三井不動産リアルティ

Vol.51 2019 8月号

REALTY - news

いつもお世話になっております。三井不動産リアルティ REALTY-news事務局です。
一気に猛暑突入のこの季節、いかがお過ごしでしょうか。
夏の味覚といえばスイカ。江戸後期に全国に広まったとされるスイカには、
疲労回復や利尿作用をもつカリウムが含まれ、
水分の過剰摂取によって起こりがちな夏バテに効果があるのだそうです。
それでは8月の「REALTY-news」をどうぞ。

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今月のトピックス
Topics 1 WeWorkの上場後の株価の見込みが極端に分かれる
Topics 2 コワーキングスペース開設は今後も加速する?
Column 駅も街も変わる、時代に即した再開発が進む飯田橋

Topics 1

WeWorkの上場後の株価の見込みが極端に分かれる

 WeWorkは9月にIPO・新規上場を予定していますが、評価が大きく分かれています。端的に言えば株価の問題です。ソフトバンクによる企業評価額は470億$(5.03兆円)ですが、同業他社と比較するとせいぜい数千億円なので、評価額に10倍もの開きがあるのです。これは同社を「IT会社」と見るか、「不動産会社」と見るかによる違いでもあります。

 先日アナリスト向けミーティングがありましたので、本稿を皆様がご覧になる頃には専門家からの評価も出ているかもしれません。

 WeWorkの当初のビジネスモデルは「コワーキング」と呼ばれていました。広い部屋に大きな机を用意し、会員はPCを持ち込んで空いている席で仕事をします。ソファやジュースバーにも十分なスペースが割かれ、会員同士の交流を図る仕掛けとしました。

 机やキャビネを備えた数人用の小部屋も好評だったので、このような部屋を中心にして共用部にソファやジュースバーを設けるレイアウトの拠点も増やしました。これらは「シェアド・オフィス」と呼ばれます。簡単に借り増しや広い部屋への引っ越しができます。

 通常のオフィスと同程度の多人数を収容する部屋もあります。これが一般のオフィス賃貸とどう違うかといえば、最大の売りは契約のフレクシブルさです。英米ではオフィスの賃貸契約は10-20年が標準ですが、WeWorkは最低2年からなのです。

 こういった貸し方は、総称して「サービスト・オフィス」とも呼ばれます。テナントはオフィス開設のために必要なエネルギーを極力減らせるわけです。

 同社が強調したのは、オフィスで働いている人の働き方をデータとして集めて分析し、新しいオフィス像を創造するという主張でした。自分たちを「IT企業」だとし好んでアマゾンと比較しました。その結果、当初は「IT企業」の括りに入れられていたわけです。

 WeWorkに大きなケチを付けたのはサウジとアブダビでした。両国からの異議申し立てにより、同社は「IT会社ではなく不動産会社だ」という認識が世界で広まってゆきます。

 いかに規模拡大を優先しているとはいえ、赤字を続け黒字転換のめどが立たないことも大きなマイナスです。2018年度の赤字は19.3億$(2070億円)と毎年拡大する一方で、2016年以来の赤字額は累積で30億$(3210億円)以上に達するのです。

 CEOであるニューマン氏個人についてもいろいろな問題が指摘され、メディアでの彼の評判は芳しくありません。それはともかく、従前、同社の株価を決めていたのはソフトバンクでしたが、上場以降は株価は投資家の判断で決まることになります。

($=107円 2019年8月6日近辺のレート)

ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

Topics 2

コワーキングスペース開設は今後も加速する?

 コワーキングスペースについて調べてみたところ、法人向け不動産サービスのCBREがまとめた、「2018年9月時点で東京都内のコワーキングの市場規模は346拠点、6.6万坪。~中略~東京23区のオフィス全体に占めるコワーキングオフィスの比率は小さいが、2017年、2018年に市場規模が急拡大。2年間の新規開設面積は、2000~2016年の16年間の合計開設面積(3.3万坪)を上回った」という記事を見つけました。

 働き方改革に伴い、オフィスに出勤しないで働ける環境の整備が急ピッチで進められており、これまで個人の起業者向け拠点と認識されていたコワーキングスペースが、近年は経費削減効果が高いことと、企業イメージのアップが期待できることなどを要因に大企業が契約するケースが増えているようです。

 その要因は、「会社内で作業をする時間の短い営業職にはネット環境があれば十分→固定机の必要がない」という判断と、「都心のオフィス賃料の高さ→営業経費で落ちる外部スペースのほうが安いという判断が働いているから、といえます。

 これまでもコワーキングはいたる所で見られた。オフィス街にある「電源とWi-Fi利用が可能なカフェ」には何年も前から企業規模にかかわらずさまざまなワーカーがコーヒー一杯で長時間仕事をする姿があり、ファミレスも周辺企業の会議室として活用されています。但し、このような利用は店側からすればありがたいとはいえず、利用者からの「気が引ける」という声も多くありました。その意味では、堂々と利用できるスペースが注目を浴びるのは当然でしょう。

 結局、この注目度アップの背景にはインターネット・イントラネットなどの環境整備と共に「好きな場所で好きな時間に働くことが“認められる”社会になった」ことが大きいと考えられます。理由はさまざまですが、少子高齢化に伴い働き手が減ることが避けられない以上、通勤に体力と時間を取られないで働ける環境が求められており、その帰結としてコワーキングスペースの増加が進んでいるようです。

株式会社 工業市場研究所 川名 透

東京都内コワーキングオフィス開設面積と開設数の推移


Column

駅も街も変わる、時代に即した再開発が進む飯田橋

ホームの移設工事が進むJR「飯田橋」駅

ホームの移設工事が進むJR「飯田橋」駅

 JR「飯田橋」駅を利用されたことがある方はご存知かと思いますが、ホームと電車の間に大きな隙間が空いた箇所があります。これはホームが急なカーブの途中にあるためで、さまざまな対策が施されてはいるものの、多くの転落事故を招いていました。JR東日本では抜本的な安全対策を講じるために、ホームを新宿側へ約200m移設し直線化する工事を平成26年にスタート。早稲田通りにまたがって誕生する新ホームは江戸城外堀跡地に位置するので、史跡の景観を壊さないデザインになっています。同時に約1,000㎡の駅前広場や店舗が併設される西口駅舎も新設され、来年には、新たな表情を添えた街の玄関口がお目見えすることでしょう。

 駅東口と目白通りに面した、「飯田橋プラーノ」の隣接地駅でも再開発が進行中。オフィス・商業・住宅・その他を予定する「飯田橋駅中央地区再開発事業」の目標は、駅前広場一体型複合都市拠点の形成です。安全な歩行空間の拡充によって地下と地上を積極的につなぎ、緑と潤いのネットワークを強化する交通機能と駅前広場の整備、ゆとりある屋外空間と合わせた店舗の整備、大災害時対策などが計画されています。完成予定は令和4年度、駅利用の快適性がさらに向上します。

 飯田橋の南側の街、九段下でも注目の再開発が進められています。平成23年の東日本大震災によって大きなダメージを受け、休業へと追い込まれた「九段会館」。九段下の景観形成に長い間寄与してきた当会館は、昭和9年に建てられた歴史的建造物です。会館の一部を保存・復元しながら、オフィスや店舗などが入居する予定の高層棟を新築。敷地西側のお堀沿いには歩行者デッキなども計画され、令和4年に完成予定となっています。

 飯田橋周辺にはまだまだ再開発が検討されているエリアがあり、この地ならではの歴史と自然と先進が共存した次代の街づくりが続きます。

「REALTY-news」をお読みいただきまして、
誠にありがとうございます。

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