三井不動産リアルティ

Vol.43 2018 12月号

REALTY - news

いつもお世話になっております。三井不動産リアルティ REALTY-news事務局です。
何かと慌ただしいこの頃、いかがお過ごしでしょうか。
「国の内外、天地あまねく平和が達成される」という願いが込められた年号「平成」。
さまざまな出来事があった平成、その最後の年末に、平成30年の記憶をたぐってみてはいかがですか。
それでは12月の「REALTY-news」をどうぞ。

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今月のトピックス
Topics 1 アマゾンの第二本社の都市が決定
Topics 2 オフィス大量供給時代のマーケットはどうなる?
Column 交通インフラで大きく変わった注目の湾岸エリア、勝どき

Topics 1

アマゾンの第二本社の都市が決定

 アマゾンが昨年、投資規模50億$(5600億円)で第二本社を新たに建てたいとしたため、州政府や市役所レベルから不動産会社まで、大騒ぎが起きました。

 238都市が立候補し10都市が最終選考に残っていたのですが、この11月に意外な結論が発表されました。当初の話とは違って「50億$(5600億円)規模の第二本社1ヶ所」ではなく、半分の「25億$(2800億円)規模の本社、2ヶ所」を建てるというのです。

 選ばれたのはニューヨークのロングアイランドシティ(クイーンズ区)とワシントン近郊のクリスタルシティ(バージニア州北部のアーリントン郡)です。

 アマゾンの招致を狙った州政府や市役所は多額の優遇策をアマゾンに提示し、インセンティブ合戦の趣を呈していたのですが、額の大きさは決め手にはなりませんでした。最終的に選ばれた所よりもニュージャージー州やメリーランド州の方がはるかに多額を提示していたのです。最も重視されていたのは、人材の獲得のしやすさだったと言われています。

 今回の経過を見ると、アマゾンの作戦勝ちだったのかも知れません。「50億$」と言われて各州が優遇条件を競い合い、それが「25億$」になるならインセンティブも半分という訳にはいきません。「倍から切り出す」というのは商売上の駆け引きの古典的な手口です。

 選ばれた都市の一つ、ニューヨークは意外なことに既にもうITの集積地です。サンフランシスコやシアトル、シリコンバレーほどではないのですが、グーグルやフェイスブック、ツイッター等が大き目なオフィスを構えています。

 不動産会社もさっそく動き出し、バンを借りあげて投資家を乗せ、物件ツアーを始めています。あるマンションデベは仕掛かり中の物件のペントハウスをアマゾンのCEOのベゾス氏に売ろうと策を練っています。

 もう一つのクリスタルシティはペンタゴンに近く、ポトマック川を挟んで対岸がワシントンDCです。アマゾンは今後は連邦政府系の仕事も取り込もうとしているのではないかと見られています。当面のオフィス確保のしやすさ、ベゾス氏が大きな別宅や有力新聞社のワシントン・ポストを持っていることも同市を選んだ理由として想像されています。

 通常はこのような新しいオフィスの候補地選びは、社内にタスクフォースを作って隠密裏に進められます。しかし今回のようなやり方を取ることで、アマゾンは全米中の自治体から地域に密着した非常に良質で大変な量の情報を労せずして得ることが出来ました。これも同社にとって今後、大きな財産になる可能性があります。

(ドル=112円 2018年12月10日近辺のレート)

ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

Topics 2

オフィス大量供給時代のマーケットはどうなる?

 三鬼商事の発表によれば、2018年10月時点の東京主要エリアのオフィス空室率は、千代田区2.19%、中央区3.38%、港区2.13%、新宿区1.45%、渋谷区0.92%。新宿区は2017年5月より、渋谷区は2017年9月より2%を下回る状況で、渋谷区では2018年に入り1%以下という月も見られるようになってきました。参考までにバブル期のデータ(1991年12月時点)を見ると、千代田区0.79%、中央区1.81%、港区2.51%、新宿区2.73%、渋谷区2.06%なので、当時に比べれば千代田区や中央区の空室率は高いが、ほぼバブル期に匹敵する状況にあるといえます。

 一方、賃料を見ると、1991年12月時点の平均賃料は千代田区49,305円、中央区46,003円、港区44,488円、新宿区39,667円、渋谷区36,881円に対して、2018年10月時点では千代田区22,818円、中央区18,759円、港区20,872円、新宿区18,172円、渋谷区22,117円と、バブル期の半額程度で、バブル水準に戻ることはないでしょうが、これからも賃料水準は上がっていくものと考えられます。

 都心部では、大手町周辺や虎ノ門周辺、渋谷駅周辺そして山手線新駅周辺などに大規模ビル開発予定が多くあるだけでなく、築古小中規模ビルの建て替えが急ピッチに進められていて、結果、近い将来、ビルサイズにかかわらずオフィスの供給は増加する見込みです。

 この状況の中、空室率について懸念されているのがこれから始まるオフィスの大量供給による影響です。「大量供給を吸収できるほどの需要はない」、「働き方改革などにより、都心のオフィスで働かなくても良くなる人が増え、広いオフィスが必要なくなる」などを理由とする人が多いのですが、これまでも同様の懸念を有しつつ好調を維持してきたオフィスマーケットでもあり、今回も問題なく需要を吸収できるものと推測しています。

 むしろその一つの要因が「働き方改革」だと感じています。具体的に言えばフリーアドレスの普及であったり、サテライトオフィスなどの増加が見込めたりすることです。「働き方改革」により、これまでの机を固定した詰め込み型のオフィスがフリーアドレスになった場合、オフィス面積自体は低下しても共用スペースの面積が増えるため、需要としての全体面積は低下しない傾向にあるのではないかと考えています。

株式会社 工業市場研究所 川名 透

都心ビジネス地区 オフィス空室率

Column

交通インフラで大きく変わった注目の湾岸エリア、勝どき

勝鬨橋と隅田川

勝鬨橋と隅田川

 今では高層マンションが建ち並ぶ、注目の湾岸エリアとして脚光を浴びている勝どきですが、江戸時代は海の中。当時は江戸湊へと流れ込む隅田川の河口に、中州のように石川島と佃島が隣り合ってあるだけでした。水上輸送の要衝であった隅田川では、河口の川底に積もった土砂が船の航行に支障をきたすようになり、明治から大正にかけて東京湾澪浚(みおさらい)工事が行われました。その土砂で造成されたのが、月島や勝どき、晴海です。

 各島と対岸との間に今のような橋はなく、渡し船で行き来していました。勝どきと築地を結ぶ渡し船は明治38年、日露戦争の勝利を記念して当時の京橋区民有志が「勝鬨の渡し」と名付けた渡船場を設け、東京市に寄付。その頃の住居表示ではまだ勝どきではなく月島でしたが、昭和15年に勝鬨橋が架橋されたことにより、勝どきの住居表示が誕生しました。このため、勝どきには月島の名が付いた小学校や公園が存在しています。また、勝鬨の鬨がひらがなになっているのは、当用漢字ではなかったからだそうです。

 勝鬨橋は日中戦争などの影響によって幻となった、昭和15年開催予定の万国博覧会(開場が晴海)に合わせて造られたもの。大型船舶が航行できるよう中央が跳ね上がる構造になっていますが、これは勝どきの先にある石川島造船所(現:IHI)で海軍の船艇を建造していたため。今では閉じたままになっている勝鬨橋は、平成19年に国の重要文化財に指定されています。勝鬨の渡しは、この橋の誕生によって役目を終了しました。

 バスなど車での交通手段しかなかった勝どきが、先進の住宅エリアへと大きく飛躍したきっかけとなったのが、平成12年に開通した都営大江戸線「勝どき」駅の開業です。新宿や六本木などと直結するだけでなく、他路線への乗換えもスムーズな新線の誕生によって、アクセスが飛躍的に向上。行政やUR都市機構、民間企業によるマンション開発が始まりました。

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