夫婦のみ世帯は324万世帯→334万世帯(+3%)、夫婦と子世帯447万世帯→389万世帯(-12.9%)、ひとり親と子世帯143万世帯→151万世帯(+5.5%)。より高いステータスや収入を求めての社会的流動による若年層の流入が多い首都圏では、夫婦と子世帯のみが減少する予測となっています。

 それを踏まえると、首都圏における住宅商品については、単身者と二人世帯(夫婦のみ、またはひとり親と子ひとり)をボリュームターゲットとしてイメージした商品にシフトせざるを得ません。既にいくつかのマンションデベロッパーはこの状況を認識し、主力商品の切り替えを進めているようですが、若年層では賃貸を志向する層も多く、これだけではマーケットのボリュームの維持は厳しいと考えられます。

 一方、高齢者世帯(首都圏・世帯主65歳以上の世帯)に着目すると、2020年の559万世帯から2040年は665万世帯と、こちらは約20%の増加推計です。保有資産も多く、ターゲットとしては有望で、分譲・賃貸にかかわらず「高齢者向けの商品の開発」が重要な戦略となってきます。

 従来、「高齢者向け住宅」といえば、居住そのものよりも“介護”との近接性を重点的に視野に入れた構築をする住宅(専有面積25㎡未満の住まい)が主流となっています。商品企画もそれに合わせてきたというのが実態でしたが、平均寿命も伸びつつある中で、日常生活の自立性をより促進していく政策もあり、「老後をアクティブに、安心して楽しく過ごすこと」を重視する層が増えると考えられます。そして、子や孫に資産を残す必要が少ない単身者や夫婦のみ世帯が増加している状況を踏まえれば、老後を楽しめるサービスや設備が調った日本版CCRC等※のサービス重視型賃貸住宅の需要が伸びると予測されます。今後このカテゴリーは、注目分野となっていくでしょう。

※CCRC=Continuing Care Retirement Community 高齢者が地域社会に溶け込み、地元住民や子ども・若者などの多世代と交流し共働する「オープン型」の居住スタイル。(出典:日本版CCRC構想有識者会議資料)

株式会社 工業市場研究所 川名 透

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TOPICS 3

船橋駅周辺と臨海エリア、両輪で進む大規模再開発

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