三井不動産リアルティ

Vol.95 2023 3月号

REALTY - news

いつもお世話になっております。三井不動産リアルティ REALTY-news事務局です。
日が長くなり、春の到来を感じるこの頃、いかがお過ごしでしょうか。
3月バテという言葉もあるそうで、
期末の慌ただしさや季節の変わり目に、体調を崩しがちです。
睡眠や食事など健康管理をしっかりと、万全な状態で乗り越えましょう。
それでは3月の「REALTY-news」をどうぞ。

投資・事業用不動産に関する情報誌「REALTY PRESS」を当社ウェブサイトにて公開中です。是非、ご覧ください。

REALTY PRESS

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今月のトピックス

Topics 1 超巨大不動産投資会社でもあるブラックストーンは
「オーラ」を維持できるか
Topics 2 首都圏LMTの2022年の年間マーケット概況
Topics 3 大量供給による需要減速と、コロナ禍からの挽回モードとの
2極化傾向が顕著なマーケット

Topics 1

超巨大不動産投資会社でもあるブラックストーンは
「オーラ」を維持できるか

 ビジネスを円滑に進める為には「信用」が必要で、「オーラ」を放っていると進む速度は格段に速くなります。ブラックストーンはオーラと共に破竹の勢いで拡大してきました。しかしこの数ヶ月、これに傷が付きかねない話が立て続けに起きています。

 最も大きく「はてな?」と思わされたのはBREIT(ブラックストーン・リアルエステート・インカム・トラスト=ビーリート)という個人富裕層向けの不動産投資ファンドで、大型の賃貸マンションや物流倉庫に投資しています。「大型不動産への投資の妙味」は、従前は大口の機関投資家等だけが享受できたのですが、BREITではこの投資機会を個人にも提供するとして人気を得、今やブラックストーンの稼ぎ頭です。

 BREITでは純資産等から計算した投資価格が設定され、一単位の額は大体数十万円と比較的高額です。上場リートと似た値動きを続け、これは両方とも同じような商業不動産へ投資しているのだから当然だろうと思われていました。しかし2022年の春以降、上場リートの株価が大きく値下がりしたにも拘らず、BREITの価格はほぼ横ばいのままでした。

 商業不動産価格の下落の反映がなぜか遅れていると考えた投資家は、換金の際の価格が高いうちに引き出そうとし、これが膨らみ2022年の暮れに償還が一部制限されてしまいました。

 「投資家が望んだタイミング通りでは資金化できない」という事態になったわけで、大変な騒ぎとなりました。これについてブラックストーンは「流動性が低い大型物件へ小口の個人投資家が投資するという商品の性格上、流動性はある程度は低くなる」としました。

 またBREITの価格が値下がりしていない事について、ブラックストーンは「上場リートは市場の需給で価格が決まるのに対して、BREITでは保有不動産のキャッシュフローによる評価をしておりそれに応じたものだ」としています。しかし両方の議論とも、ロジックはともかくどうも釈然としません。

 「個人向け」のはずのBREITにカリフォルニア大学基金が2023年1月に巨額の出資をしたのですが、出資条件が一般の個人の場合より大きく優遇されていました。ブラックストーンの説明では「この優遇で個人投資家がワリを食う事はない」ですし、投資スキームを見ると確かにそう見えます。しかし大口の投資家が条件的に「優遇された」事は明らかなのです。

 BPP(ブラックストーン・プロパティ・パートナーズ)という機関投資家等向けの商業不動産ファンドでも投資家からの償還請求が巨額に溜まっています。これも商品設計通りだとの事ですが、やはり釈然としません。

 2015年に巨額買収をした戸数11,200戸の賃貸住宅団地では、家賃の引き上げの可否を巡る裁判で敗訴となりました。投資としては致命的な話です。敗訴の原因を一点だけに絞れば「政治リスク」です。ブラックストーンの「政治力」は期待されていたほどではなかったのです。

 フィンランドで2016年に買収した際の一部の物件のCMBS・残債数百億円をデフォルトとしたことも直近で明らかになりました。フィンランドはロシアとの国境線が長く、不動産市場の悪化にはウクライナ問題の影響があったとされます。しかしデフォルトはデフォルトです。

 同社が現在募集中の企業買収向け超大型ファンドでは、資金の集まり方が以前ほど良くありません。「オーラが薄れたので出資は取りやめる」とする所が出る事も危惧されます。

ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

Topics 2

首都圏LMTの2022年の年間マーケット概況

 2022年は年間を通して、LMT(大型マルチテナント型物流施設)マーケットが大きく動きました

 2022Q4期(2022年10~12月)の首都圏全体のLMT空室率は平均5.6%。2022Q2期(4~6月)は平均4.4%、2022Q3期(7~9月)は平均5.2%と、Q2期からQ3期にかけ0.8ポイント上昇し、首都圏全体の空室率が5%を超えるのは、2018Q3期以来でした。

 エリア別で見ると、東京ベイエリア(坪賃料7,550~7,600円程度)で2022Q1期以降の空室率上昇が目立ちます。同期に見られた大量な新規供給が影響しており、それ以降、ゆっくりと改善してはいるものの、築1年未満の新規施設で空室のまま竣工する物件が増加したことで、Q3期まで空室率10%以上が続きました。当エリアで築1年以上の施設における空室率は1%前後であることと対比すると、新築物件の不振が表出した格好です。

 同様に、2021Q4期から2022Q1期で大きく空室率が上がったのが圏央道エリアです。こちらも2022Q1期における新規供給が多かったことが原因ですが、その後も契約は進んでいない様子で、空室率の高止まり状況が続いています。

 国道16号エリアも変動幅は小さいものの、2022Q1期以降の空室率は上がり基調であり、低い空室率が長く続いた首都圏マーケット全体に冷え込みが感じられる状況となりました。

 賃料相場は、首都圏全体で概ね坪@4,500円台の推移(2022Q4期@4,540円、対前年同期+70円)。エリア別では「東京ベイエリア」が坪@7,500円台(同@7,580円、+60円)、「外環道エリア」は坪@5,100~5,200円台(同@5,170円、-30円)、「国道16号エリア」は坪@4,500円台(同@4,530円、+60円)、「圏央道エリア」で坪@3,600円台(同@3,620円、+20円)となっており、急激な価格変動はありません

 状況的には、ここ数年、物流施設の量的不足が目立ったことで、新規参入組を含め多くのデベロッパーが物流施設の開発に乗り出しましたが、新規開業物件では立地や賃料の問題が顕在化し、十分な需要が獲得できなかった様子です。これは築1年以上の施設における空室率がどのエリアでも非常に低いことからも、新規への移行は少なかったと判断できます。

 今後は、すでに開業済かつ未契約のLMTで賃料の見直しがスタートし、立地的な要件(インターチェンジや最寄駅からのアクセス等が評価ポイント)を反映させた賃料での契約が進むことが予測されます。これまでの供給側優位から、契約者(入居者)側優位への市場変化が一旦進み、その後、需給バランスが安定化すると考えられます。

株式会社 工業市場研究所 川名 透

首都圏 大型マルチテナント型物流施設(LMT)空室率

Topics 3

大量供給による需要減速と、コロナ禍からの挽回モードとの
2極化傾向が顕著なマーケット

コロナ禍からの脱却局面で、インバウンドや需要の順調な回復によって好・不調のカテゴリーが入れ替わる現象が顕著になっています。

「REALTY-news」をお読みいただきまして、
誠にありがとうございます。

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