2000年代中盤の住宅バブルの時にアメリカで流行したフリッピングが、また増加しています。「フリッピング」というのは、日本で言う「買取り転売」のことです。
以前のフリッピングと現在のフリッピングにはいくつか違いが見られます。前回は、サブプライムローンを利用した個人の投資家が主役でした。サブプライムローンは金利は高めでしたが、すぐに融資が出たことからもっぱらこれが利用されていました。
今は企業が行うフリッピングが目立っています。「購入から一年以内に売却したものをフリッピングとする」とした時、2018年第4四半期の全住宅取引のうち、10.6%がフリッピングでした。これは前回のピークだった2006年第1四半期の11.3%に近づいています。今回は企業によるものがこのうち40%もあり、この点で前回とは大きく異なるわけです。
また今回は、不動産にかかわるいくつかの話がIT化されて能率が極度に高まっていることを背景に、新手の投資手法が目立っています。
例えば不動産売買の流れは仲介会社との折衝や委託、価格づけ、オープンハウス等々、ローテクのかたまりなわけですが、最近はホームページ上でクリックを数回すると売買手続きが完了するサービスが出てきました。
オンライン不動産検索サイト最大手のジローは抜群の情報量を持っているので、売り希望者から連絡があると独自のアルゴリズムで同社が買う場合の暫定オファーを出し、その上で実地検分をして最終オファーを出します。手数料は平均7%です。
売主にとって手取りが若干減るように見えますが、ジローに売ることには大きなメリットがあります。様々なわずらわしい交渉や決断をしなくて済みますし、ステージングの手間と費用も省けます。「ステージング」というのは市場に出している期間中、専門業者からソファーやテーブル、絵などを借りてきて配置し、家の見栄えを良くする作業です。日本では新築マンションのモデルハウスで見られるような事を中古住宅の販売の際にも行うわけです。
ジローはこうして買い取った住宅に修繕を加え、中古市場で売却します。修繕の必要度合いに応じて、先ほど書いた「7%」という手数料率を変えています。
住宅価格が下落局面に入るとただちに苦しくなりそうなビジネスモデルですが、ジローはこの手数料があるので大丈夫だとしています。
フリッピングを大規模に手がけているところには、ジローの他にオープンドアとオファーパッドがあります。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清