下のグラフは東京都が発表している分譲住宅の着工戸数の推移(対象エリアは東京都内)をみたものです。
ここ数年、少子高齢化に伴う世帯数減少に加え、東京エリアの土地価格の上昇(オリンピックの開催は土地価格の上昇に大きく寄与)、建築費の上昇(各地の災害復興工事とオリンピック関連工事が材料費と人件費の上昇をもたらした)により、分譲マンション、分譲住宅の価格が上昇し、特に分譲マンションでは、販売価格の高額化が進み、都心部の物件では、一般庶民≒一次取得層の手が届かない相場となりました。
この“価格の上昇”は、販売現場において集客数の減少をもたらし、成約戸数の減少を招いた結果、売り控えが進み、分譲マンションの供給そのものが減るといった状態にあります。
この点を踏まえて下記の統計をみると、確かに分譲マンションの着工数は減っており、月平均着工数を時系列でみると、2013年3,500戸/月、2014年3,304戸/月、2015年3,421戸/月、2016年3,310戸/月、2017年3,469戸/月となるのに対し、2018年(1-10月)は2,614戸/月、月3,300~3,400戸台の着工であったのが、2018年は月2,600戸程度(概ね8掛)になっています。
マンションの場合、着工と販売は若干のタイムラグがあるので、当面は着工数が少ない=販売数が少ないということになり、供給数の低迷は今後も続くとみられます。
一方、建売住宅の月平均着工数は2013年1,802戸/月、2014年1,699戸/月、2015年1,531戸/月、2016年1,563戸/月、2017年1,553戸/月、2018年(1-10月)1,605戸/月で安定しておりマンションほどの減少はみられません。結果、価格上昇や建築費上昇による影響は分譲マンションのみが受けている状況といえます。
現在、ベッドタウンエリアでは分譲マンションよりも建売住宅のほうが安くなっている土地もみられます。元々土地神話が強いことも鑑みると、今後「あえてマンションを選ばない」ユーザーも増えると考えられ、少なくとも来年一杯はこのマンションの受難の低迷状況が続きそうです。
株式会社 工業市場研究所 川名 透