アジアで進められている「巨大新都市開発計画」の中の3つをご紹介します。
まずインドネシアですが、事業費340億$(3.67兆円)をかけて新首都をボルネオ島に移そうとしています。現在の首都、ジャカルタは過密化と地盤沈下で根本的な問題を抱えているからです。
「地盤沈下」は水道の未整備による地下水のくみ上げのし過ぎによるもので、最大年20cm沈下していると言われています。これに地球温暖化による海面上昇が加わり、ジャカルタは5分の2がハリケーンで水没しかねないのです。
中国では北京の南西約100kmの河北省雄安新区を、政府肝いりの経済特区としました。事業費は官民合わせて2兆元(30兆円)です。広さは当面約100㎢ですが将来的には約200㎢を予定しています。北京への集中抑制が目的ですが、政治や行政機能は移転させません。
モデルとなるのは深圳や上海の浦東地区です。深圳は1980年に鄧小平が経済特区に指定、今は中国を代表する大都市になりました。雄安新区もそれにならおうとしています。
サウジアラビアのネオムは若き独裁者のムハンマド皇太子が5,000億$(54兆円)をかけて開発するという新都市ですが、これは彼が取り組んでいる壮大な社会・経済改革の一つでもあります。法体系からしてネオム内ではイスラム法に代えて西欧流のものが適用されるというラディカルさなのです。
以上のような大規模新都市開発に対しては、必ず反発が起きます。
インドネシアですが、ジャカルタで働く人間にとっては東のはずれのイリアンジャヤとか今回のボルネオというのは文化人類学者かオランウータンの研究家が行く場所というイメージです。政府の役人が移転計画に及び腰になっていて、これもその一因でしょう。
中国の雄安新区ですが、この国には「指定はされたが何も建っていない経済特区」が数十ヶ所あります。雄安新区にも懸念が持たれますが、今年3月の写真ではこれを払拭するかのように工事が進んでいます。中身なり進出企業については今後の課題のようです。
サウジアラビアのネオムも「空飛ぶタクシー」とか「人口雨」とか、夢は大きく描かれているものの、まだまだこれからです。強制移住の対象となる2万人の地元部族の反対活動が伝えられる中で先日やっと定期便が飛んだのですが、空港はごく小さなものにすぎません。
(ドル=108円 2020年7月7日近辺のレート)
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清