先日、不動産経済研究所が発表した首都圏の平成30年上半期マンション市場によれば、供給戸数は15,504戸で、前年同期の14,730戸に比べ5.3%増加、平均価格は5,962万円(前年同期比+1.3%)、㎡単価は87.5万円(同+2.9%)、上半期としては戸当たり、㎡単価ともに6年連続の上昇で、ともに1991年平均(6,450万円、㎡単価101.9万円)以来の高値となりましたが、初月契約率は平均66.7%で前年同期比-0.6ポイントになっています。
地域別で見ると都区部が7,155戸(前年同期比+2.1%)・7,059万円(同-1.4%)・110.0万円/㎡(同+2.6%)・平均初月契約率70.3%、都下が1,635戸(同-24.1%)・5,246万円(同+3.2%)・74.4万円/㎡(同+4.3%)・平均初月契約率60.1%、神奈川県が3,008戸(同+6.2%)・5,665万円(同+13.7%)・79.2万円/㎡(同+13.6%)・平均初月契約率69.5%、埼玉県が1,676戸(同+17.0%)・4,286万円(同-1.5%)・61.2万円/㎡(同+0.3%)・平均初月契約率51.7%、千葉県が2,030戸(同+55.7%)・4,497万円(同+12.6%)・60.8万円/㎡(同+9.7%)・平均初月契約率67.5%という数値になっています。
上半期は都下を除き昨年よりも供給増となりましたが、それでも15,000戸台。下半期供給戸数は昨年21,168戸、一昨年21,318戸で、今年の下半期は消費増税を見据えた供給が増加すると考えられることから22,000戸程度の供給が見込め、通年では37,000戸台と考えられます。
一方、近年の大手デベの寡占状況を見ると、供給は都心部に近いエリアに偏る可能性が高く、供給数を稼げる郊外大規模の供給が減少して、都市部の再開発案件で大型のものが増える見込みとなり、価格が下がる気配はありません。「消費増税に伴う駆け込み需要」は多少見込めるものの、ユーザーの予算水準を考えれば、既に価格は“手の届かない”レベルで、消費増税も今のところ強い『追い風』にはなり得ないと考えられます。
全体に市場の活性化は、ユーザーの購買行動が向上しない限り、戸数としての伸びはないため、難しい状況が続くでしょう。活性化を求めるならば、年収700~800万円層が購入できる価格帯の商品をどれだけ出せるかが課題になりますが、現在の建築費の高騰などを考慮すれば当面は難しいことから、まだまだ市場活性には程遠く、分譲マンション志向の一次取得層は「買う(買える)ものがない」という状況が継続するようです。
株式会社 工業市場研究所 川名 透