2018年7月三鬼商事が発表した東京ビジネス地区の平均空室率は2.58%。区別では千代田区2.41%、中央区3.67%、港区2.96%、新宿区1.58%、渋谷区0.84%です。
空室率2%を切った新宿区と渋谷区についてみると、新宿区は2017年5月に1.96%を記録。その後15か月連続で2%以下ですが、2%以下となった過去の記録(1990年~2001年の期間は各年12月の数字を公表)は、同社の発表が確認できる1990年12月の0.29%まで遡ります。ちなみに1991年12月には2.73%であることから、新宿区はほぼ25年ぶりの「低」空室率です。同様に渋谷区は2017年9月に空室率2%を切り、11か月連続の2%以下で、過去2006年3月~2006年10月に8ヶ月連続で2%以下となる時期はあったものの、やはり久しぶりの「低」空室率となります。
このように空室率が低くなると、当然オフィス賃料は上昇し、2018年7月の平均賃料における対前年同月比は、千代田区108.4%(22,079円/坪)、中央区107.7%(18,574円/坪)、港区106.1%(20,561円/坪)、新宿区107.0%(17,663円/坪)、渋谷区103.8%(21,635円/坪)であり、直近1年の状況を見ると、賃料は6~8%の上昇となりました。
振り返れば、ここ数年は大型オフィスビルの開業が続き、新規のオフィス供給が多かった(総貸室面積ベースで2017/7→2018/7で約10万坪の増加)にもかかわらず、空室率の低下が続くということは、供給に見合った需要が常にあったということで、そしてこの需要過多の状況は数年続くと考えられ、同時に賃料の上昇も続くと判断できます。
では、東京のオフィス賃料はどこまで上がるのでしょう?過去のデータ(下グラフ参照)を見ると、やはりバブル期(1990~1992年)が高く、千代田区・中央区・港区は坪@4万円以上、新宿区・渋谷区でも坪@3万円台後半となっています。その後急速に単価は下落し、1995年には全区で坪@3万円を下回り、その後、2007年~2008年のリーマンショック前に一旦相場は上がるものの、その後2013年まで下落が続き、同年をボトムに単価は上昇に転じています。(ちなみに、2007年12月の空室率と平均賃料は、千代田区1.59%・22,896円/坪、中央区1.82%・20,590円/坪、港区4.02%・23,566円/坪、新宿区2.81%・19,040円/坪、渋谷区2.88%・24,507円/坪。)
今後もこの単価上昇は続き、この2~3年でオフィス賃料はリーマンショック前の相場に回復するでしょう。
株式会社 工業市場研究所 川名 透