最近、様々なメディアから「2021年の首都圏新築マンションの平均価格は1戸あたり6,260万円で、バブル期(1990年)を超えた」との報道が続いています。
不動産経済研究所の発表によるものですが、もう少し細かく見ると、首都圏の市場の概ね4割強のシェアを占める東京23区の平均価格は8,293万円(最高記録は1991年の8,667万円)、坪単価は423.8万円となっています。平均価格は対前年比+7.5%となり、2019年以降、急激な上昇を継続してきました。昨今、東京23区内でマンション購入を検討する際には20坪で8,000万円以上、15坪でも6,000万円台の価格を視野に入れないといけない状況になっています。
2010年代前半は年間2万戸程度の供給であったのが、2018年以降1万戸程度に減ったことで、需要と供給のバランスが取れてきたとはいえます。しかし昨今のこうした高価格には購入を躊躇する人も当然多いと想定されますが、ここ数年、分譲マンションの売れ行きは好調です。
では、なぜ、このような価格にもかかわらず、売れ行きが良いのでしょうか?
その一つの回答が、購入者属性の変化にあると考えられます。いわゆるパワーカップルの台頭と称されるものです。
以前、DINKsという属性が注目されましたが、そのカテゴリー内にあるパワーカップルの定義としては、「夫婦とも大企業の正社員や士業等で世帯年収1,400万円以上」という収入レベルの高い世帯を指しています。
そうしたパワーカップルの購入マインドは、2人での生活に必要な広さが確保されていること、都心の通勤先へのアクセスに優れていること、生活利便性が担保されていることが要件であり、これまで重視されがちであった「地縁性」や「子育て環境」「広さ」についてはあまり気にしていないように思われます。
また低金利を背景に考えれば、夫の年収700万円、妻の年収500万円、合算1,200万円世帯と仮定した場合でも、年収の6倍まで借り入れができれば、都心の15坪7,200万円のマンションは十分購入できる価格帯となっています。
これまでの分譲マンションにおけるターゲットは、夫婦と子供1~2人を想定した「ファミリー」でしたが、現在の東京23区の分譲マンション市場では「子育てをしない、車も持たない、高収入DINKs」といった、住まいに関して潤沢な資金を投入できるユーザーの増加がマーケットを支えています。
株式会社 工業市場研究所 川名 透